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#4 辛勝のファンファーレ

ペンが乗ってきました。

今回でPV100に届く見込みです。

足元でのたうち回っている蝙蝠を、思い切り踏み向けた。


『イギャァアアア!!!』


再び赤ん坊の鳴き声のような悲鳴を上げる。

罪悪感、不快感、嫌悪、恐怖、怒り、恨み。

様々な感情が自分の中で入り混じって暴れ狂い、身体の外に溢れ出ようとする。

その全てをぶつけるように、重い脚を持ち上げては打ち下ろし続ける。


腹、足、首、翼、顔、耳、牙。

恐怖から逃れたくて、癇癪を起こした子供のように蝙蝠の身体をあちこち、夢中で蹴りまくった。

紫色をした濁った泥のような蝙蝠の体液が飛び散ったが、無視して蹴り続けた。

身体の重さはとっくに息を潜めていた。

蹴り続けているうちに、頭の中が真っ白になっていった。


脚の重さと鈍い痛みを思い出し始めたところで、ようやく我を取り戻した。

息は完全に上がりきっていて、時折咳が混じりながら喉が嫌な音を立てていた。


蝙蝠の、赤子の悲鳴の様な鳴き声はずいぶん前に止んでいたような気がする。

辺りには紫色の蝙蝠の体液が飛び散り、血と泥が入り混じったような匂いがした。


右足を見ると、蝙蝠の体毛と肉片がベッチャリとこびり付いていた。

「はぁ…はぁ………ぁがあッ……!!!」

目の前の惨状から、ようやく脅威が去ったことを確信した。


安堵感と共に猛烈な疲労感が襲いかかり、徐々に自分の状態を理解し始めた。

大きな穴の空いた首筋からはドクドクと血が溢れ続け、左肩は大部分を骨ごと噛みちぎられて、グチャグチャになった肉と皮だけでかろうじてぶら下がっている。


身体の欠損とそれに伴うはずの痛みは、極限の興奮状態で意識の外にあったが、傷口をハッキリと見てしまったことで一気に戻ってきた。


激痛が身を襲った。

腕が焼かれるような痛みに耐えきれず、声にならない叫びとともに仰向けに地面に倒れ伏した。


僕はそこで意識を手放した。




再び目覚めた時は、水滴は落ちてこなかった。思わず天井や周囲を確認するが、第二の蝙蝠はどこにもいなかった。

そればかりか、あれだけ派手に身体の中身をぶち撒けて転がっていた蝙蝠の死体が、骨はおろか血の一滴すら残さず、キレイさっぱり無くなっていた。


(他の獣が持っていったのかな?)

だとすれば自分も無事で済んでいるハズがない。

ならばネズミのような臆病な小動物なの仕業だろうか。

どちらにせよ、獣にこんな血痕すら残さずに運び去るような芸当が出来るとは到底思えない。


不可解な現象に頭を悩ませているうちに、大変な事に気が付いた。


「えっ!嘘・・・。」

ボロボロの状態だった筈の左半身は何事もなかったかのように元通りに治っている。

(ありえない・・・。)

あれだけのケガを負っていたのだ。

傷一つ残っていないなんてありえる筈がない。


だとしたらさっきの蝙蝠との戦闘は何だったんだ?

最初から全部、夢を見ていただけなのか?

でもこの洞窟は先程見た通りだし、未だに自分の名前さえ思い出せない。


幻覚?催眠?予知夢?

本当の自分は今仮死状態で病院のベットに寝ていて、悪夢を見続けている?

それともとうの昔に魂だけの存在となっていて、現世での記憶を消されて地獄に落とされた?


オカルトじみた陰謀論や、似非科学のSFと輪廻転生の世界へと意識がトリップしかけたその時、自分の目線の先30cmほどの場所に、透明な板・・・もといウィンドウが現れた。

ウィンドウには英語混じりの日本語で文字が書かれていた。


――――――――――――――――――――――――

 〜 レベルUPしました 〜

――――――――――――――――――――――――




「――へ?」

長い長いイントロにお付き合い下さりありがとうございました。

次回ようやくチュートリアルです。

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