帝国 第一の切り札
1943年12月16日
海は穏やかにうねり、戦争が今も行われている事を忘れさせるぐらいの晴天である。
二種軍装を着た二人。
白色の二種軍装は日の光で際立っていた。
山本五十六と東郷平次朗は横須賀の秘密ドックに訪れていた。
「山本司令、穂高を沈められたということは
やはりドイツは技術力で日本を上回っている
のでしょうか…」
東郷は山本の表情を伺う。
「技術力において、劣ってはいない。
だが───」
山本は強調するように
「”敵の指揮官の艦隊指揮能力はかなりの
ものだ。”」
そう、装甲巡洋艦穂高はその快速という長所を
上手く使うことができず巨砲の前に沈んだのだ。
それは、コースの強制という戦術を即座に考え出す、明らかなる有能な指揮官の下行われたまごう事なき敗北なのだ。
「処で、南雲司令の容態はどうなのですか?」
「離艦の際に頭を軽くぶつけただけで軽傷だ。」
帽子をかぶりなおす山本。
1台の九五式小型乗用車が山本と東郷の前に
停車する。
「久しぶりですな、名倉一誠殿。」
「お久しぶりです、山本司令長官。
東郷大将、初めまして。」
名倉は呉、横須賀の工廠総監になっていた。
名倉は慣れた手つきで秘密ドックの28桁のパスワードをいれていく。
入力が終わると厚さ30センチもあるようなドアが重厚な音を立てて開く。
「なっ─────────?!」
「う……うむ・・・!」
二人は暗闇の中でも確認できる巨艦に
思わず言葉を失った。
そして、名倉はこの船の正体と全貌を明かす
為の照明のスイッチを押した。
「黒姫、いや、改黒姫です」
決戦!大戦艦ラインハントvs改黒姫
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