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違います、ちがうんです。  作者: 炭酸電池
5/6

こんにちは南田さん

かなり放置してしまって申し訳ありません。しかも内容もグダグダな感じに…後で直したいです。

にこにこ笑って、私に手を差し伸ばしてくれる金髪外国人の男性。

心なしか後光が射し込んでいる。

え、神様……?この人、神様なの……?


ふらー、と伸ばされた手を取ろうと私は腕を上げようとする。しかし、そこで我に返った。



「はっ?!!」



!?


私は今なにを!?あ、危ない…!

完全にアウェイな状況での心細さで、突如現れた怪しげな人間の誘いに乗ってしまうところだった!

まさか二十歳近くになって『知らない大人に付いて行かない』という母との約束を破りそうになるとは……。

私はどうかしていた。



「どうしたんですか?ほら、怖くないですよ。」



きらきらと輝く笑顔で私を見つめる金髪外国人。

何が目的なんだこいつ……!

何の企みも無く、見ず知らずのデブスに付き合って店に入ってくれるような、都合の良い人間なんているわけがない。

さ、詐欺師?つっ、つ、壺売り?……悪いお薬?



「あああ…、あ、の、だ、だ、だいじょぶですっ!!すみません!」


「え?髪切りたいんじゃ、」



金髪外国人が言い終えるより先に、私はダッシュで走った。

敵前逃亡もやむを得まい。

敵は美容室だけかと思っていたが、とんだ伏兵がいたのだ。

電車に乗って静かに帰ってしまおう。







見事に逃げ切った私は、帰りの電車に揺られて、一息つく。


流れるように過ぎる景色を眺めていると、ガラスに今にも泣き出しそうな醜い顔の女が写っていた。

ブサイクだ………。

こんな顔は他人に見せられないので、私は顔を隠すように深く俯いた。



「(……こんな電車に乗ってまで、ここに何しに来たんだろ…。)」



馬鹿みたい。いや、実際馬鹿だ。

あんなに張り切って予約しに来たのに、何もせずに逃げ帰るなんて、馬鹿としか言えない。


もう諦めた。私にはハードルが高すぎたんだ。

明日、いつも通り、おっちゃんの床屋で切ってもらおう……。



「お隣いいですか。」



伏せた頭の上から、男性の声が降ってきた。

条件反射でどうぞ、と返したが、言った後でん?と疑問を持った。

電車の席で、わざわざそんなこと聞く?

というか、他にもたくさん空いてるところあったと思うけど。

私は俯いていた顔が訝しげに歪むのを自覚しながら、声の主を見上げた。



「こんにちは、南田さん。」


「…………あ、こんに…ちは。」




見上げた先には、なんとあの金髪外国人がいた。


固まる私の横に、自然な動作で座る。

そのとき、ふわっといい匂いが。

私とは大違いだな、私なんてさっき走ったからさぞかし汗くさいだろうしな、とぼんやり考える。

これが俗に言う現実逃避なのだろうか。

今の現状をよく理解出来ない。



「あんなに走って疲れたでしょう。はい、これ。」


「あ、どうも……。ありがとうございます…。」



はい、と差し出されたのは、私が好きでよく買っている蜜柑ジュース。ああ、言われてみれば本当に喉渇いてる。

お金返さなくちゃ……………





………………


………………………






…………なんでコイツがここにいるんだ!?



「え、あの、あなたは…。」


「はい、南田さん。」


「(え!?な、なんで私の名前を知ってるの!?)」



私にこんな知り合いはいないし、この人に名乗った覚えはない。

さっき会ったばっかりなのに、なんで追いかけてきたり私の名前を知ってたりするんだろう?



「なんで……あの……わたしを…。」


「ああ。喫茶店で休憩してたら南田さんの姿が見えまして、お困りのようでしたので声を掛けたのですが、びっくりさせてしまったみたいですね。すみませんでした。」


「え…あ………いいえ。こちらこそ、ごめんなさい…。」



あれ……?

この人、いい人そう。



あ……もしかして、私が忘れてるだけで、ちゃんと面識のある人なのかも……?


というか、普通にそれしかないよね。

やだ……恥ずかしい勘違いをしていた。

詐欺師だとか壺売りだとか片栗粉だとか考えて、大変申し訳ない……。通報する前で良かった。




いやでも、誰だろう?


相手の顔を見ないように俯いている私は、見覚えのある顔か確かめようと、横に座る金髪外国人をちらりと覗き見した。



「やっと見てくれた。」



やはりと言うかなんと言うか、ばっちり目が合った。ひぃっ。

ずっと私のこと見てたんだ。

会話をするときは相手の方を見て、って言うからね!反省します。


失礼なことだが、目が合ったついでに顔をじっくり観察してみた。

うーん、こんなに面と向かって他人の顔を見たのは、何年ぶりだろう。

改めて見てみると、すごく綺麗な人だった。

そこら辺のイケメンを鼻で笑えるくらいだ。

金髪外国人のイケメンか……私とは住む次元が違うな。



「(ん?金髪外国人のイケメン…?)」



……どこかで聞いたようなフレーズ?



「南田さん。」


「は、はいっ!」



急に話しかけられたせいで、やたら気合の入った返事をしてしまった。


しかし、金髪外国人のイケメンなんて、私は覚えが…………あ。



「約束しましたよね。下のお名前、教えて下さい。」




そうだ、そうだ。いたよ。

そういえば。



……スーパーの、あの常連さん!







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