陸軍との確執
1939年10月
山本と東郷は立襟燕尾服を身に纏い、統合参謀本部で陸軍との今後についてを
話し合う会議に来ていた。
列石各位は皆頭を丸め邪魔者を見る目で海軍を睨む。
彼らの聞きたいことは二つ。
一つ目は満州国黒竜江省の油田
二つ目は488極秘資料の開示だ。
黒竜江省から湧き出た推定原油一億トンが見つかったことだ。
これは歴史書の中で見つけた物であり、これから突き付けられるであろう
”対日最後通告”を無視、また戦争を始めたとしても
長期戦に持ち込むことができる。
だが、この油田に関しては情報を漏らさないように海軍情報部は陸軍までも
欺き続けていたのだ。
しかし米国との対決が迫る中、陸軍の協力を仰ぐ為にも油田の事を話したのだ。
そして二つ目の488極秘資料、488m輸送艦から付けられた資料名であり
情報が漏れた理由としては民間企業に資料を託したからであろう。
しかし、スパイ対策は完璧にしており情報海外への極秘資料情報は一切漏れていない。
重苦しい雰囲気の中最初に口を開いたのは陸軍中将岩仲義治であった。
戦車第二個師団の長である義治にとって油は戦車の血液であった。
「我々としては石油分配についての海軍の方針をお聞かせ願いたい。
我々陸軍は石油のみの分配があればそれ以上の物は望みません。」
山本は目頭を押さえ、義治の顔を睨み、そして列席した陸軍軍人全員を睨む。
「まずその判断からおかしい。
各位も承知の通り陸軍の戦車は極端に弱い、弱すぎる。
戦車兵の生存性を無視し、攻撃のみに力を入れその攻撃でさえ米国の戦車にとっては
豆鉄砲と同じ、ドイツからはブリキの戦車とも比喩されているそうではないか」
「それは海軍が予算を食い潰すからではないか。
我々の戦車のどこが米国に劣るというのだ、我々は天皇陛下の下に集まった
精鋭だ。
軟弱精神の海軍とは違う、大和の建造を取りやめたと思ったら別の大型艦を作り、
大量の建造費をつぎ込んでいるらしいではないか
我々陸軍の立場も考えてくれないか。」
「ではその精鋭である兵士は無限に湧いてくる物なのか?
時間を掛け、育て上げた兵士をまるで消耗品のように扱う貴様はそれでも帝国軍人か!」
怒りが全身に回った義治は机を叩き今にも殴り掛かろうとしていた。
海軍の将校は山本を庇うように席を立ちあがる。
義治を上原勇作元帥がなだめ
そして落着きを取り戻したことを確認すると山本に質問をした。
「原油の配分は海軍として如何するおつもりでしょうか。」
落ち着いた顔つきと真逆に額には汗を浮かべていた。
陸軍は山本の回答に全神経を集中させた。
石油の配分の回答によっては陸軍は黒龍省を丸ごと奪い取る”電油作戦”を行うという
事だったのだ。
だがこの作戦を行うととてつもない人員を失うという計算結果が出ていたのだ。
山本の口が開く。
「原油の分配は陸軍との量を協議の上、分配します。
つまり、陸軍の提示する量を我々は分配しましょう。」
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