第16話 私の目指す世界の為4
改めて街を観てみると案外ボロボロになっている。まるで戦争でもあったのかのようだ。
実際に準戦争級の事は起きたのだが、一対多数でこの惨状なのだから目も当てられない。
「ほんと生肉の味を覚えたチワワみたいだよな。」
「アダムさんはキチンと焼いた肉を食べたそうですがね。」
「そりゃ生食わすわけないだろ。生肉を食うのは人間の手の行き届かない野性の生き物くらいだ。虎だってペットになれば主食は焼肉に変えられちまうよ。」
「健康面においても生肉より焼肉の方が良いって言いますもんね。寄生虫もそうですけど、肉は焼く以外の調理法だと脂成分を多く含んだ状態になるんだとか。」
「へぇ〜、焼いた方が脂が多いと思ってたが本当なのか?」
「ええ、肉は見かけによらず脂がとても多く、焼くと脂が外へ流れ出ますが、煮たり茹でたりすると脂が肉の中に閉じ込められて非常に濃くなるそうです。」
ルベルクスとアレクは街を眺めながらそう言う。
「食材店が1番こっ酷くやられてるな。」
「西へ行くと言ってましたし、ここら一辺の店はもうあらかた潰れているのでしょう。」
「只でさえ食い物が少ないってのに、この仕打ちは本当に酷ぇもんだよ。だがまぁアンタとイヴ様のお陰でどうにか食い繋げれてはいるが······」
「種から育った野菜を種子が出来る前に全て食べてしまうんですよねぇ皆さん······」
二人は肩を落としながら街全体へ顔を向ける。
そこには多くの飢餓に苦しむ人々がいた。
アダムが肉をかっさらい野菜を潰したせいで実質食べ物は非常に少ない。例えイヴから貰った野菜や種を使っても、この大帝国を賄うには少なすぎる程だ。種から野菜や果物を育てたとしても一瞬で大地から栄養を吸い取り育ち枯れるので次の種子の確保が必要なのだが、元々飢餓っていた人々はそれを待ちきれずに次々と口に運んでしまう。
まさに地獄絵図というものだ。
「ところでルベルクス、お前こないだ貴族と会談したって、噂で聞いたが本当かよ?」
「はい、討伐プランの作戦について少々。兵隊さんの借り受けを頼んで来ました。」
「兵隊?そんなの借りてどうすんだよ。」
「一芝居うって貰うんですよ。アダムさんを小屋の中にある狭い箱に入るよう誘導するんです。するとイヴさん特製のアダム討伐液がアダムさんを襲ってミッションクリアとなるそうです。」
「じゃああれか?こないだ小屋に設置した箱がそれってわけ?」
「いえ、アレはただのセッティング装置というものだそうですよ。」
「まぁ本当に成功したらほんと万々歳なんだがな。」
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翌日から食材は配給制となった。
貴族らの指導の元、種はキチンとした畑で育てられ、種子の取得バランスを配慮して収穫された。
その結果、食糧危機はだんだんと回復してゆき、アレクは『最初からこうしとけば良かったのでは······』と思うのであった。
そして日は流れてゆく。以前は皇帝候補の話題はアダムかイヴだったが、今となってはルベルクスかイヴとなっている。
途中ルベルクスの案内の元、性転換事件の首謀者のいた地下施設の調査が行われようとしたが、道の途中で全員が遭難してしまうという事件も起きたりした。
「明日の晩は満月か······。」
ルベルクスは空を眺め、そう口に出す。
アダム討伐プラン実行の時が目前に迫るのであった。
我ながら一章長い。早く二章来て