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騙す戦い

 優一はフォードステーションが鳴っている事に気付いてはいたが、通話に出れるどころではなかった。

だが、次の瞬間、突然、ホログラムが現れた。 先輩だった。

「先輩・・・ あんたも俺を騙してたのか?」

先輩と呼ばれる女性、岸谷は少し、間を置いて喋りだす。

「気付いちゃったのね・・・ そうよ、ごめんなさい。 言い訳もする価値がないわ。 私は最低ね。 もうちょっと、早く伝えておけば・・・ 私は弱みを握られてるの。 だから、隊長の指示に従わざる負えなかった」

目いっぱいに涙を流す岸谷を見た優一は、本心なんだと信じた。 いや、信じたかった

「先輩・・・ あんたが言うなら本当だろうな」

「それじゃ、全部知ってるのね。 もう実験は終わったわ。 優一君、帰ってきていいのよ。 っていっても、こっちには帰らないわよね。 こんな所」

「そんな事、言っても平気なのか? 弱みを握られてるんだろ?」

「今は大丈夫よ。 少しの間妨害電波を出したわ。 でも、すぐばれるわ。 あっ最後に一つだけ。 絶対に戻ってきてね。 お願いよ」

そこで、通話は切れた。

「戻ってきてねか・・・ 奈央を置いてか・・・」

優一は再び、パソコンに凭れ掛かった。

「でも、しばらくは駄目だ。 化け物・・・いや、人間がまだ居るんだから。 絶対、ほっとけない」

優一は考えても仕方がないと決めつけ、奈央の居る所へ戻るのであった。


 「優一君・・・ 絶対戻ってきてよ・・・ はぁ・・・」

大きなため息をつく岸谷。 その岸谷に後ろから声をかける物が居た。

「やっぱり、ばれたか」

岸谷は驚きのあまり、怖い形相で後ろを向いた。

「なんだ、そんな怖い顔して」

「隊長、聞いておられたのですね・・・」

隊長だった。 どうやら、妨害電波など意味はなかったようだ。

「まぁな、私もひどい事をしたと思ってる。 君にどうこう言うつもりはない。 それにいつかはばれると思っていた」

「これから、どうするんですか?」

「実験は終わった。 あいつらもすぐ処分するさ」

「処分? どうやって?」

「あらかじめ、実験がもう必要ないと判断された時のためにあいつらの体内に小型爆弾を仕掛けている。 すぐ、処分できるさ。 そういえば、あのルーキー、いや、優一君だったかな。 あの子に持たせた化け物を爆発させる銃はそもそもあの銃には何も効果がないんだ」

「え どういうことですか? あの時は隊長がそういう銃だからって・・・」

「あの銃には爆発するような弾丸はセットしていない。 あの弾丸には小さいチップがあってな、そのチップと化け物の体内にある小型爆弾とが干渉し爆発するよう設定してある」

「なるほど・・・ おかしいとは思ってました。 そんな、弾丸ありえないと」

「それじゃ、すぐに処分するよう、係りの者に言っておこう」

そう言うと隊長は笑いながら自分の専用ルームへと戻っていった。

「いらなくなったらすぐ処分・・・ 人権も何もないじゃない」

岸谷の不信感は募る一方だった。

「岸谷さん、岸谷さん」

「あっごめんごめん。 ちょっと考え事してたわ」

話しかけてきたのはアシロ監視係の森村(もりむら)だった。

森村は黄色い服に赤い日本の模様が入っていて、髪は三つ編みで眼鏡をかけている。

それに森村はアシロに化け物を送り込んだ時からアシロのカメラにハックして状況を逐一確認する役目がある。 口癖ははっきりいうと、だ。 

たまに報告があるが、今回はどうも重要な話題のようだ。

「何か今回は重要そうね」

岸谷がそういうと、森村は不思議そうな顔をした。

「えっ何でわかったんですか?」

「いつもと違うからよ、女の勘ね」

「なるほど、私も勘ほしいなぁ あっ本題を忘れるところでした。 はっきり言うとですね、アシロの方は新しい病原体を疑っているようです」

「病原体ねぇ でも、日本の仕業だってばれたら、本当に大変な事になるわね」

「はっきり言うとそういうことになりますね」

彼女は眼鏡を上にあげてまた戻す仕草をしてから、言った。

「でも、アシロはそういう事に関して、疎いって聞くから大丈夫だろうけど・・・ あっアシロの民間人はどうなったの?」

「はっきり言うと、化け物の性で死んだ民間人は一万人に及ぶと推測します」

「まったく、関係ない人達が・・・ 貴方はこういう事良いと思ってるの?」

「はっきり言うと、良いとは思ってません。 でも、どうしようもないですよ」

森村も岸谷と同じ考えだ。 だが、彼女も弱みを握られているのだろう。

「まぁ二人だけじゃどうにもならないわよね」

「はっきり言うと報告はこれだけです。 お疲れ様でした」

そう言うと、森村は席を立ち自分の持ち場に戻って行った。

帰り際の彼女の顔はどこか悲しい表情をしていたように見えた。

岸谷は森村が帰ったのを確認し、これからの行動を慎重に考えた。

「優一君にはこの事を報告するべきだろうか。 まさか、日本がアシロ相手にこんな事してるなんて、想像できないだろうけどね。 はぁ、いったいどうすれば」


「あっ優一さん、大丈夫ですか? 化け物じゃなかったんですか?」

階段を上がると、奈央は心配そうに早足で優一の前まで現れた。

「ああ、だ、大丈夫だったよ。 グラスが割れてるだけでね。 ははは」

優一は必死に動揺を隠そうとしたが、隠しきれてはいなかった。

奈央は不審に思ったかもしれない。 でも、それは優一には分からない。

「あっそういえば、外の化け物が溶けてるんですよ。 早く、こっちへ」

「あ、ああ」

奈央は手首を上下に振り、口には出さなかったが早く、早くと言ってるようにも見えた。

奈央に連れられて進み、窓に目をやった。

それは奈央が言ったことと一致した。 見る見る内に強化人間は溶けていった。

「ふう、良かった~」

優一は大きく息を吐き、言った。 決して、溶けたことに言っている訳ではない。

奈央の安全が確保された事に対しての言葉。 心からの言葉。

「よし、下降りるか。 完全に溶けるのか確認しに行くぞ」

「はい」


「居ないな」

「そうですね」

下に降りた優一と奈央。 朝までは軽く二十もいた強化人間は今では居なくなっていた。

優一は何も言わず、歩き始めたが、奈央もそれに付いてくるような形で足を動かす。

優一の目の前には、木が二十本ほどある。

木と木の間を確認しながら歩く。 警戒も怠らずに。

木が生い茂る場所を抜けて、見晴らしのいい所に出た。

その時は丁度、溶けきる直前だった。

-シュ、シュシュワ~~

「やっぱり、溶けてる・・・ これで、もう安全そうですね。 優一さん?」

「進むぞ」

優一は少し溶けた地面を物おじせず歩く。 それに合わせて奈央も歩いて行く。

少し歩いてから優一は奈央を振り返り声を掛けた。

「小屋に戻るか。 ここら一帯は安全そうだ」

「はい」

それを聞くと奈央は少し笑みをこぼし付いて来る。


「今、日本に着きました。 これより、作戦を開始します」

画面には日本語を話す女性が居た。

「健闘を祈る」

立ち込める暗雲、優一達はまだ知らない。

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