2話 清原太一
**** 清原 太一 ****
清原太一がウイングヒューマンに入社したのは二七の頃だった。
ひと月の間、先輩マネージャーと行動を共にして上野真希の担当となった。
短い期間だが【Maybe/Absolute】の二人のマネージャーもしていたが、彼女たちが一気に売れてからは、上野真希とその他の新人のスケジュール管理がメインになった。
清原はデビュー時の上野真希を知っていた。
そのポテンシャルを認めていた。マネージャーを志望したのも彼女の影響だった。しかし、ここ最近は真希から前向きなやる気が消えている。
うまい話もないので当然かもしれない。
しかし……。小さな会場では十分に声は出ているが、大きな会場のときはどうだろうか?
いつかのために、いま準備をしておかなければ。
そう思ってレッスンの予約を入れるのだが、バイトがあると断られる。最近では小さな仕事だと、「じゃあバイトの方がお金になるや」と、それすら断るようになってきた。歌えるイベントでかろうじてこなしてくれる。そんなところだ。
真希を家まで送って事務所に戻り、次の仕事を探す。
ライブ出場者募集の案内が来ていた。
そこそこ大きいハコ。年齢制限上限ギリギリ。他の出場予定者は全て年下。
……ギャンブルだ。
客は若い方を応援するのが世の常であり、サガでもある。
だが……。
同じ事務所の後輩、真希よりさらに若い、今年一六歳になったばかりの少女の名前を見て、清原は真希の参加を決めた。少女のひたむきなレッスン態度が記憶に残っていた。
彼女の姿勢に何か思い出してもらえないだろうか。
そう画策してイベントに申し込んだ。
しかし、その思惑は悪手だった。
イベントの最後に、上野真希とその新人がステージ上で交錯して転落した。
真希は意識を飛ばして救急車で運ばれた。
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