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暁の帝国 ~第二次世界大戦編~  作者: 川嵜 怜太
対決!!《世界の黄昏》ドイツvs《世界の暁》日本
42/55

国民講和

《臨時ニュースをお伝えします。

臨時ニュースをお伝えします。

現在、ワシントン西部の消耗率は48パーセント。東部、北部共に34パーセント。

南部は不明。戦況も芳しくなく第三艦隊旗艦ニューメキシコはノーフォーク海軍基地攻撃隊に

撃沈されたとのこと。

現在第五艦隊と第六艦隊がドイツ機動部隊を

捜索中。また、これに対しての大統領の

声明はなく、不信感が積もります。

今後も1時間おきに放送を行います。

この周波数にしたまま電源を───》

電源を切り、強く下唇を噛み締める。

エドワードステティニアスは依然として講和を

訴えていたがこのような事態が遂に起きてしまった、と行動力の甘さを痛感した。

もっと危機性をもって話すべきだったと。


『たられば話はしてはいけません。

今からどうするかを考えるべきです。

こう考えてみては如何でしょう。

今まで黙っていた層がこれからは声を上げてくれると言うことを。』

妻のヴァージニアが強い口調で話す。


『それに、貴方がその調子では子供たちも

不安がっていますよ。』

エドワードは優しく頷いた。




天井から土埃が落ちる。

近くで爆弾が落ちたのだろうか。

ズシーン、と言う音が防空壕に共鳴する。

不気味これほどない。

子供も震えていた。


『ねえ、お父さん。ヤマトはどこに居るの?』

息子ウォレスが気を紛らわせる為か、

はたまた興味本位で聞いたのか分からないが

『大和は今頃バージニアビーチの何処かにいるんじゃないのかな。』

と答えてみる。


『じゃあ何でも助けに来てくれないの?

大和は38ノット出るからここまでそう遠くはないはずだよ。』

大和の雑誌はパナマ運河に現れてから

現在に至るまで飛ぶように売れている。

パナマ運河の新鋭戦艦を圧倒し、1隻撃沈1隻戦意喪失という戦果を叩き出し、

ナグスヘッド前哨戦で駆逐戦隊の旗艦

ブルックリン級軽巡洋艦、フィラデルフィアが

大和のラムアタックで真っ二つに折れたという。

その後駆逐艦は副砲の業火で海に浮かぶ薪と

なった。

その戦果は英雄レベルで、アメリカでも人気がある。しかし……

『それは、大和は敵だからだよ。

お父さんは大和と仲間になるために頑張っていたんだ。でも………失敗した。それもルーズベルトのお陰でね。』

この時、もし日本が仲間ならばと考えたかったのだろう。ウォレスはたちどころに気を落とした。

気晴らしに放送で流れているジャズでも聞こうかと再び電源を入れる。


《定期放送を行います。

定期放送を行います。

第五艦隊がドイツ機動部隊を発見。

現在第五艦隊は空母1駆逐艦4を失いつつも

戦闘中とのことです。》

紙を入れ替える物音が放送から流れる。


《朗報です。ドイツ機動部隊所属空母が

日本と思われる潜水艦に撃沈された模様。

正確な数は分かりませんが5隻以上が沈められたのこと。そして、ポトマック川、ワシントン国際空港から200メートルの所でしょうか。

巨大な船が………

大和です!!戦艦大和がドイツ戦闘機と交戦しています!!》


まさか本当にやるとは、と笑うエドワード。

ここまで大々的に助けにくる国を、敵国とはルーズベルトは言えなくなった。これが日本の目的なのだから。

子供に正気が戻り、ウォレスはガッツポーズをする。

あとは、大和に任せるだけだとエドワードは

安堵の混ざった深いため息をついた。




《敵航空機、撃墜数29。》

大和の濃密な対空砲火はドイツ戦闘機を寄せ付けない。

猛爆撃を受けたワシントンは焼かれ、黒煙をあげている。


《対空誘導弾、全弾装填完了。》


《発射!!》


艦首、艦尾、両舷から白煙が噴き上がる。

対空砲は船内で統制射撃されており生身で

甲板に出る必要はない。

装填は全て自動化されている。

ドーム状の装甲で覆われた対空砲は弱点ではなかった。


多数の白線が空を覆う。

それぞれの誘導弾は生きているかのようにドイツ戦闘機を

追跡、撃墜を目指す。

独戦闘機は回避するために宙返りする。

それが至る所で行われていた。


『なんだあの戦艦!!まったく近づけない!!』

爆弾や無誘導ロケット弾を抱えた戦闘機は鈍重で

誘導弾を回避できない。撃墜を数える頃には67機に上っていた。


『イ401から打電、“我、敵空母三隻、巡洋艦9隻、

駆逐艦12隻ヲ撃沈。敵、コレヲ見捨テジブラルタル方面二撤退”

大戦果ですよ、有賀艦長!!』

有賀は頷くと上空で帰る場所を失った独戦闘機を見る。





『全て撃ち落とす。対空誘導弾、全基発射!!!』








火を噴き、回転しながら墜ちていく最後の独戦闘機を見送ると、

大和は瓦礫になったワシントン記念塔の辺りで前後につけられたサイド・スラスターを展開。川底に艦首と艦尾を擦りながらも

旋回。元来た道を戻りバージニア州バージニアビーチ沖

北東43キロにてイ5005から補給と戦略物資の到着を待った。

バージニアビーチには主砲が全て折れ、無惨に黒く焼け焦げた

ニューメキシコの姿があった。



大竹は有賀の疑問に答える。

『有賀艦長、命を捧げる価値のある国民です。

アメリカも、そして日本も。』

目をゆっくりと開き、有賀は『そうだな』と呟いた。





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