11.改めて説明な
ここまでがプロローグかも
ここらでちょっと、俺の現在のステータスをお見せしよう。
『シバ・ゼンタ LV10
ネクロマンサー
HP:59(MAX)
SP:33(MAX)
Str:45
Agi:30
Dex:15
Int:1
Vit:32
Arm:27
Res:8』
スキル
【悪運】
【血の簒奪】
【補填】
【SP常時回復】
【隠密:LV2】
【活性:LV1】
クラススキル
【武装:LV3】
【召喚:LV2】
【死体採集:1】』
これだ。
と、言ってもよくわかんねーだろうから改めて説明な。
HPやSPなんかの数値に関しては、順調に伸びてる。一部の数値だけやけに変化が乏しいが、そこはもう割り切ってる。
どうせ何を表すステータスなのか不明だし、もはや気分的にどうでもよくなってるって言ったほうがいいな。
んで、変化のメインはやっぱスキルのほうだよな。
思った通りにレベルが上がるたびにスキルには追加があった。
新しいものをゲットしたり、元からあるやつのレベルが上がったりした。
何ができるようになったかと言うと――。
まずは【補填】。
SP消費で減ったHPを補うスキルだ。
親猫の試験でも役立ったこいつは、俺のレベルが6になった時に手に入った。
親猫の狩りを手伝いながらも、上手く立ち回るボチや子猫と違って俺はうっかりと獲物から一発食らって体力を減らしがちだったんで、そのせいでこういうスキルになったのかもしれん。
ま、ありがてえこったな。
次いで【SP常時回復】。
レベルがいよいよ二桁の10に届いた時、【武装】のレベルアップと同時に取得したスキルだ。
と言っても自動で書き加えられたんじゃなく、【HP自動回復】との選択制だったわけだが。
俺は迷った末にこっちを選んだが、親猫との戦闘を振り返るにやっぱSPを取って正解だったと思う。SPの回復速度が速まるのはすげー助かる。
そして【活性】な。
支払ったSP分に応じてパワーアップさせてくれる便利な能力。
レベル表記があることからもわかる通り、こいつは成長していくタイプのスキルだ。
今はまだSP最大消費で発動しても三十秒も持たないが、スキルレベルが上がれば一分越え、十分越えの強化が可能……になるかもしれない。期待を込めて星5だな。
あとは、【活性】と同じくレベル持ちのスキルたち。
こいつらも狩猟生活の中で軒並み成長してくれたぜ。
なんといってもまずは【召喚】だな。
レベルが2になったことで、ボチ以外も呼べるようになった!
死体犬の次は何かと思えば、骨禿鷹だとよ。
まあやっぱクラススキルなだけあって、いかにも俺の職業のネクロマンサーっぽい仲間だよな。ボチと一緒に呼び出せないのが若干ネックだが、でも空を飛べるってのはやっぱ凄いと思った(素朴な感想)。
それから【武装】もすげえぞ。
こっちは狩りのたんびに何回も発動してたからか、なんと3にまでレベルが上がったんだ。
レベル2では『骨身の盾』が、レベル3では『恨み骨髄』っていう剣が装備できるようになった。
盾はただの盾以上のことはないが、軽くて丈夫で使いやすい。
そんで剣のほうは単純にリーチが『肉切骨』より断然長いことに加えて、追加効果がある。
それは「相手から攻撃を受ければ受けるほど斬る威力が上がる」というもの。
……ちなみに説明欄ではこうなってる。
『【恨み骨髄】:怨念が蓄積する人の脊髄で出来た剣。恨みを抱えるほど危険になる。物を切ることに期待してはいけない』
だからいちいち説明がわかりづらいんよ。
切れ味が悪いってこと以外にハッキリとした文言がまったくねえ。
ただ、こいつは他の比べればまだ推測は容易いほうで、『恨みを抱える』ってのがつまり相手から攻撃されることだって理解するのにそう時間はかからなかった。
最高なのはがっつりとHPを減らされることだが、別にそうじゃなくても恨みパワーは溜ってくらしい。
盾で防御越しに受けた衝撃とかでもOKだ。
ただしその場合、盾の上からでもズシっと感じる程度には重たい一撃じゃねえとダメなんだな。
ボチの軽い体当たりを何度盾で受け止めても一向に恨み骨髄のパワーが上がらなかったのでこれは確定している。
「【血の簒奪】と似た感じの使いづらさはあるが、あっちよりはマシかね」
今の俺の最高火力が、恨みパワーの籠った恨み骨髄を【活性】の強化状態で振り回すことなんで、強敵を相手にする場合はどうしても頼らざるを得ない。不安定な戦い方にはなるが、ナイフ二本だけが武器だったことを考えるとめっちゃ進歩してるよな。
それでもって【隠密】だ。
こいつはレベル1の時はいまいち効力がわからなかったんだが、2になってからはハッキリと恩恵が感じられるようになった。
こいつを使ってると、明らかに獲物の探知力が鈍るんだ。
いや正確には俺の隠れ方が上手になってるんで見つからないってことなんだが、俺からすると相手が鈍くなってるように思える。それくらい地味に便利なスキルだ。
つっても視界に入ったり物音を立てたりすると普通に見つかるけど。
端から気付かれてたり怪しまれてたりしてもアウトだ。
その状態から【隠密】を使っても意味はない。そこまで万能ではないってこったな。
だが、【武装】のようにレベル3やもっと上になれば、ひょっとすると見つかっている状態からでも隠れられたりするかも……いや、さすがにそれはねーかな。
「最後に、これだな」
スキル欄の一番後ろ。まるで付け加えるようにひっそりと載ってるそいつは……俺もまったく理解できていない謎のスキルだ。
その名も【死体採集】。
クラススキルのほうに振り分けられてるし、その字面からしても何をするためのスキルなのかは薄々察しはつくんだが、その結果がどうなるかってのがまったく見えてこない。
俺のレベルが5に上がった時、【隠密】の成長と同時にこれも選ばされた。
その内容は、
『スキル【悪運】の消去
または
スキル【死体採集】の獲得』
というかなり変わったものだったんで、よく覚えてるぜ。
なんか【悪運】は持っててもあんまり良くなさそう、ってかぶっちゃけバッドスキルな匂いがプンプンするんで、消去のほうを選びかけたんだが。
でもその時の俺は、ハッ! となって指が止まったんだよ。
見るからにこれ、【悪運】で釣ってんじゃねえか? ってな。
じゃあこっちと対になってる【死体採集】ってのはもしかすっととんでもねえ強スキルなんじゃないか……とまあ、今思うと完全にただの妄想でしかないんだが、思い付いたその瞬間は天啓が降りたような感じでな。
「俺は裏をかく! こっちを選ばせてもらうぜ!」
そうやってハイテンションでゲットした新スキル、その説明欄がこれだ。
『【死体採集】:死体採集』
舐めてんのか。簡素なんてもんじゃねえぞ。スキル名を繰り返しただけじゃねーか馬鹿たれ。
「一切効果がわからんってのは【悪運】と一緒だけど……気になるのは数字だよな」
【死体採集:1】。
この1ってのは、なんの1だ?
レベルとは表記の仕方が違うんで、別の意味を表してるのは間違いないだろうが。
一番考えられるとすれば――回数制限だろうか。
「まさか一回だけの使い切りスキル、ってことなのか? ぐおぉおお、これはミスった感がハンパねえぇ……!」
せっかくの貴重なレベルアップボーナス取得のチャンスを、使い切りのもんに捧げちまったとなりゃあ……これはもう【死体採集】が相当な壊れスキルでもねえ限りはチョイスを失敗したも同然だろうよ。
「だけど肝心の効果がわかんねんじゃあなぁ!」
あー、なんか腹立ってきた。選択制も良かれ悪しかれだな。【SP常時回復】を選べたんで、【死体採集】のミスはチャラと考えりゃそれでいい気もするがな。
次に選ばされるときに、また迂闊な選び方をしないよう気を付けるしかねーか。
「クエッ」
「おっ、帰ってきたな」
メンタルを切り替えたところで、タイミングよく偵察に出していたキョロが戻ってきた。
SPも使いすぎなければ回復が十分追いつくんで、こうやって一旦キョロに空から安全を確認してもらってから前に進むようにしている。
親猫に教わったことのひとつは、まともな探知能力を持たねー俺みたいなのは慎重に慎重を重ねないとこの森じゃすぐに死ぬってことだ。
ドラム缶くらいの太さのある蛇とか、刃みたいな爪を持って跳ね回る小型の肉食獣の群れとか、俺だけじゃ対処しきれないようなのもいくつも見てきている。
そういうのにはまず、見つからないことが第一だ。
だから進むときはボチを呼んで目を増やしながら。
先へ進んでもいいかの確認はキョロに任せて、俺は【隠密】で隠れとく。
安全最優先となると自然とこういうやり方になった。
……【SP常時回復】がなかったらどうしてたかってのは、考えたくもねえな。
「クエクエッ、クエッ!」
「どうしたキョロ? え、マジか!?」
やけに興奮した様子からまたやべー猛獣でも先にいたのかと思いきや、どうもそういう感じじゃない。むしろやべーはやべーでも嬉しいほうのやべーっぽい感じだ。どうやらキョロは、俺が頼んでたもんを見つけたらしい。
何があったかというと、これはついに。
――森の外が見えたってことだ!
「よぉっし! やっと森から脱出できる!」
『シバ・ゼンタ LV4+6
ネクロマンサー
HP:35+24
SP:11+22
Str:24+21
Agi:17+13
Dex:8+7
Int:1+0
Vit:20+12
Arm:12+15
Res:5+3』
こうして見ると一気に伸びましたね。一部以外は。