戦艦長門
「山本司令長官は我々の予測通り
強制講和に持ち込みに向かったのか。」
大艦巨砲主義を唱える者14人、
富士重工の関係者4人が料亭にて秘密会談を
行っていた。
“黛 治夫”大将は14人の中でも大艦巨砲主義の思想を強く持っていた。
「山本はあの大型空母に大和とつけるつもりらしい。空母に大和と名付けるなど名が泣くわ!」
「問題はそこではない、山本司令の目的は強制講和だけではない。山本司令は、航空機の有用性と大艦巨砲主義の終焉を長門自らで体現しようとしているのだ。」
豊田大河少将のや発言に室内に響めきが走る。
「そ、それでは、水上特攻を行おうと……ま、まさか!!」
豊田は頷く。
「“長門は沈む”」
一同は顔を見合わせ生唾を飲み込む。
「長門が沈めば戦艦の有用性、圧倒的な航空機の有用性を
見せつけることが出来る。
つまり、大艦巨砲主義を根本からねじ曲げる腹積もりだ。
だがそうはさせない。
富士重工の西岡利晃造船長、”大和型戦艦“の設計図を」
縦1.5m、横3mの設計図がテーブルに広げられる。
西岡は説明を始めた。
「全長420メートル、全幅87メートル、
総排水量、469000トン、主砲は56センチ三連装砲4基、
35.6センチ三連装副砲2基、副砲、対空砲200以上。
電探は神楯電探を2基、一つでも100の目標を同時に追尾し35基に対応できます。射撃電探には”黒玉楼“を使用し、
船の揺れに対応、攻撃位置の設定も行えます。
機関は原子力機関4基直列式で、
380000馬力、最大速力37ノット、水中噴進を同時に
使用すれば43ノットは出ます。」
一連の船の能力と性能に耳を疑う各位。
「大和は既にハワイ沖にいる。
あの速度だ、パナマ運河までは1日で着くだろう。
そして、航空機第一主義の山本司令の考えを覆す!!」
同時刻、長門はアメリカ橋を46㎝砲の一斉射で
粉々に粉砕し、ミラフローレス閘門に迫っていた。
パナマ運河は要塞化されており、雨霰と長門めがけて
降り注いだ。
「命中弾!一番砲塔に直撃、損害は皆無!」
命中した砲弾口径は20㎝、長門の主要防御区画は平均して
600~1000㎜はあった。
さらに、砲塔は耐熱合金を装甲の材料にしており
榴弾では主砲を破壊することは出来ないのである。
「正面目標、ミラフローレス閘門!!砲撃開始!!!」
艦橋の窓ガラスがカタカタと振動している。
艦橋は一時的に煙に包まれる。
その間にも再度主砲の標準が逐一送られる。
「対空警戒!!!」
戦局は着々と変化していた。
「カツオ節がきたぞ!!
電探照準、右舷高角砲攻撃開始!!」
対空砲は一斉に攻撃を開始、近接信管と発射速度により
P-39は流星のように海へ真っ逆様に墜ちていった。
だが、数の暴力は怖いものである。
機関砲の対空砲圏内にまでPー39は迫っていた。
猛烈な対空砲火により
46機の内、27機を撃墜したものの遂に七発の225㌔爆弾が
命中した。
二発は二番砲塔、一発は一番砲塔、三発は右舷副砲群に命中し、
多数の対空砲を破壊した。
右舷から業火を上げる長門だが、米軍の攻撃は止まらない。
「上空12000メートルに大型四発!!!
B-29と思われます!!」
戦闘指揮所に困惑の空気が流れる。
山本は腕組みし動かない。
「や、山本司令長官……」
「やはり来たか、数は?」
重い口を動かす。
「27機であります……」
「対空砲を格納し、艦橋員を安全区域へ退避させろ。
そして艦首熱源探知誘導弾を発射、27機全て仕留めるぞ。」
長門のハリネズミのような対空砲が格納されると
艦首の格納容器が開き、一斉に煙を上げた。
「座標を入れろ!早くするんだ!!」
電探室から送られた予想座標を噴進弾に入力する。
「目標設定完了!!発射!!!」
27基の発射管から筒型の物体が垂直に飛び立った。
同時にB-29でも攻撃が開始されていた。
1トン爆弾が総数243個投下されていた────。
「直撃コースに16発!!至近は22!!」
艦内放送で何かにつかまるように指示がでる。
243個の爆弾の大半は高高度と言うこともあって大半は風にあおられ的外れな位置に落ちていったが、これまた数打てば当たるという物である。
山本は天井に取り付けられている鉄の棒に掴まった。
そして指示を飛ばした。
「注水一杯!!防水作業員及び火災消火班は
主要区画に集結し、被弾次第、各部ダメコンを開始せよ!!」
ズシーンと艦全体を震わす揺れと鈍い音が艦内に共鳴した。
山本は必死に棒にしがみついたが、前後左右に揺さぶられ体を所々でぶつけた。
この16発の命中により一番砲塔のターレットリングが
破損、戦闘艦橋及び防空指揮所は大火災に見まわれ、
甲板には多数の金属部品が転がっていた。
また、電探の電気系統を火災で焼かれた為、実質的に長門は目を失ってしまった。
それと同時にBー29は23機が撃墜され3機はエンジンを破損していた。
ミラフローレス閘門を目前に米国の猛攻晒された長門は
一本の薪のように燃え上がっていた。




