転生系勇者は異世界ライフを満喫中?
神や天使、それらに準じる超常の存在が転生の手引きをする最近の異世界ものを見ていて、こんな可能性もあるんじゃねぇかと思い書いたなろうラジオ大賞用小説第八弾。
そして大浜英彰さん、この度はFAをありがとうございました<(_ _)>
「ようこそ転生の間へ」
目覚めて早々、俺はそんな台詞を聞いた。
声がする方に視線を向けると、そこにはギリシャ神話に登場する女神の如き美貌と服装で、白銀の髪を生やす、もはや女神としか言いようのない女性がいた。
「貴方はドSな死神が与えた死の運命により死んでしまいました。なのでお詫びとして、第二の人生を授けようと思います」
最初の台詞からしてそうじゃないかと思ったけど、やっぱり俺は……異世界転生ができるんだッ!
「しかし残念ながら、異世界転生系勇者は渋滞状態の為、行ける異世界と特殊能力は限られています」
それはちょっと残念だ。しかし転生できるならその時点で無問題だ。
そう答えると女神は、小さい声で「貴方の異世界生活に幸多からん事を」と告げ俺の足元にポータルを発生させ――。
――俺は異世界に転生した。
それからの俺の生活は充実していた。
この世界についての情報は逐一女神から念話で伝えられ、倒した相手の力を吸収して強くなる特殊能力で魔物や魔人の類を確実に倒し、最終的にはこの世界に混沌を齎す魔王へ戦いを挑み、長い戦いの末……ついに魔王を倒した。
最後に魔王が、俺を見て何やら喚いていたが……魔王の言う事なので気にしない事にする。
これで俺の、この世界での役割は終わり。
余生はスローライフでも送ろうか、と考えていた時、俺の足元に再びポータルが発生した。
そして一瞬で、俺はまた『転生の間』とやらに来ていた。
目の前には、にんまりと笑った女神。まさか女神が直にお礼してくれるとか?
「よくやってくれました、勇者よ。おかげでようやくあの世界を手にできます」
だが女神の台詞は、俺が想像していたものとは全然違った。
というかそれはむしろ、侵略者の台詞のような……ってまさか!?
「フフフ、ようやく理解しましたね。というか、私を見た目で判断するとは愚かな転生者だこと」
女神の笑顔が、邪悪な笑みへと変化する。
「やはり人間は人型で誑かすに限る。人型の神=善神、異形の神=邪神という公式が地球では確立してるから、人型に化ければまず怪しまれない」
女神の姿形が、コズミックホラーな見た目へと変わる。
「おかげで私の目論見通り、お前は強大な力をその身に宿した。私の幻術で魔人に見えた天使の力、そして魔王に見えた……あの世界の神の力をな」
次の瞬間。
ブシュッと何かが噴き出し、グジュッと何かが潰れ、ガリッと何かが削れた音がした。
と同時に、俺の意識は薄れて――。
どこかの世界へと転生、もしくは転移をしたみなさん。
あなた方が見ている世界は、絶対に真実だと……証明する事はできますか?