都市部崩壊
次の朝
先輩から通信が入った。
今度は寝起きでもなんでもない。
「優一君、聞こえる?」
「聞こえてますよ」
「良かった。 ちょっと、冷静に聞いてほしいんだけど、あの化物のおかげで都市が一つ崩壊したわ」
「え? そんな、まさか・・・」
「本当よ。 ちょっと、外に出て見なさい」
俺はその言葉を信じられななったので外に出ることにした。
そして俺は地獄のような光景を見ることになる。
草木は炎に焼かれた後みたいに干しあがり、辺りには人間の肉片、何故か建物には影響はないが、その被害は絶大な物だった。
「この景色を見て分かった? 今、置かれている状況を」
「これはやばいな・・・」
「やばいって所じゃないわよ。 これじゃ、地球が危ないわ」
「他の化物はどうしたんですか?」
「これも信じられないかもしれないけど、人間を捕食したら溶けだしたわ」
「え? 溶けた?」
「こっちも分からないことだらけよ。 後で応援をそっちに向かわせるわ。もう少し待ってて」
「応援何てあてにならない、今、化物に対抗出来るのは俺くらい...
そう言ったのはあんたじゃなかったか?」
「そうね。 私も混乱してたわ。 こっちはこっちで状況を解決するために色々探ってみるわ。 そっちは・・・頼めるわね?」
「当たり前だろ。 任せろ」
「頼んだわよ」
その言葉を最後に通信を切る。
俺は今、半信半疑だ。どうすればいいのか分からない。とりあえず、家を出るか。
-ガチャ
外の風景は前とは変わってしまったが、目の前には大きな道路、逆T字路になっている右側の道にはバッティングセンター、左には医院。
こうなった今でも覚えてるもんだな。
そこで、ある事に気が付く
「そういえば、室井の遺体は? どうした?」
考えても仕方ないか・・・
もう思い出したくもない。
でも、何故、先輩は室井の事を聞いてこないのか・・・
それだけが不思議に思っていた。
まずは見回りか。
あたりを歩くと今の状況が色々見えてくる。
少し離れた公園では花が・・・
「そりゃ、ないか・・・」
あのキレイな花畑も今では荒地になっていた。
こんな世界、見たかったわけじゃない。
何でこんな世界を見せつけられないといけないんだ・・・
絶対に許さない・・・
何もかも破壊してやる・・・
そう胸に誓う優一だった。
「いや、それより、未来では発見出来ていない生存者がいるかもしれない。いや、居る。 絶対居る」
その絶望的な状況を前に優一は光を探す。 その一面に広がる燃え上がった木、崩れ落ちた赤レンガの家を目の前に五時間、いや、六時間必死に探し続けた。
見つかるとも知らずに。
夜の十二時を回った頃だろうか、優一は疲れ果てて家に戻り、就寝する。
その朝早くに通信が入る。
また、こんな早くに通信って・・・ もうこりゃ、完璧にいじめのような気が。
「あ、はいはい。 なんでしょう。 は~は~は~」
「そんなあくびなんかして。 本当、良く寝るねぇ」
「先輩こそ、通信入れるの早すぎるでしょう」
「君は今、唯一化物に対抗出来る戦士なんだから。 自覚を持ちない、自覚を」
「へいへい」
「へいへいって・・・ あんたねぇ・・・ それより、今日のミッションよ。 今日は上から調べて欲しい事があるって言われてね。 その地域はもう人は居ないから、また違う地域に行って、引き続き、化物の正体を探る事。 いいわね」
「あの、先輩。 俺、もう無理な気がします。 何かこう気持ちが安定しないっていうか。 こう、無理ですよ」
「あれ~? すべて破壊するんじゃなかったの?」
先輩はからかうように言った。
「え、何でそれを?」
「忘れたの? その通信機の音声は全部こっちに流れてるって。 言ってなかったっけ?」
「聞いてねぇよ。 もう何かめっちゃ恥ずかしいじゃんかぁ」
「はっはっはっは」
先輩は高笑いした。
「いや、俺にとっては、笑いごとじゃないんだが・・・」
「まぁ、そういう事だから、頼むよ。 ふう、お腹痛い、痛い。 それじゃ、ねぇ」
そこで通信は切れた。
「はぁ・・・」
大きくため息をつく。
そういや、一つため息をするたびに幸せがどんどん逃げていくって言う噂があったっけ。
一体、どれだけの幸せが俺から逃げていくのやら。
それにしても、人間が居なくなると、途端に化物が居なくなるなぁ
どういうことだぁ・・・
そういうのも関係があるのか・・・
そんな、疑問が抱きつつあった。
俺は着替えが終わった後、グライドで早々にあの地域から離れ、別の地域に入る所だった。
焼け野原になった所とそうでない所では全然違うかのように、生き物の数がそれを教える。
俺はその丁度、境界線で降りる。
その光景は正に天国と地獄。表と裏。白と黒。
被害が及んでない地域では森があたり一面を生い茂り、地面には雑草やひまわりやチューリップ、色々な花が咲いている。
その花道を抜けると、住宅街が軒を列ねる、通りに出た。
俺は安心感とともに守れなかった罪悪感に苛まれる。
すると、遠くの方から声が聞こえた。