表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編009『家庭教師』

作者: 綾野祐介

『家庭教師』

                綾野祐介



「家庭教師をやってみないか。」


 突然そう言われて「?」と思うのは当たり

前だと思う。つい先日、通っていた大学を自

主退学したばかりだったからだ。大学では学

生兼助手をやっていたが、飛び級で入学した

ので、まだ十八歳になったばかりだった。


 一度に事故死してしまった両親が残してく

れた遺産や保険で多分普通の生活をしていれ

ば一生食べていけるはずだった。バイトの経

験もない。


「いや、普通の意味での家庭教師ではなく、

監視役もかねて、ということなのだが、どう

だろう。」


「いったい、誰の家庭教師をやれと言うんで

すか?貴方が直接頼みに来るなんてよほどの

ことだとは思いますが。」


 頼みに来た人物が問題だった。ナイアルラ

トホテップ、その人が直接来たのだ。あり得

ない。確かに、ここ数年の間にニアミスした

ことは何度もあったが、直接会うのは、数万

年振りだと思われる。杉江統一として生を受

けてからはもちろん初めてだ。


「実は、七野修太郎という高校一年生を見て

ほしいのだよ。」


「誰なんですか、それは。」


「中身は我が主だ。」


「えっ?」


 ナイアルラトホテップが『我が主』と呼ぶ

相手は、この宇宙に一人しかいない。万物の

王アザトースだけだ。


「まさか、封印が解かれたとでも?」


「いや、違う。我にも事情が解らないのだが、

確かに七野修太郎の中身は我が主なのだよ。

元に戻す方法を見つけている間、我が主の相

手をして欲しい、ということだ。暴走されな

いよう監視も含めてな。」


 途方もないことだ。自らの存在も普通では

ないと思っていたが、まさか万物の王にそん

な事が起こっていようとは。


「何か元に戻す当てでもあるんですか?」


「この際、贅沢は言っておれん。セラエノの

智慧を借りようと思っておる。」


「あのセラエノ図書館ですか。僕は行ったこ

とがありませんが、そこに答えがあると?」


「あそこには旧神どもが記した書物も保管し

てある。忌々しいが最早他に方法もない。」


「判りました。でも長くは持ちませんよ、早

く解決してもらわないと。」


 こうして僕はアザトースの家庭教師になっ

た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ