陸海一体化
「わかりました、後程必要量を協議しましょう」
陸軍の上原勇作は汗を拭うと、興奮気味に次の話題へと続けるように
ジェスチャーをする。
「我々海軍の所持する488極秘資料の秘匿を陸軍に対して解除します。
我々の得た資料で日本の鋳造技術、超大型船舶の建造、電探、暗号電文
艦隊及び戦車に搭載可能な高性能部隊間無線機など各種技術において各段の進歩があった。
それと私の所持する歴史書は既にそこにいる東条閣下がお読みになられた筈だ。
説明の程をして頂きたい。」
先ほどまで無言を貫いていた陸軍大将東条英機は淡々とこれから辿る歴史の流れを
説明した。
そして、その日本帝国の破滅の道を歩まぬようにする為の作戦を語った。
「全体作戦名は”背水作戦”
一つでも作戦が失敗すれば日本は背水の陣を引くことになる。
つまり、敗北は許されないということだ。
作戦予定は12月8日、K作戦を持ってして米国のハワイオワフ島真珠湾を攻撃する。
それ以降の作戦は米国の動きによって変わるため今現在の予定を全て話した。」
実際、陸軍と海軍は歴史書の中では対立していた。
陸軍の代表東条は最初、世論に押され無価値無意味な戦争を始めようとしていた。
しかし、山本との秘密会談において山本の意見と海軍の意見統一化をし、
陸軍も海軍も共同歩調をとって、軍全体の海軍陸軍の確執はこの会談を機に
宣戦布告日時半年前までに無くなっていた。
だが、全てがすべて歴史書通りではなかった。
それは石油と極秘書の会議後のことであった。
「何、アインシュタイン博士が亡命申請を」
山本は一瞬耳を疑った。
そう、アインシュタインは米国へ渡った筈だ。
しかし、どうやらヒトラーはユダヤ人の迫害を歴史書よりも早くに始めていた。
そして日本に対する亡命申請が急増した。
どの国々もユダヤ人を受け入れることに消極的でありヒトラー自身も欧米各国の
偽善的態度を批判した。
「失礼します」
ノックと共に川村純義元帥が執務室に入室すると一飲みでお茶を飲み干した。
電話を終え、執務に戻っていた山本は少し驚いた様子を見せた。
川村は艦隊司令長官として特例により元帥に昇進した。
「予定より三十分早いではないか。何かあったのか」
「いえ、一時間程度ではK作戦の打ち合わせはできませんので
少し早めに。」
山本は感心したように無言で頷いた。
「一つ、君に質問をしていいかね」
「は、私は政治的な物は分かりませんが答えられる所があれば」
「君は私がユダヤ人の亡命を受け入れると言ったら反対するかね」
賛成であります、という言葉が思いついたが川村は山本の目力に真面な答えを探した。
「私は、政治的なことはわかりません。
ですが、私でしたら受け入れる決断をしたいと考えております。」
山本はその回答に満足そうに笑うと
「良かった、私の考えを後押しされたよ。
K作戦は明日じっくり話会おう。
今日は陸軍にユダヤ人の亡命受け入れに関しての同意書を持って行ってくれ。」
川村は執務室のお茶を豪快に注ぎ、それを一気に飲み干すと執務室を出た。
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