続き(修正版)
「さて、交渉タイムか」
「交渉に来ることはドラコが伝えてるみたいね、気負わず行きましょう」
「そうだな、いくか」
ガイアはドアを軽くノックします。
「どうぞー」
中からすぐに声が返ってきました。
ガイアはドアを開け、三人は部屋の中に入って行きます。
「待ってたよ。君たちが巨人亭の冒険者だね?」
三人を出迎えたのはガイアの胸元までも無いないような少年でした。(ちなみにタビは腰ぐらいまでしかありません)
背が低い奴だなーと二人は思いました。
しかしそれよりも、頭の上に付いている犬のような耳に視線と興味がとまります。
「ねえガイア。あれってアクセサリーかしら」
「だとしたら、すっげえ斬新なアクセサリーだな」
触ってみたいなぁ。
マリアは小さな声で呟きましたが、誰にも聞こえませんでした。
「あなたがレオかしら?」
「もちろん、ここはボクの部屋だからね」
「ドラコさんからの依頼で来ました。話は聞いてるでしょうか?」
ガイアが珍しく丁寧な口調でレオに尋ねます。
「もちろん知ってるよ。先に手紙をもらったからね。
話す前に場所を変えよう。君たちの他にもお客がいるんだよ」
三人はレオに案内され、同じフロアにある会議室にやってきました。
中に入るとレオの言っていた先客4人が椅子に座って待っています。
タビはその4人を見て思わず身を固くしました。マリアもガイアもその4人に見覚えがあります。
「ガイア、あいつらよ。覚えてるでしょ?」
「ああ、何となく覚えてる」
「ここで会ったが百年目ってやつかしら。ほらタビ、不意打ちするなら今よ!」
「ちょ、さすがにここじゃまずいだろ」
その4人はあるダンジョンでタビを見殺しにした冒険者でした。
「ほらほら、憎しみを込めてファイヤーボールでも撃ちなさいよ」
「……大丈夫うさ」
ギャーギャーしてる内に相手もこちらに気付きます。
「あーお前ら! 俺らからお宝を横取りしたお邪魔コンビじゃねーか。
そしてなんだ、お前らその兎野郎を生き返らせたのかよ。
っで、俺らが先に見つけたあの核は相当高い値段で売れたみたいだな。たっく、ふざけやがって」
リーダーらしき人物が三人の顔を見るなり悪態をつきます。
こいつこそが魔導核を守るドゥームから逃げるためにタビを見捨てた張本人です。
「ん、胸につけてるそのバッチは・・・うは、お前ら巨人亭の冒険者になってんのか。
コイツはいいや、俺らがいる猛き隆盛の神人亭の親分から、巨人亭の奴らには手加減するなって言われてんだよ」
「神人亭? たしか前にドラコが言ってたところね。
『巨人亭は他の追随を許さない素晴らしい冒険者の店だが、唯一ライバルがいるとすれば神人亭だろうな』って」
「こっちの商売敵であり、タビの仇でもあると。……なら、遠慮はいらねぇな。
仲間を見捨てて逃げた野郎がいい口きくじゃねーか!」
「さすが我が弟、そう来なくっちゃ」
相手の挑発に乗ったガイアにマリアは愉快そうな声をかけました。
マリアもやる気満々です。
「ちょ、ちょっと待ってよ。冒険者ってのはこんなに争い好きの集団なの?
両方ともボクと交渉しに来たんでしょ、騒ぐだけならボクは部屋に戻るよ」
レオのその言葉で両者はなんとか収まりました。
三人はしぶしぶ椅子に座り、レオとの交渉に入ります。
マリアは始め0Gで交渉する気でしたが、競争相手がいることもあり5000Gまで出すと言いました。が、ガイアとタビに止められます。
激論の末(マリアが主に反発)、契約金1万Gと知名度が高く信用できる人物がいること、自由な雰囲気(アットフォーム感)を交渉材料としてレオに伝えることにしました。
「へぇ、1万Gも出してくれるんだ。神人亭の提示金額より多いけど、ボクはお金じゃ動かないよ。お金が欲しいなら、そもそも研究者になんかならないからね」
レオは無邪気そうにそう言うと、すぐに悩み始める。
「神人亭は昨今の活躍が目覚しい。巨人亭はタイタンクエストのルコンさんやドラコさんと直々にお知り合……えへん、タイタンを最も隅々まで経験した人の話が聞ける。ボクの研究はタイタンを元にしているから巨人亭の方が研究はしやすそうだけど、最近は目立った成果を聞かないし……。
よし、やっぱりここは勝負で決めてもらおう。なんだか戦いたいみたいだしね」
「なーんだ、結局そうなるのね。上等じゃない」
「ちょ、ちょっと勘違いしないでよ。そういう勝負じゃないってば。
勝負の内容はシンプルな宝探し。最近ボクが場所を割り出した遺跡があってね、そこからボクが満足するようなお宝を持ってきた方が勝ちってルール。どう、分かりやすいでしょ?」
面白いゲームを考えついた子供のように得意げな口調で話すレオ。
神人亭の冒険者は腕っ節での争いじゃないことに安堵したのか、すぐに提案を了承した。
「たしかにシンプルで分かり易いな。やっちまうか」
「そうねガイア、やっちゃいましょうか。
と、言いたいところだけど、やっぱり子供には教えてあげないとね」
マリアからいつものテキトーそうな雰囲気が消える。
「ねえレオとやら。本当にルールの説明はそれだけなの?」
「そうだよ。あとは遺跡の場所を記した地図を渡すから制限時間内にお宝を持ってボクの元まで来ればいいだけさ。平和的でいい案でしょ」
「……そうね。とっても無責任で暴力的な案だわ」
「な、なんだって、このゲームのどこが悪いのさ」
「まずそこね。その遺跡は見つけただけで未探索なんでしょ? そういう所に潜る冒険者は常に命懸けよ。中にいる敵の強さも分からない、どんな凶悪な罠が仕掛けられているかも分からない場所に体一つで乗り込んで行くんだから当然よね。
命懸けの強要をしておいてゲームなんて言ってる時点で、相当タチが悪いわ」
「で、でも、冒険者はそういうのが仕事だし……」
レオは口ごもりながらマリアに意見した。頭の犬耳はすっかり萎んで垂れ下がっている。
「そう、仕事よ。でもあなたは命懸けの自分の仕事をゲームみたいに言われたらどう思うのかしらね。そしてもう一つ、このルールは相手を全員倒した方が早いし確実だし危険も少ないわ。
これは実力で優ってる私たちだけの話だけどね」
マリアは神人亭の息を呑む様子を感じながらレオへの話を続ける。
「さすがに殺すまではしないかもしれない。でも、絶対じゃないわ。当然相手だってこちらの邪魔は考えてるだろうし、こっちだって考える。依頼を達成できるのはどちらか一方なんだから当たり前よね。
冒険者は善人の集まりじゃないの。目的のためなら命だって賭すし、人を貶めることも平気でする無法者の集団よ。ここに住むあなたがよく見かける騎士団とは真逆でしょうね」
「わ、わかったよ。ちょっと考え直すから少し時間を頂戴」
「それだけ? 一言あるんじゃないの?」
「……ごめんなさい」
マリアのおかげで勝負のルールは大幅な修正がされた。
まず遺跡までレオもついて行くことになった。そして相手への妨害や攻撃は厳禁。ルール違反が判明した時点で即失格となる。さらに、結果発表は両者がレオの前に揃ってから行うことになった。何らかの原因で両チームが揃わなかった場合は両者とも失格。
「なんだか私たちに利がない追加ルールね。変なこと言わなきゃ良かったわ」
マリアはいつもの調子に戻っている。
「相手の自滅でもこちらに被害があるうさね」
「応援はしたくないけど、結果が出るまでは生きてて欲しいわ。
でも、遺跡内でピンチになってるアイツ等を助ける事はしたくないわね……」
「あ、ボクの見立てだと、遺跡内で相手チームと遭遇することは無いと思うんだ。
今から向かう遺跡は入口が二つあるタイプの遺跡でね。そういう遺跡は別々の入口から入れば中で繋がってることは殆どないよ」
「なんだ、そういう事は早く言いなさいよね。
じゃあ早く遺跡までの案内頼むわ。なんだか柄にも無いことをしたから早く体を動かしたくてしょうがないの」
「おっけー。外出許可も下りてるからすぐ出発するよ」
レオはマリアの言うことに承諾すると、早馬車三台と待ってる間の警護人を手配しすぐ遺跡へと出発した。
普段こんな自由な行動は許されていないレオであったが、ここでもドラコからもらった書類が効果を発揮しているらしい。
「着いたよ。入口は今目の前に見えてるやつと、あっちの奥に立っている大きな木の近くにあるよ。どっちがどっちに入るかは好きに決めてね。あと、制限時間は今から日が暮れるまでの3時間。それまでに遺跡から出てきてボクにアイテムを見せてね」
「おっしゃ早い者勝ちだあ。じゃあな」
「ちょっと待ちなさい! クジ引きとかの文化を知らないの」
神人亭の4人はレオの話が完全に終わりもしない内に、近くの入口から遺跡に潜って行った。
「まったく本当にどうしようもない連中ね。私たちも急ぐわよ」
「いくかー」
「行くうさ」
三人は遠い方の入口まで素早く移動しました。遺跡の入口はいきなりの下り階段で始まっています。
特に迷うこともなく、三人は遺跡へ入っていきました……。
☆
~遺跡内部~
三人は薄暗い階段を下りていくと明かりのついた部屋にたどり着きました。
広さは10メートル四方ほどあり壁も床も石のような質感をしています。
遺跡特有の神秘的で殺伐とした雰囲気を三人は肌に感じますが、小奇麗でどことなく穏やかな感じもすることに気付きます。
部屋には奥に続く通路が一つだけあり、先は薄暗くてよく見えません。
「この部屋は安全そううさね」
「そう、じゃあ早く先に行きましょう。あまり危ない感じはしないけど、油断は出来ないわ」
「そうだな、行くか」
三人は奥にある通路から先に進んだ。
少し歩くと次の部屋が見えてきます。
最初の部屋とまったく同じような広さと形で、また奥に通路があるようです。
しかし今通っている通路と部屋の境に透明な膜みたいなものが張ってあることに三人は気付きました。
「なにこれ、サラン〇っプみたいね。タビ触ってみなさいよ」
「そうなると思ったうさ」
タビは恐る恐る膜に触ってみると、パチっと静電気程度の痛みがタビを襲いました。
びっくりしてタビは手を引っ込め自分の手を確認しますが特に異常なく、痛みも消えています。
「タビ、大丈夫か?」
「びっくりしたうさ。でも、無害そううさね」
タビはもう一度膜に触れますが、やっぱりパチっと同じことが起こりました。
「なに遊んでるのよ。どれどれ」
マリアも膜に触ってみます。が、何も起きません。
「あれ、私には反応しないわね」
「俺もやってみるか」
ガイアが膜に触れると、タビ同様にパチっとしました。
「なんだこれ? 膜も割れないし、マリアには反応しないし。
タビ、何かわからないのか?」
「うーん、謎うさね。でも危険な感じはしないうさ」
「じゃあ大丈夫か。行くぞ」
三人が膜を潜り抜けて中に入ると床に魔法陣のような模様が浮かび上がりました。
そして3体の得体のしれない何かが現れ、奥の通路へ続く道を塞ぎます。
「わお、大層な仕掛けね」
「こいつらはガストルークうさ。僕らなら楽勝な相手うさよ」
「いきなり出てきた割に襲いかかってこないな。奥の通路に行かせないよう守ってるのか。
こっそり脇をすり抜けるのは……逆に危ないか」
「そうよガイヤ、雑魚はサクサク倒して進むのが定石よ」
「おし、やるか」
ガイア・マリア・タビ VS ガストルーク3体
ガイアの手番。
ガイア=イェルギィ
種族:ナイトメア 生まれ:軽戦士
器用:18(+3)
敏捷:26(+4)
筋力:18(+3)生命:14(+2)
知力:14(+2)
精神:14(+2)HP:29
MP:17
移動力:26(全力78)
フェンサー5フェアリーテイマー1スカウト3エンハンサー2
武器習熟/ソード 必殺攻撃 回避行動
武器:フリッサ 1H 鎧:ソフトレザー 盾:バックラー
ガイア先制判定に成功。
その勢いのままガストルークAに攻撃します。
当然命中。
弱点効果も上乗せされ、ガストルークAの残り体力は4です。
続いてマリアの手番。
マリア=イェルギィ
種族:人間 生まれ:戦士
器用:18(+3)
敏捷:14(+2)
筋力:21(+3)生命:14(+2)
知力:14(+2)
精神:17(+2)HP:32
MP:23
移動力:14(全力42)
ファイター1シューター6マギテック2
両手利き 二刀流 武器習熟/ガン
武器:デリンジャー×2(ホルスターに収納中) ショートスピア×2 装備中
鎧:プレートアーマ
マリア、持っていたショートスピアを二本ともガストルークBへ投擲。
両方とも命中。一本目のダメージ14点。二本目のダメージ、致死量。
ガストルークBを倒しました。
タビの手番
種族:タビット 生まれ:魔術師
器用:13(+2)
敏捷:11(+1)
筋力:12(+2)生命:11(+1)
知力:26(+4)
精神:18(+3)HP:29
MP:36
移動力:11(全力33)
ソーサラー6スカウト1セージ2
魔法誘導 魔法拡大/数 MP軽減/ソーサラー
武器:メイジスタッフ 鎧:ソフトレザー
「こいつら弱いし、タビは見てていいわよ」
「だな」
「了解うさ」
タビは二人の様子を見守った。
敵のターン。
ガストルークBは攻撃してきたガイアに攻撃。
が、当たらない。
続いてガストルークCはマリアに攻撃。
前の遺跡では蛮族に攻撃いただきまくりのマリアも今回は回避成功。
ガイアの手番。
弱っているガストルークBにトドメを狙います。
ファンブル無し。つまりガストルークBを倒しました。
マリアの手番。
ホルスターから銃を抜き、ガストルークCにソリッド・バレットを二発撃ちこみます。
合計22点ダメージ。ガストルークCも倒れました。
戦利品⇒ 魔力を帯びた石
「こんなもんか」
「楽勝ね。早く進みましょう」
三人はすぐさま先に進むとまた同じような部屋に出ます。
膜は無く、部屋の隅に宝箱が置かれていることが通路にいる三人からも見えます。
「どれ、調べてくるわ」
「いってらっしゃい。さっそくお宝ゲットね」
ガイアは救命草×2を手に入れた。
「鍵も罠も無しか」
「なにそれ、救命草? さすがにそれじゃ勝負にならないわね。タビにでもあげれば?」
「そうだな」
「……ありがとうさ」
「あら、この先は下り階段みたいね。レッツゴー」
三人は下り階段を降りていくと、またしても似たような部屋に出ました。
「ここの遺跡はずっとこんな感じなのかしらね。迷わなくていいけど、ちょっと楽過ぎない?」
「楽な分にはいいじゃないか。おっと危ない」
ガイアは嫌な予感がして咄嗟に踏もうとしていた床から足を逸らしました。
よく見ると、その一部分だけ床の色が変わっています。
「これは罠だな。油断してたら踏んでたぜ」
「それ何かの仕掛けだったりしないの? タビに踏ませてみた方が良くない?」
「絶対に嫌うさ」
「罠だよ。危険な感じがする」
「そっか。じゃ、進むわよ」
通路の先には同じ部屋、そして今度は上の階であった薄い膜が張ってあります。
どうやら上の階の膜と同じようで、タビとガイアが触る時だけパチります。
「性別、いや穢れに反応してるのかもな」
「そうかもしれないわね。で、これを通り抜けると……」
床に魔法陣のような模様が浮かび上がり、大きい人型の何かが現れました。
「む、相変わらず襲ってこないようだけど強そうな奴ね」
「この魔物は……解らないうさ」
「え、タビでも解らないのか? マリアの言うとおり見た目は手強そうだな」
「攻撃してみれば強さなんて判断できるわ。ほら、戦うわよ」
ガイア・マリア・タビ VS Unknown (魔物知識判定 失敗)
ガイアの先制判定、成功。
ガイアの手番。
フリッサの攻撃命中。8点ダメージ。
マリアの手番。
前の戦闘後にしっかり拾っていたショートスピア二本を投擲。
両方とも命中。合計ダメージは17点。
タビの手番。
魔法リープ・スラッシュで謎の敵に攻撃。
行使判定成功。出目(6.5)ボーナスで達成値21。相手の精神抵抗を軽々超えました。
肝心なダメージは……16点。
魔人っぽい謎の敵は倒れました。
戦利品⇒悪魔の血
「ちょっとタフだったけど、私たちの敵じゃなかったわね」
「そうだな。他に何も無さそうだし、先に進むか」
進んだ先はやはり似たような部屋です。
ただし、部屋の中心にはオシャレなテーブルとイスが置いてあり、瓶が二本置かれているのが見えます。
「これヒーリングポーションね。ほんと、ずいぶんお優しい遺跡だこと」
「何かが書かれた紙が置いてあるな。……読めん、タビ読めるか?」
「魔法文明語うさね。楽勝うさ。
えーと要約すると、ここでゆっくり休んでから進め、うさね」
「これまたご親切ね。こんなに気遣ってくれる遺跡は初めてだわ。でも、今のところ休む必要は無いわね」
「だな。制限時間もあるし先を急ぐぞ」
「だいたい30分ぐらい経ったうさね。そろそろ良い物が見つかって欲しいうさ」
進んだ先は階段になっていました。三人は特に迷いもなく下の階へ移動します。
すると、また膜が張ってあり、今までより二回りほど大きい部屋にたどり着きました。
三人は特に構わず中に入ると、同じように得体の知らない何か二体が奥の通路を塞ぐように現れます。
「このパターンにもいい加減慣れたわね」
「今度は解るうさ。こいつらガストナイトうさよ」
「最初に出てきた奴をちょっとデカくて強くした奴だな。さっさと片付けるか」
ガイア・マリア・タビ VS ガストナイト2体
(同じような戦闘なので見どころだけまとめます)
フェンサー技能で攻撃したガイアのクリティカルが光りました。
しかしMVPは魔力行使判定とダメージ判定でもクリティカルを叩き出したタビ。
25点ダメージを2体に与える大活躍でノーダメージ勝利。
ちなみにマリアはダメージ判定でまさかの自動失敗。良いところがありませんでした。
以上です。
「だんだん敵が強くなった来たわね。お宝も近いのかしら」
通路を進むと広さが戻った部屋に着きました。真ん中に宝箱が置かれているのが見えます。
「罠とかは……無いみたいだな。お、鍵が掛かってる」
「ガイアー早く開けてよー」
「ちょっと待て」
目標値10の解除判定成功。ガイアは筋力増強の腕輪を手に入れました。
「……普通ね」
「よく見かける品うさ」
「だな。まだ奥に行く必要がありそうだ」
通路の先は下りの階段でした。
降りるとまた同じような部屋と膜があり、三人は気にも留めずに突入。
謎の何かが出てきます。
「スケルトンアーチャーとスケルトンナイトうさね。ナイトの方は少し手強いうさよ」
ガイア・マリア・タビ VS スケルトンアーチャー&スケルトンナイト
(前回同様まとめてお伝えモード)
敵が強くなってきました。
相手の高い防護点になかなか良いダメージが出ないガイアとマリア。
ここはタビの魔法ダメージに期待したいところですが……。
タビ、クリティカル二回転でダメージ31点を出す。
もちろん数拡大で撃ったのでアンデット全滅。
またしても先行1ターンキルでノーダメージでした。
恨みある競争相手が絡んでいるせいでしょうか、今回のタビは一味違うようです。
以上、戦闘結果でした。
「タビやるじゃない! ご褒美に魔香草を二つあげるわ!」
「すごいな、タビ」
「ありがとうさ」草二つ使用。10分後にMP8回復。
タビの活躍を讃え終わり、再び奥へと進んで行く三人。
すぐに次の部屋にたどり着きますが、今回は先に進めそうな通路が見えません。
ただ、壁の一部に不思議な模様が描かれてあり、明らかに何かありそうです。
ガイアはその壁を調べるためさっそく近づいてみると、壁から声が聞こえてきました。
魔法文明語で話しているようなので、タビが翻訳して二人に内容を伝えます。
【ある男は酒場がたくさん立ち並ぶ街道を通っていた。
しかし、男は酒場を一軒たりとも通り過ぎることはなかった。なぜか?】
「なにそれ、なぞなぞ? 面倒なことしてくれるわね」
「俺もこういうのは苦手だな」
「うーん、、通り過ぎないって言い方が怪しい感じがするうさね」
「じゃあ酒場に全部寄って行ったんじゃねーか?」
「それうさ!」
タビは魔法文明語でガイアの答えを言うと、模様の付いていた壁はガラガラと動きだし奥へ続く通路が現れました。
「ガイアナイス。ココで終了かと思ったわ」
「マリアもちょっとは考えてくれよな」
通路の先は下り階段でした。
「たいぶ降りて来たわね。そろそろヤバいのが来る頃かしら」
「かもな、少し気を付けていくか」
降りた先は相変わらずの部屋。しかし部屋の隅には宝箱が見えます。
「宝箱があるなら調べなくちゃね。ガイア頼むわ」
「おう」
ガイア罠感知判定に成功。
宝箱に仕掛けられていた罠を見抜きました。
また、頑丈に鍵もかかっていることがわかりました。
巧妙に隠された罠を先に見抜いたことにより、判定に+2のボーナス。
ボーナスの恩恵もあり、ガイアは罠を作動させることなく開錠に成功しました。
ガイア達は一角獣の角を手に入れた。(テッテレー♪)
「お、珍しいものが入ってたな」
「やっとお宝っぽいものが出て来たわね」
「でも、これぐらいじゃ研究者はびっくりしないうさよ」
「だよなー、なら先に進むか」
再び先に進む三人はほどなくして次の部屋にたどり着きます。
膜、そして清潔そうなベットと本棚が部屋の中には見えました。
「また休憩スポットからしね」
「とりあえず調べてみるか」
ガイアが本棚に背を向けてベットを調べだすと、急に本棚が動き出してガイアに襲いかかってきます。
※ガイア&タビが危険地判定に失敗したため不意打ちになりました。
「ガイア、そいつデックチェストトラップうさ」
「言うのが遅い!」
ガイア・マリア・タビ VS デックチェストトラップ
(まとめてお伝えモード)
不意打ちでペナルティを負うガイアでしたが、持ち前の高い回避能力のおかげで敵の攻撃を完全回避。
三人の出目も良く、自ターンが終了したデックチェストトラップに生き残る術はありませんでした。
以上、結果をお伝えしました。
「ノーダメージだけど、少しヒヤっとしたわ。ガイア、もう少し慎重に動きなさいよ」
「次から気を付ける。……ここには何も無いようだな」
「今で1時間ぐらい経ったうさね。先に行くうさ」
次の部屋は完全な休憩スペースとなっていました。
ベット・イス・テーブルが配置されていて、のんびり過ごせそうです。
ガイアは慎重にそれらを調べてみましたが危険な感じはありません。
「先はまた下り階段のようね。あら、通路の壁に何か書いてあるわ」
「また魔法文明語うさね。『次で最後、倒すまで出られない』って意味うさね」
「最後まで親切なんだな」
「ほんと、なんだか締まらないわね。何が出てくるか知らないけど、サクッとやっちゃいましょ」
階段の先は大きな部屋に繋がっていました。
入口に膜は張ってませんでしたが、三人が中に入ると黒い膜なようなものが入口を塞ぐように現れます。
それは非常に硬く、まるで壁のようです。
そして、得体の知れない何かが大きな部屋の中央に出現しました。
「……やばいうさ。こいつ見たことないうさ」※魔物知識判定失敗
「まじか」
「タビ、勉強不足よ。見た感じこれも魔神っぽいわね」
ガイア、先制判定失敗。
「やべ」
「ちょっとガイア本気なの?! 絶対ここ、一番大事な場面よ」
「調子悪かった。とりあえず二人は下がっててくれ」
ガイア・マリア・タビ VS 魔神っぽい強そうなボス
(ボス戦ですが、まとめてお伝えモード)
ついにやってきたボス。しかしその正体は判らず、しかも後攻スタートという悲劇。
他部位による手数の多い攻撃が三人をじわじわと追い詰めていく。
というGMの予想はハズレ、チート魔法使いタビの容赦ないクリティカル乱舞により逆に追い詰められるボス。
部位を再生してガイアの意表をつきはしたものの、それが限界。
ほとんどダメージなく、三人はボスを撃破しました。
ダイスの女神はタビットをお好みなようですね。
以上、結果をお伝えしました。
「やった……わね。私たちが戦った中で一番強い敵だったかも」
「腕が再生するとは思わなかった。またタビの魔法に助けられたな」
「そうね、悔しいけど今回はタビのおかげね。でも、魔神の勉強はしておきなさいよ」
「へーいうさ」
謎の魔神を倒した三人は奥の通路からさらに奥へと移動します。
現れた部屋は今までのような殺風景な部屋ではなく、壁や床に神秘的な模様が彫刻されています。そして正面の壁には慈愛に満ちた美しい女性の絵が描かれていました。
また部屋の中央には台座があり、その上には花のような装飾が施された小箱があります。
「危険は無さそうだな。箱を開けるか」 パッカーン。
「なにこれ、バッチ?」
「あ、これは星のアミュレットうさ。魔法文明時代の品うさね。一人前の魔法使いになった弟子に送っていたと云われるアイテムうさ」
「へー、保存状態も良さそうだし、そこそこ貴重そうね。でも、なんだか物足りない感じだわ。ガイア他に何かないの?」
部屋を探索したガイアは女性が描かれている壁に魔法文明語で何か書いてあることを見つけました。
「私は誰? と書いてるうさね」
「私ってこの絵の人? そんなのわかるわけないじゃない!」
「名前じゃなくてもイイじゃないか? 師匠とかそういうので」
「それ言ってみるうさ」
タビが魔法文明語で師匠と言うと、ゴゴゴゴと壁の一部分が動きだし通路が現れた。
「正解だったうさね」
「うそ、ガイアなんでわかったの?」
「この遺跡の変なところは、師匠が弟子の力試しに作ったと考えれば納得できるからな」
「なるほどわからん。とにかく奥に行くわよ、私のお宝センサーが反応してるわ」
通路の先は小部屋でした。中に頑丈で重そうな宝箱が一つだけ置いてあります。
「鍵も罠も無いな。開けるぞ」
「中身は……え、靴?」
「これ、結構すごい靴うさよ。たしかクロノスブーツって名前の魔法装備うさ」
「私が予想してたお宝とは違うんだけど。でも、ガイアに似合いそうね。良かったじゃない」
「ん、箱の底にナイフが刺さってるな。抜いてみるか」
「いいんじゃない、またお宝が出てくるかもしれないし」
「……簡単に抜けた。刃の部分に変な模様が刻まれてるな」
「ふーん、価値はありそうなの?」
「俺たちには無いな、ただのナイフだ。でも、研究者にとっては宝かもしれん。
これと前に似たような模様が刻まれた石を高値で買い取ってる学者を見たことがある」
「ほんと! じゃあレオに見せるならぴったりね」
三人は他に何か見落としてないかと小部屋を調べましたが特にありません。
先に続く道もなく、ここで行き止まりです。
三人はレオに見つけたものを見せるべく地上へ戻ります。
途中、遺跡の様子に大した変化はありませんでしたが、あの点々と張ってあった薄い膜は無くなっていました。
「レオ、いい物見つけたわよ! って、あんた達、よく生きてたわね」
レオの元にはすでに神人亭の冒険者4人が立っていました。
「お前ら遅かったじゃねーか。やっぱ誰かの横取りしねーと探索も出来ねーのか?」
「言うねえ。そんな口をきくんだ、相当いいもん見つけたんだろうなぁ?」
「まーな。隠すこともねーから見せてやるよ」
リーダーらしき人物が指を鳴らすと、メカメカしい丸い物体を抱えた神人亭の一人がガイアの前に進み出ました。
「くっくっく、反応ねえとこを見るとコレを知らないようだな。
こいつは、魔導増殖炉っつーもんで、うめえこと使えば無限にエネルギーを生み出す魔導機よ」
「無限だと? それが本当ならとんでもない物だな」
「……残念ながら、それ本物だよ。君たちが来る前に構造を調べてみたけど間違いない」
疑いの声を出したガイアにレオが話しかける。
「国の重要研究対象の一つに指定されるぐらい有名で貴重で危険なものさ。魔導機は僕の専門じゃないけど、研究者で知らない奴はモグリだね。
あいにく壊れているみたいで動かないけど、こんなに保存状態が良い炉は僕も初めてみたよ」
「なーんだ壊れてるのね。あんまり凄そうだからちょっとビックリしたわ」
「そうだね。値段を付けるなら、まあ10万Gぐらいかな」
「じゅうまんがめる?! こわれてるのに?!」
マリアが素っ頓狂な声を上げた。
「これだけ状態が良ければ修復出来るかもしれないし。構造の研究には素晴らしい資料となるからね。
もし実用化できれば町の一つを簡単に消し去るぐらいの威力を生むんだよ? 10万Gでも安いぐらいさ」
「まじか……すごいな」
「まあね。確かにすごいけど、それはそれ。次は君たちが取ってきたものを見せてよ」
落胆気味のガイア達にレオは成果を見せるよう催促します。
三人は神人亭の品に勝るとは思えないながらも、宝箱の底に刺さっていた模様付きのナイフをレオに見せることにしました。
レオはガイアから手渡されたナイフをしげしげと眺めると、ふーん、と気の無さそうな声を出します。
ただ、頭の上の犬耳は楽しそうにピコピコと動き出しました。
「ねえ、なんでコレを僕に見せたの? 変な模様が付いたナイフに見えると思うんだけど」
「似たような模様が付いた石を研究者が高く買い取ってるところを見たんだ。ただ、10万Gはさすがにしないだろうな」
「なるほどね、知識じゃなくて経験で価値が解ったんだ。やっぱり冒険者って面白いや。
ナイフに刻まれてる模様は守りのルーンと呼ばれる魔法文明時代に編み出された魔術の一つだよ。
刻んだものに守りの剣と似た性能を与える魔術でね、国でもそこそこ重要視されてるものさ」
「ほんと? じゃあ、もしかして」
「10万Gは絶対にしないね。せいぜい1万Gぐらいじゃないかな」
「……なによ。期待して損したわ」
「これで完全に結果が出たね。それじゃ僕が契約するのは」
「巨人亭だよ」
「え?」
「まじで?」
「ああァ? おい、判定間違えてるぞ。価値はこっちの方が上だって言ってたじゃねーか」
「まあ価値はそうだね。覚えてる? ルールを破ったら失格だって。僕は初めに言ったはずだけど」
「べ、別に破ってねーぞ。中で巨人亭の奴らには会ってねえ」
「妨害行為の方じゃないよ。その炉、この遺跡にあったものじゃないでしょ」
「な、な、なんで、そんなことわかんだよ。ちゃんと遺跡の中にあったぞ」
「んなわけない。この遺跡は魔法文明時代のものだから、そんな如何にもな魔導機がある確率は極めて低い。
それにね、その炉が発掘されたことは知ってるんだ。確か神人亭の幹部PTが北の地で見つけたものでしょ?
極めて重要な発見だからね、国で研究者をやってるなら耳に入るんだよ」
まさにレオの言った通り。
神人亭が見せた魔導増殖炉はレオとの交渉材料の一つとしてあらかじめ持参したものだった。
ぐうの音も出なくなった神人亭の連中は、くそ覚えてやがれ、という言葉を残して逃げるようにこの場を去っていきました。
「ほんと、バカな奴らね」
「負けたと思った自分が恥ずかしいうさ」
「まあ結果オーライか」
「それじゃあ出発しよう。巨人亭はディザだったよね」
レオがうきうきした様子でマリアに話しかける。
「そうだけど、まさか一緒に来るつもりなの?」
「当然だよ。早くルコンさんやドラコさんに会ってみたい、じゃなくて、ちゃんと契約するんだから代表者と直接話したいからね」
「ミーハーか」
「うちにも似たようなのがいたわね」
「レオとは気が合いそううさ」
こうしてマリア達はレオを連れて巨人亭へ戻ることになりました。
三人の馬車に乗り込んできたレオはここぞとばかりにタイタンクエストについてタビと話します。
レオの周りにはあまりこういう話ができる人がいなかったようです。
好きな話題にのめり込む年相応な二人を見たガイアとマリアは、どことなく安心した気持ちになったのでした。
~古き黄昏の巨人亭~
相変わらず巨人亭は盛況です。もちろんレストラン部分の話。
三人はドラコの姿を探しますが見当たりません。しょうがないのでホールリーダーのシャルロットに尋ねてみると、奥でお待ちになってください、と言われました。
三人はレオを連れて巨人亭の奥へ入っていきます。
店の奥は巨人亭ゆかりの冒険者が使う専用のスペースになっており、タイタンから持ってきたアイテムやタイタン攻略時に使用した武器などが記念として展示されています。
展示はドラコの意向ですが、なんの理由があるのかはよくわかっていません。
レオは展示品を遠目で見てるうちにテンションが上がってきたようで、うずうずキョロキョロしながら目を輝かせます。
初めてここに来た頃のタビを思い出すなーと、ガイアとマリアの二人はレオの様子を見ながら思いました。
四人は中央の席に座って持っていると、大きな気配が四人に近づいてきます。
先に気付いたマリアが気配の元に声をかけました。
「ドラコ、依頼完了よ」
「おお、やけに早かったな。その顔を見ればわかる、うまくやったようだな」
「ああ、連れてきた」
「そうかそうか……ん、連れてきた?」
「は、初めまして。僕はレオ=アルタイト。この度はお話を頂きありがとうございます。握手してもらってもいいですか?、良ければこれにサインもお願いします!」
レオはいつの間にか用意してた上質な羊皮紙をドラコに差し出した。
「はっはっは、まさか直接連れてくるとはな。
ようこそレオ、来てくれて何よりだ。あっちにルコンもいるからそっちで話さないか?」「はい!」
「三人ともご苦労だった。報酬はそこで待機してるシャルロットから受け取ってくれ」
「あ、待って、聞きたいことがあるんだけど。それとフェイっていう騎士団員から言伝があるわ」
「ああ、だろうな。すまないが後にさせてくれ。たぶん長くなる」
ドラコはそう言うと、レオを連れて別室へと移動していった。
三人は傍で待機していたシャルロットから基本報酬の3000Gを受けとると、
しょうがないと割り切ったように食事の注文を始めたのだった。
知学の渇望 終了
本編のタイタンに続く……。
ニコニコ動画でタイタン卓本編のリプレイが進んでおります。
ただいま第一章まで完結しました。興味ある方は見てくださいです。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm25880495