バーストー攻防戦
前衛指揮官岩中中将乗車の五式重戦車は瓦礫の中を進んでいた。
所々でM4シャーマンの残骸があった。
バーストウハイツを落とした日本軍はこの地にてすぐさま戦列を整え、
一気にバーストー中央部への攻撃を開始した。
しかし、中央部ということもあってか反撃もまた苛烈であった。
だが、反撃のみではなく戦術にも変化が見られた。
軽戦車チト車に敵が狙いを定めていたのだ。
五式やオイ、オホといった重戦車、中戦車チリに攻撃が通用しない
ことを理解した米軍は軽戦車を徹底的に攻撃した。
複合装甲30mmのため、中々効力射が与えられないものの米軍は数に物を言わせて
砲撃を浴びせた。
「軽戦車は一時重戦車の後方に退避!我々は最大速力で敵シャーマンを駆逐する!」
重戦車は2500馬力川崎ディーゼルを使用し、全速力38kmで戦線を大幅に上げた。
指揮官は慌てて
「撃て、、撃て!!!」と叫ぶ。
米軍は日本重戦車の履帯に的を絞り一斉に射撃し、足止めをしつつ撤退を試みた。
それにより4両ほど履帯を切られたものの重戦車中戦車は未だ100両以上いる。
オホやオイの15cm砲がシャーマンの砲塔を吹き飛ばし、五式は20cm砲で
シャーマンの正面装甲に弾痕を刻み込んだ。
「岩中中将!敵両翼は壊滅、中央部の敵部隊は混乱、戦車を捨て逃亡する有様であり
これ以上の追撃は不要かと。」
岩中は無線越しに頷くと
「各重戦車に乗車している歩兵は直ぐに展開!
バーストーの敵兵を殲滅、ここをモハーベ砂漠攻略の前線基地とする!」
そして、日本軍の怒涛の進撃を米軍は押し返すことが出来ず、司令部は遂にバーストーを放棄。
これにバーストー攻防戦に終止符が打たれた。
日本軍の損害は軽戦車24両撃破、中戦車1両撃破、重戦車6両破損、
3両故障で損害は全体の1%以下に過ぎなかった。
バーストー守備隊4800人と戦車275台の内、生存者は517人、
移動可能戦車34両で完全敗北であった。
わずか一日で決着がついた攻防戦は日本のランドパワーの強さを世界に知らしめるものであった。
そして、上原が来た頃には完全に制圧されていた。
上原が戦闘指揮車から降りると岩中が駆け寄ってきた。
「バーストーの完全制圧が完了しました。」
「はは、随分と仕事が早いではないですか、私はもう予備役ですかな」
上原は笑う。
「いえ、ここは私のような脳筋野郎でも落とせます。
ですが、モハーベ砂漠は上原元帥の頭脳がなければ勝てません。」
岩中は言い終えるとニヤついた。
「岩中君、お世辞が随分と上手くなったものですね。」
僚友は吹っ切れるように笑った。
そして状況視察中に放棄されたM4シャーマンに岩中が指をさす。
「上原元帥、敵は我々の重戦車に恐怖したのか戦車を放棄していきました。」
上原は顎に手を当て、考える。
「ふむ、まだ使えそうだな。」
この時、上原は放棄された無傷のシャーマンを見て奇想作戦を思いついたのであった。
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