研修生
-ピピピピピピピピ
フォードステーションに通信が入る。
「あっ先輩か 今、帰る所だったのに・・・」
「あ、あ、聞こえる?」
「聞こえますよ。先輩」
「化物の皮膚、今、届いたわよ。ご苦労様」
「いえいえ」
「あっそうそう 後、明日ぐらいに研修生が来るから。 指導、よろしく」
「はっ? 聞いてないよ、そんなこと」
「言うと思った。 でも、これは決定事項だから。何回も言うけど、よろしくね」
「あっ きられた」
これはめんどくさい事になったな。
先輩は本当、性格悪いなぁ。
先輩は俺が人見知りという事を知っておきながら、言ったのである。
いや、そうに違いない。
とりあえず、今日は帰るか。
-次の朝
家の玄関を開けると、そこに研修生であろう人物が居た。
「君がそうか?」
その少年は10代後半くらいの顔つきだった。
「あ、はい。 未来BTR研究所研修生の室井です」
室井という少年はやや緊張気味で自己紹介をする。
「そのBTR研究所ってのは必要ないと思うぞ」
俺は冷静にツッコミを入れる。
「え、そうなんですか?」
「ああ」
「そういえば、未来の方でBTRの略を聞いても教えてくれなかったんですが実際どういう略なんですか?」
室井は不思議そうに質問した。
「諸説あるけど、化物倒したるとか何とか言ってたな・・・」
本部が雷堺という所にあるので、そういう名称が着いたのであろう。
雷堺というのは昔は日本橋と言われていた所だ。
「ええ、ただそれくらいの名前だったなんて」
室井は初めて聞いた事実に、驚きを隠せずにいた。
「だから、言ったろ。言う必要ないって」
「そうみたいですね」
どこか呆れた表情をしていた。
「で、君はどこまで知ってる?」
「過去に化物が居るってぐらいしか・・・」
いくら、人が少ないからって、何も知らない奴を送り込むなんて、先輩は何を考えているんだ。
「という事は、俺が説明しないといけないのか・・・」
「お、お願いします」
人付き合いの苦手な優一に研修生を送ってくる先輩に腹立たしさを覚えつつ、優一は必要最低限の情報を教えるのだった。
「ふう、まぁいいか。よし、それじゃ説明する。まず、過去に化物が出始めたのはいつかというだけど、それは聞いた話だと、2001年前後だと言われてるらしい。それでここからが重要なんだが、何故、未来に居ながら過去の事を分かるか知ってるか?」
「いえ、分かりません」
「少し、難しいかもしれないが、タイムマシンを開発して以来、過去の出来事を監視出来るようになった。簡単に言えば過去にカメラを数台送り込んだ、そういう事だな。でも、いきなりおかしな事が起きた」
「それが化物の出現・・・」
「そういうことだ」
「でも、おかしいですよね?過去の出来事なら分かってるはずだし・・・ あんまり首を突っ込まない方がいいんじゃ?」
「俺も最初、そう聞いたときはそう思った。けど、このまま放っておけば、確実に人類は滅亡に一直線なんだと。信じられないかもしれないが、未来でも連動して、祖先が殺されれば今居る祖先の子供も消滅している」
「そんなことが起こってるんですか」
「ああ、まったく、物騒だ。しかも、技術が発達した俺らの時代でも化物の正体が掴めてないんだ」
「なるほど」
「まぁ化物の説明はここまででいいだろう。後は化物に対抗する武器の説明だな。まず、この腕時計を見てくれ」
「普通の腕時計ですよね」
「いや、普通の腕時計何かじゃない。この腕時計は未来とビデオ通信も出来るし、未来に小さなものであればその場で転送することができる。便利な代物だ」
「へぇ 凄い。そういや、ここに来るとき、腕時計貰ってました。あっこれこれ」
「貰ってたか。それじゃ、これからはそれをずっと着けていろ。防水だから、いつでも着けれるぞ」
「了解です」
「後は銃とグライドと色々あるが、今日はこの二つの説明でいいだろう。銃の訓練はしてきたか?」
「はい。後、グライドも訓練しました」
「グライドは乗れるようになったのか?」
「まぁまぁですかね」
「まぁ最初はしょうがねぇな。まぁ大まかにグライドの説明すると、サーフィンのボード状の物だな。 それを使って、空を飛べる訳だが、何故、飛べるか知ってるか?」
「いえ、知りません」
「未来では重力を制御出来る装置が開発されていて、その技術を使って重力に逆らった行動が出来るって事だ」
「何か難しい話ですね」
タイムマシンが開発されたことなんて、一部の人間しか知らない。
それほど、知られてない事だ。
「まぁ今は理解しなくていい」
と、説明を終えた時、通信が入る。
「もしもし、私よ。例の化け物が現れたわよ」
「タイミングいいなぁ」
「どういうこと?」
「いや、こっちの話だ。それより、場所は?」
「室町公園の方ね。北に一キロの位置よ」
「了解した。 おい、室井行くぞ」
「あっはい」
「最初は見てるだけでいい」
「分かりました」
一キロか。走って行ける距離だな。
「室井走れるか?」
「はい、大丈夫です」
「よし、走って行くぞ」
「はい!」