頑張れ南田
まだまだ続きそうです…。どうして前編後編からこんなことに…。ごめんなさい。
「うーん……。」
全身鏡の前で、私は苦い表情を浮かべる。
今日も鏡で自分の身体を見ているわけだが、いつもと違い体型を嘆くためでは無い。
まずは順を追って説明しようと思う。
普段あまり足を踏み入れない本屋へ行き、流行りのファッションを紹介している雑誌を買った。
そしてその雑誌を参考に、洋服屋へ行ってそれっぽい服を買った。
家に着いてちょっとドキドキしながら買った服を着た。
そして鏡でその姿を見た。
で、冒頭の唸り声に戻る。
そうつまり、私は第二の目標、オシャレに着手したのだ!!
うん。したのはいいんだけど……微妙だなあ。
朝の体重測定で数字が減ってて、ちょっと勇気が出たから服も買ってみたんだけど。
これでスタイルが良かったなら似合っていたんだろうが、残念ながら私は相変わらずドラム缶。似合うはずも無い。
しかもボサボサヘアーだし。
というか、体型よりもこの髪型がだいぶ服の邪魔をしている。
「美容室…………行こうかな?」
このボサボサヘアーだけでもなんとかしたら、だいぶマシになる気がする。
髪を染めるまではしなくても、ちゃんと整えてもらえば少なくとももっさり感は軽減される、と思う。
でも、中学生の時お母さんと一緒に行って以来、一度も美容室には行ってない。
ハッキリ言って、すごく怖い。
あんなオシャレな空間見るのも畏れ多いし…………入るなんて恥ずかしくて絶対無理だ……。
「でも、私………変わり、たい………。」
ダイエットして、オシャレすれば、自分に自信が持てて明るい性格になれる気がする。
このうじうじした自分から、もうさよならしたい。
「よし!」
恐怖を吹き飛ばすように、パンッと頬を強く叩いた。
怖気付いちゃダメだ!恥をかいても、馬鹿にされても、変わるためには必要な事なんだ!
ひとつひとつ、勇気を出して行動すれば、最後には変われた自分がいる。
「個別撃破!まずはこのボサボサをなんとかしよう!」
オシャレになって、あのナルシスト共の鼻をあかす!!
頑張れ、南田めめこ!!
と意気込んでたのはいいけど、実際に敵を前にするとやっぱり怖いよね。
現在、私は評判がいいと聞いた美容室へ予約するために、めったに来ない街へ来ていた。
今はその美容室の前にいるのだが、私が入るにはあまりに場違いな雰囲気に、足をガクガクさせて店前に立つのがやっとの状態だった。
こ、こ、こわい………。
も、もう帰ろうかな………………。
入るにも入れなくて、帰るにも帰れなくて、私はどうしようかとキョロキョロ辺りを見回しながら、動揺していた。
う、後ろの喫茶店に入っていったん落ち着こうかな。
あ、でもあそこもオシャレだ!!駄目だますます落ち着かない。
座ってる人もかっこいい人達ばかりだし…………え?
喫茶店のテラスで、一人だけ私の方を向いている人がいる。
「……………?」
私は試しに、左へ三歩歩いてみた。
相手の頭も同じ方へ動いた。
そして次は、右へ四歩歩いてみた。
相手の頭もそれを追ってきた。
………見ている、気のせいじゃない確実に私を見ている。
頭は派手な金髪だ。顔は外国人っぽくて彫りが深い。知人とかではない。
誰だこいつ……!
頬杖をついて私の事じろじろ見てやがって!
そんなに面白いか!?デブスが美容室に入ろうとしてるのがよぉ!
なんか泣きたくなってきた。
帰ろう………。
「入らないんですか?」
「!?」
なに!?
こっちをじろじろ見てた金髪外国人が話しかけてきた!
な……遠目から馬鹿にするだけでは飽き足らず、直接攻撃しにくるなんて……!
や、やばい。面と向かって馬鹿にされてしまうの私。
汗をかきながら金髪外国人の動向を見ていると、何故か財布を出してお札をテーブルに置き、そのまま此方に向かってきた。
え!?く、来るなっ!!
「一緒に行ってあげますから、入りましょう。」
「え……。」
やだ。すごくいい人……。