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暁の帝国 ~第二次世界大戦編~  作者: 川嵜 怜太
対立!日本vs独第三帝国
39/55

ナグスヘッドでの死闘#2 《船の強さ》

先頭の戦艦の爆散を目撃し、2隻の巡視船が

艦隊を離れる。

しかし、交戦状態に入っニューメキシコに

引き止めるだけの余裕はない。


『第二弾、来ます!!』

砲弾はニューメキシコの上空を掠め、

三隻の巡視船と新鋭巡洋艦アトランタ型のフリント、が水柱に巻き込まれ撃沈される。

三列の単縦陣は一気に崩れた。


『大和、速力38ノットで接近中!!』

大和の原子炉機関は通常原子炉3基と

大出力をより早く出すために液体原子炉を1基

積んでいる。

そしてその性能は一分足らずで38ノットに到達する。


『大和第三弾、来ます!!』

ニューメキシコに吸い込まれるように砲弾が

食い込む。


とっさに頭を抱えるフォード。

背中を氷の刀で切られるような痛みが襲う。

艦の重心が大きくぶれ、巨艦がボートのように揺さぶられる。

砲弾が艦の傾斜とともに転がる。

14㎝副砲群に命中した榴弾の炎が火薬庫に到達し

二度目の爆発が起きる。


その業火を確認した大竹は壁にチョークで正の字を書く。

《こちら正面指揮所、戦艦を撃沈。

目標を大型巡洋艦アラスカに変更。》


《こちら統合誘導指揮所、誘導弾の発射準備と飽和攻撃プロセスの処理を終了。発射許可を求む。》


《こちら戦闘指揮所、三十秒後に射撃を許可。》


《こちら対潜警戒室、浮上音を3つ探知。

右舷122、右舷152、左舷98、この地点への対潜攻撃を求む。》


飛び交う報に戦闘指揮所の有賀は落ち着いて対応する。

戦艦大和は対潜、対艦、対空、全ての攻撃に対応可能。

この大和の建造の目的は“1隻1艦隊”であり完成形でもあるこの船は旧式軍艦に後れを取ることはない。 


正面の垂直発射口から灰色の煙が噴き出す。

また、艦の両舷から大型対艦噴進弾回天の発射筒が

エレベーターにより展開され、赤と青の混ざった炎を噴き出す。


『秒読みはいります。3、2、1』


《対艦憤進弾、発射》


筒を突き破る回天はその巨体を時速1200キロで浮かせる。

その衝撃波は艦橋の防弾ガラスをバタバタと震わせる。

また、回天よりは小型であるが熱源誘導式対艦憤進弾

256発は古きを食い破る。

敵艦隊までの距離は39000メートル。

到達まで約一分五十六秒。

大和は煙に包まれ、同時に両舷から水柱が上がる。

潜水艦からの雷撃だろう。

だが、まったく効果はない。

艦底部の装甲厚は220㎜、実質装甲2300㎜には

口径65㎝以上の魚雷でしか艦底部すら凹ませることは出来ない。

音紋からパラオ型潜水艦であり53㎝の、魚雷では到底損害を与える事は不可能である。


『非力なものですね、早々と降伏すれば早い話

死なずに済むのに。』

一人の応急処理班の者の言葉に大竹は反応した。

そしてその言葉を強く否定した。

『彼らはお前のような軽い気持ちで戦っては居ない!!

この戦艦に彼らは勝つことは出来ないだろう。

しかし、死を覚悟して戦っている。

それは国を、国民を、守ろうとしているからだ。

我々日本帝国軍の標語は国民保護を

中核にしている。彼らにもそれがあり、果たしているのだ。

本当の軍隊のあり方、国を守る使命を果たす為に戦っている。

それを易々と否定するような奴は例え同じ日本人でも

許しはしない!!』

軽口として叩いたのだろう。

しかし、その軽口は武士道を信念にもつ大竹には

強く耳に残った。


その一連の説教は艦全体に漏れていた。

このことにより軽々しい言葉は出なくなり、

一層気を引き締めた。


有賀もそれを耳にし、艦内放送にてこう言った。

『大和は強い。

しかし、その強さはレーダーか?主砲か?それとも噴進弾か?

違うだろう。レーダーの小さい陰を見つけて報告するのは

君たちだ。主砲弾を命中させるのは君たちだ。

噴進弾の座標を入れるのは君たちだ。

そう、各員の強さなのだ。艦の強さに慢心した船はどうなるか分かるだろう。私は、各員の一層の奮励努力を期待する。』

言い終えた頃、各部からオー!!という気を引き締めた声が

艦全体に響き渡った。


『対艦憤進弾命中まで10秒!』


空を覆う多数の飛行物体は雨霰あめあられと第三艦隊に

降り注ぐ。




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