117.偉大な死の使い
警団の詰め所、言うなれば警察署か?
そこでテミーネの仲介を挟みつつガンズは『廃れ屋敷』と関わり、こうして逮捕にまで至った原因と経緯についてを説明することになった。
知らんかったが、事情聴取ってのは何も逮捕者にだけするもんじゃねえんだな。
聴取っつっても雰囲気はそう堅苦しくもない。前後関係の確認ってだけで、さっきは俺も軽く話をしたしな。ま、ちゃんとしたギルドに依頼が通りづらいからって闇ギルドに頼っちまったことに関しては多少のお叱りもあるだろうが……。
話が終わるのをただ待ってるだけってのも暇なんで、この間に落ち着いてステータスでも確かめとくか。一回レベルアップしたくらいならそう慌てて見る必要もないんだが、今回はそうもいかないからな。
というのも、ゲテモンキーの群れとのバトルで四回、最下層を彷徨っていて一回、そして最後に強盗たちを返り討ちにしたところでちょうど一回……なんと俺は今日だけで6もレベルが上がってるんだ。
これは急ぎでステータスとスキルの変化を確認しなけりゃならん。
というわけで、画面を開きじっくりと今の自分の強さを見てみれば。
『シバ・ゼンタ LV29
ネクロマンサー
HP:151(MAX)
SP:110(MAX)
Str:136
Agi:109
Dex:95
Int:1
Vit:91
Arm:87
Res:50
スキル
【悪運】
【血の簒奪】
【補填】
【SP常時回復】
【隠密:LV3】
【活性:LV3】
【心血】
【集中:LV2】
【察知:LV2】
【EXP取得量微増】
クラススキル
【武装:LV5】
【召喚:LV5】
【接触:LV3】
【契約召喚】
【血の喝采】
【偽界:LV1】
【死活】
【死の祝福】
【死の逢瀬:1】』
まずはステータスのほうだが、さすがに6もレベルアップすると数値の上がり方がすげえな。カスカが上がりづらいと言っていた後ろ三つも順調に伸びている……Dexあたりはもう次でVitに追い抜かされそうだな。
Dexは器用さ、Vitは生命力を表すようなんで、俺らしいと言えばらしい感じかね。
SPから下の前半三つは攻めに関するステータスで、後半の三つは守りに関するステータスだ。
どっちのほうが大事、とかはねえ。
どっちも戦闘で生き延びるためには同じくらい大切だ。
だから全部伸びてくれるのにこしたこたぁねーんだが、成長にはどうしてもバラつきがあるからな。なんとも言い難い感じだ。
真ん中にあるうんともすんとも言わねーIntについてはノーコメントで。
そしてお次はスキルのほうだが……目に付くのはやはり【EXP取得量微増】か。
英語をどう略してるのかはわからんが、とりあえずEXPが経験値を意味してるってのはわかるぞ。なんかのゲームでもこういうの見たからな。
念を入れて説明欄を開けば。
『【EXP取得量微増】:心なしかあなたの成長は早まったようだ』
いや雑!
もっとちゃんと書けよ!
どれくらい経験値が増えるのかを具体的に言えや!
と、キレたって仕方がねえ。なんせテキストは常時この調子だからな。
ろくな説明がねえのは覚悟してたさ……それでも敵を倒したときに得られる経験値が増したってのは間違いねえと確信が持てたぜ。成長が早まるってことはきっとそういうことなんだろう。
だが……微増、だよな。
微妙に増えると書いて微増。
そんなもんでこれだけ怒涛のレベルアップが叶うもんかね?
ちょいと釈然としねーな。
ま、それはともかくとしてだ。
今見てたのは通常スキルの欄だが、職業スキルのほうにも新顔がいるな。それもふたつもだ。こちらは字面だけじゃどんなスキルかさっぱりなんで、さっさと説明を見よう。
どうせ詳細はわからず終いだろうが、大まかにでも効果を掴んでおきたいからな。
『【死の祝福】:身近な死が糧をもたらす。欲すれば殺し、望むるに殺し、飽くことなく殺す。内なる声に忠実であればあなたは偉大な死の使いとなるだろう』
おおう……これまた大層な文面だが、フレーバーは無視でいいよな。重要なのは『より糧となる』の部分だ。俺にも物の見方ってやつがわかってきたぜ。
これで急激なレベルアップの謎が解けた。
それは【EXP取得量微増】だけじゃなく、【死の祝福】も同時に入手したからだろう。
このふたつには同じような効果があると見て間違いない……!
同類効果の合わせ技で貰える経験値が一気に増えたって理解でよさそうだ。単純に増えただけじゃなく、同じ獲物を倒し続けると明らかに減る仕様……ああいう制限もなくなったか、あるいは弱まった可能性もあるな。
なんにせよこいつはすげー助かるぜ。【SP常時回復】以来のゲームシステムを変えられる神スキルだ! このふたつがあれば、近ごろ上がりづらくなってきたレベルもぽんぽんとアップしていけそうだ。少なくともしばらくの間はな。
文脈的には【死の祝福】のほうが経験値を増やしてくれていそうだが、さてどうなんだろーな。
そんで、一番下にある新スキル……【死の逢瀬】についてだ。
見た感じは祝福とも似てるが、こっちは【死体採集】にもあった回数制限の表記がついていることから、まったく別のスキルだろうってのがわかる。一回きりの使い捨てスキルだ。経験値増加のような常時発動するタイプのスキルにこんなのはつかない。
さっさと説明を見てみるか。【死体採取】は結果として【契約召喚】に変化しドラッゾを呼べるようになった当たりのスキルだったんで、否が応でも期待が高まるぜ。
だが期待し過ぎるとガッカリしそうなんで、程々に……とは思いつつも胸の高まりが抑えらんねえ。
なんつーか、スキルの当たり外れってのはどこかギャンブルに近い楽しさがあるんだよな。
『【死の逢瀬】:必要な時、必要な者と逢える』
あれぇー? これまで見た中でもトップクラスにシンプルな文面だぁ。
ちっっっともわからん! 推測することすらできん! いくらなんでも情報が少なすぎんだろうが!
つっても【死体採集】もこんな感じではあったっけな。何をするもんなのかわからんまま持ってて、意図せずに使っちまったんだよな。こっちもそういう風に使える機会が訪れるのを待つしかねーか。
……下手するとずーっと眠ったままになるかもしれねえのか。
それだともうスキル欄の染みも同然だな。
まあ、いいさ。有用なスキルが他に入手できてるんだから一個くらいは訳のわからんもんがあっても許してやろう。それに既存スキルも成長したのが多くあることだしな。
まずはゲテモンキーのボスとの戦いで俺のピンチを凌いでくれた【接触】だ。
1と2でもけっこうな違いがあったが、3ともなると効果もかなり強力になってきた。
モンスター相手には直接触れる場面ってのが少ないんで使えるシーンは限られるが、いざってときには何よりの一手になる。あって助かるスキルのひとつだな。
で、いつの間にか【察知】のLVも2になってたか。暗い洞窟ではこいつにたびたび助けられたんでその影響かもしれねえな。
これでよりわかりやすく、どれくらいの攻撃がくるのかまで伝えてくれるようになった。
こいつも【接触】同様、戦闘における役割が大きいスキルだな。
そして最後に【召喚】だ。こっちも【武装】に追いついてスキルLVが5にまで育った。一区切りってところだな……俺が勝手にそう考えてるだけだが。
それにしても、スキルの育ち具合は通常スキルよりも職業スキルのほうが上に感じるな。上っつーか、LVの上がり方が早いよーな。ひょっとすると職業に根差してるスキルには成長補正みたいなもんがあるのかね?
だとすると職業スキルしか持たねーヤチなんかは凄いことに……と思ったがあいつのスキル、LVがついてるのは【武装】だけしかなかったな。
やっぱなんか、どことなく調整めいたもんを感じるぜ。
それはともかく、【召喚】で何を呼べるようになったか見ておこう。
今度こそキョロあたりが変態するか、モルグに続く新しい面子が増えたかとわくわくしながら押してみると。
『選択可能:【ゾンビドッグ】
【ボーンヴァルチャー】
【コープスゴーレム】』
おっと、なんも変わってねえな?
つーことはやっぱキョロか、と【ボーンヴァルチャー】のとこを押したが以前と変わらねえ説明しかなかった。
まさか、と思いながら今度は【ゾンビドッグ】を押す。
『変態可能:【ゾンビドッグ】→【ゾンビウルフ】』
『分裂可能:【ゾンビウルフ】→【ゾンビウルフ】×3』
な、なんか項目が増えてるー!?
変態じゃなく、分裂だと!? いったいどういうことだこれは……!?
『シバ・ゼンタ LV23+6
ネクロマンサー
HP:125+26
SP:90+20
Str:111+25
Agi:90+19
Dex:72+13
Int:1+0
Vit:77+14
Arm:71+16
Res:38+12
スキル
【悪運】
【血の簒奪】
【補填】
【SP常時回復】
【隠密:LV3】
【活性:LV3】
【心血】
【集中:LV2】
【察知:LV1】+1
【EXP取得量微増】New!
クラススキル
【武装:LV5】
【召喚:LV4】+1
【接触:LV2】+1
【契約召喚】
【血の喝采】
【偽界:LV1】
【死活】
【死の祝福】New!
【死の逢瀬:1】New!』




