こんにちは南田さん
かなり放置してしまって申し訳ありません。しかも内容もグダグダな感じに…後で直したいです。
にこにこ笑って、私に手を差し伸ばしてくれる金髪外国人の男性。
心なしか後光が射し込んでいる。
え、神様……?この人、神様なの……?
ふらー、と伸ばされた手を取ろうと私は腕を上げようとする。しかし、そこで我に返った。
「はっ?!!」
!?
私は今なにを!?あ、危ない…!
完全にアウェイな状況での心細さで、突如現れた怪しげな人間の誘いに乗ってしまうところだった!
まさか二十歳近くになって『知らない大人に付いて行かない』という母との約束を破りそうになるとは……。
私はどうかしていた。
「どうしたんですか?ほら、怖くないですよ。」
きらきらと輝く笑顔で私を見つめる金髪外国人。
何が目的なんだこいつ……!
何の企みも無く、見ず知らずのデブスに付き合って店に入ってくれるような、都合の良い人間なんているわけがない。
さ、詐欺師?つっ、つ、壺売り?……悪いお薬?
「あああ…、あ、の、だ、だ、だいじょぶですっ!!すみません!」
「え?髪切りたいんじゃ、」
金髪外国人が言い終えるより先に、私はダッシュで走った。
敵前逃亡もやむを得まい。
敵は美容室だけかと思っていたが、とんだ伏兵がいたのだ。
電車に乗って静かに帰ってしまおう。
見事に逃げ切った私は、帰りの電車に揺られて、一息つく。
流れるように過ぎる景色を眺めていると、ガラスに今にも泣き出しそうな醜い顔の女が写っていた。
ブサイクだ………。
こんな顔は他人に見せられないので、私は顔を隠すように深く俯いた。
「(……こんな電車に乗ってまで、ここに何しに来たんだろ…。)」
馬鹿みたい。いや、実際馬鹿だ。
あんなに張り切って予約しに来たのに、何もせずに逃げ帰るなんて、馬鹿としか言えない。
もう諦めた。私にはハードルが高すぎたんだ。
明日、いつも通り、おっちゃんの床屋で切ってもらおう……。
「お隣いいですか。」
伏せた頭の上から、男性の声が降ってきた。
条件反射でどうぞ、と返したが、言った後でん?と疑問を持った。
電車の席で、わざわざそんなこと聞く?
というか、他にもたくさん空いてるところあったと思うけど。
私は俯いていた顔が訝しげに歪むのを自覚しながら、声の主を見上げた。
「こんにちは、南田さん。」
「…………あ、こんに…ちは。」
見上げた先には、なんとあの金髪外国人がいた。
固まる私の横に、自然な動作で座る。
そのとき、ふわっといい匂いが。
私とは大違いだな、私なんてさっき走ったからさぞかし汗くさいだろうしな、とぼんやり考える。
これが俗に言う現実逃避なのだろうか。
今の現状をよく理解出来ない。
「あんなに走って疲れたでしょう。はい、これ。」
「あ、どうも……。ありがとうございます…。」
はい、と差し出されたのは、私が好きでよく買っている蜜柑ジュース。ああ、言われてみれば本当に喉渇いてる。
お金返さなくちゃ……………
………………
………………………
…………なんでコイツがここにいるんだ!?
「え、あの、あなたは…。」
「はい、南田さん。」
「(え!?な、なんで私の名前を知ってるの!?)」
私にこんな知り合いはいないし、この人に名乗った覚えはない。
さっき会ったばっかりなのに、なんで追いかけてきたり私の名前を知ってたりするんだろう?
「なんで……あの……わたしを…。」
「ああ。喫茶店で休憩してたら南田さんの姿が見えまして、お困りのようでしたので声を掛けたのですが、びっくりさせてしまったみたいですね。すみませんでした。」
「え…あ………いいえ。こちらこそ、ごめんなさい…。」
あれ……?
この人、いい人そう。
あ……もしかして、私が忘れてるだけで、ちゃんと面識のある人なのかも……?
というか、普通にそれしかないよね。
やだ……恥ずかしい勘違いをしていた。
詐欺師だとか壺売りだとか片栗粉だとか考えて、大変申し訳ない……。通報する前で良かった。
いやでも、誰だろう?
相手の顔を見ないように俯いている私は、見覚えのある顔か確かめようと、横に座る金髪外国人をちらりと覗き見した。
「やっと見てくれた。」
やはりと言うかなんと言うか、ばっちり目が合った。ひぃっ。
ずっと私のこと見てたんだ。
会話をするときは相手の方を見て、って言うからね!反省します。
失礼なことだが、目が合ったついでに顔をじっくり観察してみた。
うーん、こんなに面と向かって他人の顔を見たのは、何年ぶりだろう。
改めて見てみると、すごく綺麗な人だった。
そこら辺のイケメンを鼻で笑えるくらいだ。
金髪外国人のイケメンか……私とは住む次元が違うな。
「(ん?金髪外国人のイケメン…?)」
……どこかで聞いたようなフレーズ?
「南田さん。」
「は、はいっ!」
急に話しかけられたせいで、やたら気合の入った返事をしてしまった。
しかし、金髪外国人のイケメンなんて、私は覚えが…………あ。
「約束しましたよね。下のお名前、教えて下さい。」
そうだ、そうだ。いたよ。
そういえば。
……スーパーの、あの常連さん!