極東の帝国の猛攻と消えかかった超大国の希望
「ルーズベルト大統領、日本軍の爆撃によりシアトルの消耗率は87%、
サンフランシスコは74%、ロサンゼルス、サンディエゴは85%、です...
遂に本土上陸作戦が開始されるようです。」
ルーズベルトは黄色人種にまさか本土を踏みにじられるとは思っていなかった。
日本の大量生産能力の話をブラフとして見た米国情報部は戦略を考える事を半ば放棄していた。
「第一防衛線は鉄壁だ。
カスケード山脈とシエラネバダ山脈はハリネズミのような数の砲台と15万人の兵士が守っている。
だが、モハーベ砂漠を突破しようと思えば40万人の兵士と一万両の戦車で向かい撃つ!」
ルーズベルトは拳銃を取り出し、徐に地図の日本に弾痕を刻んだ。
シアトルには山下、柴山連合艦隊、サンフランシスコには東郷艦隊、
ロサンゼルス、サンディエゴには川村機動艦隊が連日連夜爆撃を加えていた。
今回、東郷艦隊には黒姫の姿はなく航空母艦”八雲”が旗艦となっている。
八雲は防御力を犠牲にし、搭載機数を増やした航空母艦であり予備も合わせれば160機にもなる。
「第一次揚陸部隊は今月28日に到着予定だそうだ。」
東郷はそういうと双眼鏡で業火に揺らぐサンフランシスコを眺めた。
「もうそろそろで到着するのですか。
米国本土攻撃とは後にも先にも我々日本帝国のみになるでしょうね。」
松永は生唾を飲み込んだ。
そして、8月28日深夜に第一次上陸艦隊がサンフランシスコに到着し兵員18万人を揚陸した。
その翌日7時にロサンゼルス方面に第一次上陸艦隊ロサンゼルス方面隊が到着し24万人を揚陸すると
同時刻にシアトル方面に14万人が揚陸された。
揚陸艦八丈型は68隻が稼働し、また日本に存在する七割の船舶を使用し米国への本土攻撃部隊370万人を
運搬した。
9月28日に最後の部隊が輸送され八丈型のみによる物資輸送に切り替わると
侵攻作戦が開始された。
シアトル方面部隊は第三機甲師団戦車850両、自走砲540両、輸送トラック2800台、兵員38万人で
バンクーバー防衛線の米軍4万人を四日で突破するとワシントン州に入り、スポケーン航空基地を
奪取、コロンビア盆地に防衛陣地を作った。
サンフランシスコ部隊は第七機甲師団と第四工兵部隊が共同し、サクラメント邀撃陣地を突破、
シエラネバダ山脈を上った。
しかし、障害も多くカーソンシティに着くまで4日のズレが出る見込みとなった。
そして、本命であるロスアンゼルス方面部隊はモハーベ砂漠突破作戦を開始した。
総合司令官上原勇作元帥はティファナに司令部を置くと作戦を練り直していた。
そこには岩仲義治中将の姿があった。
「モハーベ砂漠への爆撃をしているが戦力の弱体化はあまり見込めていない。
よって、重戦車を先頭にした突破戦術”天馬の角”戦術を使用する。」
天馬の角戦術とは、全面装甲の厚い重戦車を壁となし、装甲の薄い中戦車、軽戦車は
重戦車の背後から援護射撃を行わせ、安全に進行させるせる戦術である。
上原は一小隊に重戦車一台、中戦車三台、軽戦車8台で突破する部隊を構成した。
「第一小隊前へ!!」
150ある小隊の内上原は第68小隊指揮隊として96式戦闘指揮車に乗車した。
96式戦闘車の前を走る甲型の”五式重戦車”は全重量85トン、車体長13.2m車体幅6m、車高3.8m
という動く要塞であった。
装甲は軽量化と防御力の強化のため複合装甲を用い、正面350mm側面220mm背面250mm
であり、正面は複合装甲により実質600mmの防御力があり米国の如何なる攻撃をもはじき返す。
主砲には海軍砲を改造した20cm砲が装備された。
しかし、生産数は僅か60両のみでアメリカには48両が輸送された。
そして、前衛で指揮を取っている岩仲中将はバーストー前衛戦線にて接敵した。
バーストーはモハーベ砂漠の入り口にある街であり米軍はそこを前衛拠点としていた。
「前方1000に敵戦車!」
「車種は?」
「M4シャーマンです」
上原は前衛の五式に榴弾射撃を実地するように指示する。
”射撃開始”
地鳴りとともに爆炎が筒から噴き出し、マズルブレーキによって左右にも噴煙が飛ぶ。
戦車砲としては世界最大口径であった。
M4シャーマンが爆炎に包まれ煙が払われた時には既に動かなくなっていた。
それは20cmもの榴弾を撃ち込まれると薄い装甲の戦車は内圧が急激に高まり戦車は無事でも搭乗員は
ひき肉状態となってしまうのだ。
五式の射撃を受けたM4シャーマンは元の形がわからないほどに歪んでいた。
米軍は血祭りに上げられた友軍を見て撤退を始めた。
撤退時、五式に射撃をするもののまったく効果はなかった.
そしてバーストー西部の守備隊司令官を務めていた”クレイトン・エイブラムス少将”は
日本軍は紙装甲という認識の違いから大混乱していた。
「こちら、第三戦車小隊、敵重戦車と軽戦車中戦車からなる敵部隊と接敵。
敵重戦車は強固にて、火力支援を求む!」
「すまない、全ての防衛ラインで敵の圧力を受けていて援護に行ける
部隊はない...」
第三戦車小隊の無線兵はしばらく言葉を失い、弱弱しく
「了解...」
と言い残した。
この部隊の生存者は一人も居なかった。
バーストー西部防衛部は戦線から2kmしか離れておらず、撤退準備を進めていたエイブラムス少将は
得体の知れない戦車と統率のとれた日本軍の動きに過剰過ぎるほどの恐怖感を示していた。
そして、戦線が不利になるとついにパニックを起こし、副官が指揮を執るようになった。
だが、悲報は留まるところを知らない。
「第一戦車中隊......敵の..超重戦車の攻撃により....潰走..戦線維持は不可能な―――」
副官は報告に耳を疑った。
第一戦車中隊はエリートの集まりでありこの防衛線の主力であった。
しかし、それが潰走ということはこの戦線を支えることは不可能、副官は西部放棄をペンタゴンに
報告すると撤退を促した、しかし...
「敵は重戦車のみにあらず、中戦車、軽戦車により左右からの挟撃を受けつつあり...
撤退は絶望的......父さん...母さん...good..by―――」
バーストウ・ハイツは先ほども言った通り街であり、狭い路地を利用した巧みな戦術により
米軍は戦車一台逃げることができなくなっていた。
バーストー西部バーストウ・ハイツにおける戦闘により米軍は70両中62両を撃破され
2両故障で撤退した。
日本側の損害は皆無であった。
米国情報部は頭を抱え、未知の強大な力に出会ってしまったと戦略の考え直しを迫られた。
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