前夜
机の上には数学、日本史、化学と三教科の教科書が並べられている。
後ろの掛け時計を見ると八時を過ぎたところのようだ。机の方に顔を戻し、再度三教科の教科書を確認する。
「勉強しようかな」
明日は定期テスト最終日。辛かったテスト期間もついに終わる。
しかし、今日は一つ問題があった。
本日の放課後の話だ。
帰り支度をしている所に、
「明日のテスト勉強しないよな」
友達のヤマダーがそんなことを言ってくる。
「明日ならしなくてもね」
その場にいる友人のマエダーが同調する。
「お前も明日ぐらいはしないよな」
「ああ、しない、しない」
突然の同意を求められ、間髪入れずに答えた。
「俺たちは勉強しない三国同盟だ」
ヤマダーが謎の同盟の設立を宣言し、謎の握手を求めてきた。
「共に勉強せずに明日を迎えよう」
マエダーがガッシリと握手を交わす。両手である。
付き合わないのも面倒だと思い、
「僕もやらずにいよう」
二人の握手の中に参加する。参加してしまい、今に至る。
「本当にやらずにじまいにしようか」
僕は頭を抱えながら机の上にうなだれる。
とりあえずどうしようか。寝るまでにはまだ時間が早い。親にはテスト勉強をすると言い切って部屋に入ってしまった以上、リビングに戻るという選択肢はない。
まずはどこからが勉強でどこまでが勉強になるかを考えよう。
ルーズリーフを取り出して、ペンで書く。
「一、問題を解く。これは勉強だ。同盟に反してしまう。」
問題を解くと書いた上からバツを書く。
「二、ノートのページを別の物に書き写す。解いてはいないし、ただの作業だ。問題はない」
書いた場所に丸をつけた。
「あと一つぐらい考えよう。」
ペンを回しながら適当に考え書き出す。
「三、教科書を読む。これは...」
少し頭を捻る。
「グレーゾーンだ。理由がテストのためだと勉強と捉えてられてしまう。しかし、読書の一環として考えればセーフだ」
暴論を吐き、丸と書いた。
「一番いいのは三だな。とりあえず楽だし」
とりあえず化学の教科書をあける。
「周期表は確認した方がいいよな」
スイヘイリーベと読み出す僕。
二十まで読み終わった所で気付く。
「ヤマダーは三国同盟とか普段から当たり前の用に使う歴史キチだ。」
好きな本は歴史書、好きなテレビ番組は梶浦音楽の流れる歴史番組。使うクリアファイルは偉人の写真入りという徹底ぶりだ。
「一方、マエダーは理系だ。それに数学に関しては普段から趣味で解く数学ヲタだ。」
目覚めた本は第一回本屋大賞受賞作。好きなテレビ番組は公営放送の高校数学。これまたぶれない。
「そして俺は考えるだけで何もしない屑。行動よりも思考優先。独り言が気持ち悪い屑」
最近のトレンドは新書。テレビ番組は低俗だから見ない。
察した。詰むのは俺だ。
数学の教科書を開いた。間違えた問題から解こう。
後ろを見たところ掛け時計の針は短針が九時を回ったところだ。まだいける。まだ戦える。
僕は三国同盟の秘密裏の脱退を英断した。
今回は『テスト』でやっていきました。
楽しんでもらえたら幸いです。
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有難う御座いました