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違います、ちがうんです。  作者: 炭酸電池
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来てるよ南田ちゃん

ごめんなさい、まだ続きそうです…。

私の名前は、南田めめこ(19)。

今時染めていない黒髪で、近所の床屋で切ってもらっているボサボサヘアー。

身長と体重は控えさせて頂くが、ひとつかなりぽっちゃりとだけ言わせてもらう。

もう何年も使ってる黒縁眼鏡はボサボサヘアーと合わさるととんでもないオタク臭を放つ。

顔は肉のせいでたるんでいる。正直言ってぼんやりとした顔。


……見事だ。拍手を送ろう。

ここまでモテない女を極めるとは、私は自分が恐ろしい。そして悲しい。



久しぶりに見た全身鏡。

そこに映っていた私は、今まで見て見ぬ振りをしていた現実を思い出させるのに十分だった。

ふおおおおおぉぉぉ………!!


そして何ヶ月か振りに体重を測る。


……………。


ふおおおおおぉぉぉ………!!



私は悶えた。

殺虫剤を噴射された虫ケラと見まごう程に苦しみ悶えた。

こんなにも辛い現実を目の当たりにしてしまうとは……。

スーパーのバイトをするようになってから、接客と他のバイトさんとの人間関係がストレスで、逃げるようにお菓子を食べて発散していた。

それがこの結果……。

自業自得、私の甘えが導いた当然の体型だ…。


………………。

……………………。



「ううっ。ぐすっ。」



………痩せよう。


これから、一生懸命痩せよう!

現実を知ったなら、現実に戻ればいいんだよ。

よし、これから頑張ろう!

私は決意の気持ちを強めると、それを表すように拳を握るのであった。



すると全身鏡が目に入る。

刹那、現れるデブス。




ふおおおおおぉぉぉ………!!









「南田ちゃん!今日もあのお客さん来てるよー!」



バイト中、おしゃべり好きで試食担当のおばちゃんに話しかけられた。

おどおどした私を気遣って、いつも明るく話しかけてくれる優しいおばちゃんだ。



「あのお客さん?って誰ですか?」


「ほら、すごいイケメンな金髪の外人さん!今洗剤のとこにいるから、見てきなよ!」



ああ、いつも大量にお買い上げしてくれる外国人の方か。昨日も来てた気がするけど、そんなにこのスーパーが好きなのかな。

おかげでミーハーなおばちゃん達は大盛り上がりだ。見てて微笑ましい。



「わ、わたしは大丈夫……です。」



全然興味無いし、納品が残ってるし……。

基本このスーパーは時間までに仕事を終わらせるなら何をやってても自由なのだが、さすがにお客様の追っかけはマズイ。



「そーお?まあ南田ちゃんはそういうことしないか!や、大変なんだよ!昨日なんてその外人さんが並んだレジの子さ、商品打ちながら外人さんの顔見つめてて!」


「あ、あははは……!そんなに、か、かっこいいんですね。」


「うんうん!だらか南田ちゃん見てくればいいのに〜!」


「あははは、ははは……。」



ああああ!会話の緊張と慣れない笑顔のせいで、苦笑いしたようになっちゃった!

明るく笑ったつもりだったのに!

しかし、おばちゃんは私のぎこちない笑顔に気を悪くした様子も無く、にこにことした顔で持ち場に戻っていった。

いい人だな…………。



「あの、今よろしいでしょうか?」



おばちゃんの去って行った方角を眺めていたら、後ろから声をかけられた。

「はい!」と反射的に返事をして振り返ると、金髪の外国人男性がいた。

商品の場所が分からないのかな?



「はい!なんでしょう。」


「えっと、この商品を一ケース購入したいのですが、在庫はありますか?」


「確認して参りますので少々お待ちください。」


「ありがとうございます。お願い致します。」



すごく丁寧な人だ。

店員の私に満面の笑みで接してくれるなんて、いい人だな。

これじゃどっちが店員なんだか分からない。



「こちらの商品在庫あります。重いので、よろしければレジまでお運び致します。」


「まだ買うものが……。」


「あ、レジに運んでおいて、後で他の商品とお会計でも大丈夫ですよ!」


「ご親切に、ありがとうございます。」



…………あれ?



あ、この人。



さっきおばちゃんが話してた、かっこいい外国人のお客さんだ!

こ、この人がウワサの外国人イケメン……!!

確かにかっこいい。

いつも後ろ姿しか見たこと無いから、全然気付かなかった。



「じゃあレジの者に伝えておきますので、お会計はいつでもどうぞ。」


「はい。すみません。」



こうして台車に乗せた重い商品をレジまで運び、外国人のお客さんの対応は終わった。

………かのように思えたが。



『業務連絡致します。業務連絡致します。総合レジ5番。総合レジ5番、お願いします。』



レジが混んでる時に流れる店内放送が聞こえ、急いでレジに向かう私。

店員がいないレジに入り、隣に並んでるお客様を呼ぶと……



「お次にお待ちのお客様ー!此方のレジへどうぞー!」


「あ、はい。」



返事をしたのは、さっきの金髪外国人男性だった。


それに気付いた瞬間、脳裏によぎる嫌な予感。



「(あれ……このパターン……。)」



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