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最悪な実験、隠蔽の演出

「今日はどうしようか」

「どうしましょう」

そう奈央が言った時だった。

そう言いかけた時、地面が踊るように、揺れ始めた。

俺達は危機感を覚え、慌てて、外を出た。

それは、予測されていた事だった。 忘れていただけだった。

先輩から言われていた大震災だった。

地面が唸りを上げる。 まるで、赤子の夜泣きのように。

「一旦、非難しましょう」

「ああ そうだな」

小屋から少し移動した花や緑が生い茂る場所で俺達はあらかじめ用意していた、時計型携帯機の機能、重力制御機能を使う。

この機能は簡単に言うと、まず、腕に着けている物に透明な膜を張る。

その透明な膜とは、重力に逆らうことが出来る。唯一の素材。

その透明な膜は張った直後に、その場の状況に合わせて、地面より遠ざかる性質がある。

今回は、地面から二メートルの所でその膜は止まったようだ。

「本当、便利ですね。 この機械」

「ああ、便利だろ」

まぁお前が着けてる物は室井のなんだがな・・・


-ピピピピッ

「はい? 先輩ですか」

「そうよ、大丈夫?」

「はい なんとか」

「この震災では百万くらいの人が儀礼になったわ。 本当、嫌な事ね」

「そうですね」

「あっ ちょっと上司に呼ばれたわ。 また、今度ね」

-ピーピーピー

「優一さん、あの人からですか?」

「ああ そうだったよ」

「本当、嫌な自然現象だな。 何で、助けることも出来ないのだろうか」

何もできない俺への失望感が漂っていた。


「岸谷君 あのルーキーは大丈夫なのかね?」

パソコンが何台も四方八方に散らばっている八畳くらいの部屋で突然、話しかけられた。

「あっ隊長 今、連絡取ったのですが、全然大丈夫そうです」

「そうか、過去に行って結構経つな」

「そうですね」

「これより、最終実験に移る」

「本当にするんですか?」

「俺はやると決めたらやるのだ。 何か不満かね」

「優一君の命の保証が出来ないからです」

「そんなもの構うな。 あのルーキーの命で救える物もあるのだ。 大したことではない。」

「そんな・・・」

「岸谷君、あんたのお母さんは君のためなら命を落とすと言いそうだな。」

「それはどういうことですか?」

「そのままだよ」

「でも、限界なんです。 優一君も気づき始めてる。 あれは人間なんじゃないかって」

「それも計算の内だ。 問題はない」

「りょ、了解しました。」

優一君、どうか無事でいて・・・


時を同じくして、優一の時代では地震も収まりつつあった。

「もう大丈夫だろう。 降りるぞ、奈央」

「わ、分かりました」

-ピッ

「重力制御機能 オフニナリマシタ。 次第ニ下降シマス。 お気ヲ付ケクダサイ」

「しゃ、しゃべったあああ」

「落ち着け、奈央。 そういう風に作られてるだけだ」

「わ、わかってますけど、こ、怖いじゃないですかーー」

「まぁ最初に聞いたときは怖いのは分かるが」

その内、透明な膜は上からはじけ始める。

そして、下降する。

「はぁ、凄い体験でしたよー。 機械は突然喋るし。 宙を浮くし」

「そりゃ、良かったな。」

「はっ」

突然、奈央の顔が青ざめた。

それもそうだ。 瓦礫に押しつぶされている人の助けを求める声。 上半身の切り離された男、女。

奈央には耐えがたい光景であることには変わりはなかった。

奈央は口を押さえたまま、森に入り込む。


「まぁ無理はないけど、これくらいどうにかしてもらわないとなぁ」

しばらくすると、奈央は戻ってきた。

「すいません。 以後、気を付けます」

「気を付けろよ。 これから、こういうのが続くんだ」

「はい・・・ えっ? ゆ、優一さん あれ、あれ!」

「ん? どうかしたか?」

奈央が指をさしたのは、瓦礫に挟まれ、息絶えた男。

-ピキッピキッピキッ

その音は確かに目の前の男から聞こえた。

まるで、たまごを割る音のようだった。

そして、その音の正体をすぐ分かることになる。


その男の背中が明らかに盛り上がった。

俺は目を凝らした。 でも、明らかに元の原型を留めていない。

-パンッ

肉がはじけ飛ぶ音と共に大柄な何かが飛び出した。 そう化け物だ。

「やばい。 逃げるぞ」

「は、はい」

その化け物はまだ俺らに気づいてない。 今の内だ。

アイコンタクトで奈央に指示を送る。

それから、森へ避難した。

どうやら、化け物の大量発生が始めってしまったみたいだ。

あの時と同じだ。 あの時と・・・


「始まったか」

「はい、問題なく始まったみたいです。」

「岸谷君、カメラの量を増やそう。 バレないように頼むよ。 いいね」

「はい」

まだ、大丈夫みたいね。 優一君。

今、まさに持ち場から離れようとする隊長に声をかけた。

「あっ隊長 一つだけ聞いてもいいですか。 ずっと気になってることが・・・」

「いいぞ、言ってみろ」

「前の実験で大量発生させた時は蒸発しましたが、あれは結局なんだったんですか?」

「ああ あれか あれはわしの整備不良だ。 今回は蒸発などしないだろう。 その実験でもある」

「そう、ですか」

「前の実験では薬の量が少なすぎたのだ。 でも、今回は違う。 かならず、成功するぞ」

「薬?」

「ああ、筋肉増強剤を使って改良した、DSM(ドーパミン結合体ステロイドマルキン)の量が少なすぎて、効力が薄かった。 それじゃ、俺は自分の部屋でじっくり見るとしよう」

「お気をつけて」

-スタッスタッスタッ・・・


あの思考、絶対、危ない。 どうにかしないと。 でも、私じゃ何もできない。

どうすれば・・・

私も監視されてるから、いらない事は到底出来ないし・・・

優一君を信じるしか・・・

しかも、過去で起きたことが現実世界に支障がでるなんて真っ赤なウソ。

それを理由に優一君を過去に送り込んだで実験をさせてるに過ぎない。

どうにか、打開策を考えないと。


目の前に映る優一たちの映像。 何分割にも分けられたその映像が不安感をかもしだす。

どうにか、死なないで。

そう、祈るしかなかった。

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