第15話 私の目指す世界の為3
「皆さーん!寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!このとっても甘ーい野菜や果物がなんと本日は全て無料ですよ〜!」
金髪青年ルベルクスが街往く人々に元気よく声をかける。勿論のこと全てイヴから授かった食材である。その数はとても多く、流石に怪しむ者も多い。
「なぁルベルクス、それどっから拾って来たんだ?」
ルベルクスと同じ金髪でザ・スポーツマンという風格の青年アレクが問いかける。
「ああ、これはイヴさんが『空間拡張収納機〜!』って言いながらくれた魔法の箱に入れて来たんだ。」
「いや俺はお前がその野菜を何処で仕入れたのか聞いたんだが······口ぶりからしてイヴ様から戴いたんだろ?」
「まぁその通りだ。だが貰ったのは果実だけじゃない、種も貰ってきた。話によると1日で実が実るらしい」
「おーい、お前ら聞いたか!イヴ様からの差し入れだってよ!!」
「「「「それは俺のものだァァァァ!!!」」」」
アレクの呼び掛けに応じて多くのオッサン達が群がってくる。それを見た周りの人も興味を持ち始める。そして同じく興味を持った赤い筋肉ダルマがやって来て
「なぁ小僧、肉はあんのか肉は?」
「申し訳ありませんアダム様、肉はあの酸っぱいのしかご用意出来ておりません」
「チッ、ならいい。俺様はこれから西に肉を探しに行く、暫くは戻って来ねぇ。イヴの事は任せたぞ小僧」
「はい、ですが1ヶ月以内には戻って来てください。イヴさんから伝言がありますので。」
「あ?ああ分かったぜ、それじゃあ、あばよっ!」
ルベルクスの話を聞くとすぐさま飛び立つアダム。風圧で野菜や種が吹き飛ぶが、オッサン達が拾って行くので問題ない。
「ん?もしや何か企んでるな?ルベルクスこのこの〜」
「心配するなよ、イヴさんの考えた作戦だ。決行日に間に合うかどうか分からないとイヴさんは言っていたが、俺の勘だと確実に成功する。そう思うんだ。」
この様にしてアダムとイヴのいない1ヶ月が始まる。
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「ここってクラウエの小屋だよな?こんな所で何するんだよ」
頭の後ろで手を組むアレクがそう訊ねる。
「イヴさんからの指令ですよ。ここにこの箱を設置してくれだとかなんとか。」
「ところでその肝心のイヴ様は何処へ?」
「イヴさんは東へ行きました。」
「東?向こうじゃあ戦争ナウな筈だろ、そんな所行ってどうなさるんだ?」
「それは俺にもどうにも。ただ、作戦の予備だと言ってましたね。」
「お前はその作戦ってのを詳しく聞かされてないんだろ?どうしてそう協力的になれる。」
「俺が協力する決め手となったのは······」
「決め手となったのは?」
「やっぱりイヴさんの可愛らしさのせいですかね」
「ズコーっ」
アレクがひっくり返る。その間にルベルクスは部屋の真ん中に箱を起き、イヴに指示された赤いボタンを押す。
「次の作業は『ここから離れろ』です。」
「離れろ?本当に置くだけでいいのかよ。ていうか置かせるだけ置かせてあとは離れろってどういう事だよ。」
「イヴさん曰く起動してから数分以内に離れないと寿命が著しく縮むのだそうです。」
「ならそれを先に言え!!」
アレクはルベルクスを置いて出口から飛び出して行く。
それを後から追うルベルクスだが、ふと一瞬視界に黄色い光の玉が映った。しかし、これも箱の機能の一部だろうと思い、気にせず小屋を後にするルベルクスであった。