#3 激痛のコンバット
導入部分が長すぎた気がします。
と言いつつも今回でまだ終わらないんですが笑
最初なんでゆっくり丁寧に描写していきたい気持ちが前に出過ぎた結果です。
緊迫した状況に疲弊しすぎたのか、あまりにも場違いな言葉を僕は叫んでいた。
それを合図に、天井からぶら下がっていた蝙蝠が翼を広げながら垂直に、僕に飛びかかってきた。
突然視界を真っ黒に覆われた僕は戸惑い混乱したが、腹を空かせた蝙蝠が落ち着くまで待ってくれるハズもなく、僕の首筋に噛み付いてきた。
「ひぃッ・・うッぁああ゛あああああ!!!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
僅かな皮膚の抵抗もものともせず、鋭く長い牙が肉をえぐる。
焼けた鉄の棒を押し当てられているような激痛が襲い、意識がニ度飛びかけた。
必死に引き剥がそうとするも、首筋の左側に噛みつかれており左腕は思うように動かず、カギ状の爪で背中をガッチリと掴まれているためになかなか離れない。
それでも無理やり右手で蝙蝠の頭を体の側面に押し退ける。
ブチブチと肉が引き千切られる音と、激痛が襲うがそんなことを気にしている暇も与えてくれない。
首がダメなら他の部位から噛み千切るまで、とばかりに蝙蝠が左肩に再び噛み付いてきたからだ。
「おおお゛ぉぉぉッッ!!」
先ほどと違い今度は噛み千切る勢いで食らいついてきている。
上下の顎に4本ずつついた牙は、迷いなく肉を断ち切り進んでいく。
鋭利な牙が骨の繋ぎ目をゴリゴリと削り、そしてついに、ゴキリと折り取った。
「・・・ッ!!!」
今度は完全に白目をむいて意識を持って行かれた。
だが気絶した直後に痛みで無理やり揺り起こされる。
左肩にかじりついたままの蝙蝠は赤ん坊のような声で笑っている。
肉を喰らい、血を啜り、齧り折った骨を笑いながらしゃぶっている。
「うがぁあああ・・ああああ゛!!!!」
獣のような咆哮を上げ、消えそうになる意識をかろうじて繋ぎ止める。
糸の切れた身体を奮い起こして走り出し、噛み付いたままの蝙蝠ごと身体から岩壁に突撃した。
『イギャァアアアアア!!』
赤ん坊の鳴き声のような蝙蝠の悲鳴が洞窟に響き渡る。
もはや肉体の感覚もなく、意識は朦朧としている。
欠損だらけの身体で岩壁に激突するなど、やはり自殺行為だったからもしれない。
死の足音が聞こえる。
視線を下げると、牙の折れた蝙蝠が足元でのたうち回っていた。
岩壁にぶつかった時に牙と一緒に翼も折れてしまったのだろう。
上手く飛べずに、赤ん坊がグズっているような鳴き声を上げながらもがいている。
(チャンスだ!今なら逃げられる。)
だが、本当にそうか?
外がどんな状況下もわからないのに?
こんな身体で逃げ切れるのか?
実は蝙蝠はすぐに回復することが出来て、追いかけてくるかもしれない。
もし他の蝙蝠に出会ってしまったら?
仲間を呼ぶことができるかもしれない。
様々な可能性が浮かび、逃げ出すことをためらわれる。
そうして僅かな思案の後、僕は重くなった脚を持ち上げ、蝙蝠の腹を踏み抜くように蹴り付けた。
コンバットとバットが掛かっているのはご愛嬌。
次回こそ進展を・・・。