徹底死守
「アジア連合が西ソビエト領、ウラル要塞に対し、攻撃を開始しました!」
「戦力は?」
アルフレート・ローゼンベルグには余裕があった。
最強を謳うマウス、それに最新型Eシリーズ重戦車のE75、E100がウラル要塞防衛に加わっているからである。
「現在確認中...ですが、分かっている第六軍への損害は
特殊機甲第七大隊のマウス47両が撃破され、要塞内部でも攪乱が行われており
想定されたウラル要塞の陥落時間を大幅に早めることとなっております。」
「それは...事実なのか?」
ウラル要塞を見立てた作戦ボードに置かれた特殊機甲第七大隊のマグネットで
手を止める。
「蹂躙...された模様です。
戦闘時間は一時間足らず、五式は化け物です...」
「...ッツ!!」
言葉に詰まる。
天才と呼ばれるポルシェ博士でも足りない領域に五式が身を置いている事を痛感した。
「空軍はどうした!今ばかりは出世競争の話などしておれんぞ!」
「制空権は取られており、空軍も奮戦しています。
しかし、中国空軍は物量に物を言わせており、これもまた奪取は不可能かと...」
「attack of Britainの進行状況はどうなっている。
割ける戦力があればウラル要塞に...いや、モスクワに結集だ。」
「モスクワですか!?」
驚きながらも命令である。
了解しました、と一言いうと作戦指令室から出る。
(そうだ、ウラル要塞に固執することはない。
ゲリラ戦でアジア連合を消耗させ、モスクワの主力で叩き潰す。)
・・・・・・・・・
「ならん!ウラル要塞をあと2ヵ月、残存戦力で持たせよ!」
ヒトラーは報告に来たアルフレート・ローゼンベルグに
徹底死守を命ずる。
「し、しかし、制空権を持たぬ我々は一方的に
撃破される始末。撤退もままなりません!」
「いいか、ローゼンベルグ。
モスクワでアジア連合を押さえられる自信はあるのか?
ウラル要塞は天然の要塞でもある。
自然を利用したゲリラ戦術が最も有効な防御策ではないのか?
逆に、敵の手に渡れば我々は年単位でアジア侵略が不可能になる。これがどう言うことか分かるか?」
「で、ですが第六軍の機甲部隊の強味は集団戦術では...」
「いいかね、固定観念は久しく、悪だ。
第六軍を分割し、大隊単位でのウラル山脈全体を使った
ゲリラ戦術を展開するのだ!」
「補給は...」
「2ヶ月分は持つだろう。」
「そんな...」
死刑宣告であった。
要約すれば、2ヶ月持てば後は野となれ山となれという事である。
「安心したまえ。モスクワには既に第13軍が張り付いている。
17個師団もあればモスクワは落とせんだろう。」
「了解しました...」
ローゼンベルグは思い詰めた表情で執務室を出た。




