表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

今、自分が進むべき道

 ここはアシロ上空、高度二千メートル。

日本製の飛ぶ重機。 空走型重力制御重機(フィローアクター)がそこにはあった。

「なかの者と連絡を取れ」

隊長の大きい声が聞こえた。

「はい」

岸谷は言われたとおりに連絡を取る。

画面の設定から交流を押し、ホログラム通話を押す。ただそれだけである。

押すと、暗い画面が明るくなり、フィローアクターに乗っていた妻夫木(つまぶき)の顔が立体的に映された。

それを確認した隊長は画面に近づいた。

「私だ。 何か問題は?」

「問題はありません。 今はアシロ上空です」

妻夫木は笑いながら答えた。

今回の作戦はDSMにより、爆発的に筋肉が成長した人間を一体、アシロに送り込み混乱させるという作戦だった。

岸谷はこの作戦には否定的であった。

それでも、弱みを握られているため、実行しないわけにはいかなかった。

岸谷の周りの人物も弱みを握られていたり、元々隊長の意志に似通った者が多いようで、何とか止めないかと説得しようとしたが、誰も耳を貸してくれなかった。

すると、隊長が妻夫木に指示を送った。

「妻夫木、手順は覚えているな。 安全を確認次第、開閉扉を開けて、アシロ上空で奴の拘束具を放ち、アシロ上空に投下しろ。 作戦は以上だ。 幸運を祈る」

奴とは肉体改造された人間の事。 薬の量を調整して、まだ理性は保っているようだ。

だが、アシロに着いた頃にはもう理性はないだろう。

「隊長、準備完了しました。 それではこれより、拘束具を離しアシロに投下します。 三、二、一、投下!」

妻夫木のモニターには一部始終が映し出されていた。

妻夫木が投下と掛け声を上げた時だった。 妻夫木が投下しようとしたその時だった。

化け物の目が光り、妻夫木に敵意を示しているように見えた。

妻夫木はその眼光に怯え、後ろにたじろいだ。 そのわずかなスキを化け物は見逃さなかった。

化け物は身体を起こし、獰猛な猛獣のように妻夫木に切りかかった。

「うあああああああああああ」

化け物の頭と妻夫木の声だけがモニターに響いた。

その後、化け物は機体の傾きと風でアシロに飛ばされるのだった。

モニターには食い荒らされた妻夫木の遺体があるだけだった。

岸谷は耐え切れなくなり、モニターを切った。

「隊長・・・」

岸谷は怖々と口を開いた。

「妻夫木の死でアシロに送り込むことが出来た。 妻夫木の死を無駄には出来ない。 皆、分かったな」

そこに居た隊長以外の者は力強く「はい!!!」と答えた。

隊長はそれを聞くと、自分の部屋へ戻って行った。

しかし、隊長は動揺していた。 めったに感情を表に出さない隊長を岸谷は不思議そうに見つめていた。

隊長と妻夫木とは仲が良かったらしい。 隊長には情があった事を知り岸谷は少し安堵した。

それでも、人ひとり死んだのだと思うとふと我に返り、罪の意識に苛まれる。

隊長はどんな気持ちなのだろうか、岸谷はそればかりを気にしていた。

「岸谷さん、早く戻さないと」

若いスタッフが言った。

「ああ、そうか。 あれ、戻さないとね」

岸谷はフィローアクターを自動操作にした。 日本に帰る様にプログラムした機能だ。

これを戻さないと、日本の仕業だと、暴かれかねないからだ。

作戦は一先ず成功した。 一人の尊い命を犠牲にして・・・

「今、日本に帰還するように信号を出したわ。 もうすぐ戻るはずよ」

岸谷は後ろに居たスタッフに笑顔で言った。

だが、岸谷は本当にこれで良かったのだろうかと思ってもいた。

「それじゃ、私はアシロがどのような状況になるかアシロのカメラをハッキングしてきます」

と、岸谷の後ろに居たスタッフが言った。 今居る職員の中で一番、機械の扱いに優れているスタッフだ。 カメラをハッキングするなど、朝飯前なのだ。


「奈央は絶対、守る。 絶対に。 命に代えても・・・」

そればかりを考えていた性かいつの間にか朝になっていた。

外が明るくなったことに気づいた優一はソファーから立ち上がり、太陽を肌で感じた。

ながらく、死の狭間で戦ってきた優一は太陽を肌で浴びる事で生きている実感が湧いた。

「太陽ってこんなに明るくて、痛くて、眩しくて暖かい物だったんだな。 忘れてた」

その時、後ろにあるキッチンの横の寝室が開く音がした。

「先輩、まだ起きてたんですか。 大丈夫なんですか? 寝なくて」

後ろを振り向くと、寝起きの奈央が居た。 目が痒いのか猫のように拳を丸めて、目を掻く奈央。

おもわず、可愛いと言ってしまいそうな気がしたが、優一はそれを必死で喉の辺りで止めた。

「俺は大丈夫。 三日三晩寝ないでいいように訓練されてるからな」

「そうなんですか。 ふぁふぁ」

奈央は大きなあくびをした。

「ここは安全みたいだ。 化け物も近づこうとしない。 でも、変なんだ」

「変?というと?」

すぐに奈央が聞き返した。 優一は少し間をおいて話した。

「化け物はすぐ溶けるはずなんだ。 でも、溶けない。 もしかすると、化け物は進化しているのかもしれない」

寝巻の奈央は今、思い出したかのような表情をした。

「そういえば、村長もそう言ってましたね。 何が変えたんでしょう?」

「それは俺にも分からない。 今後も調査が必要かもしれないな」

-ガシャガタ バーン

「何だ?」

何かが壊れる音がした。

「優一さん、何かが入ってきたんじゃ?」

「分からない。 そこで、待ってろ。 絶対、動くんじゃないぞ」

優一はまさかと思ったが、音がした方まで歩くことにした。

音がしたのは一階の方だ。 優一はキッチンから五百メートル離れている階段に向かっていた。

階段に着いた優一は銃を手に取った。 銃を構えながら階段を一段、一段降りて行く。

無駄に広い階段が死のカウントダウンのように優一の心臓をバクバク踊らせる。

一階を見渡せるところまで降りたが、階段下には何もいないようだ。

どうやら、最初にここに来た時に強烈な存在感を放っていた、右奥の扉だ。

絶対そこだ。 優一は周りの警戒もしつつ、右奥の扉にゆっくりと近づいていく。

-ガチャッ

ゆっくりと扉を開く。 扉を開くと、青い光が目に入った。

優一は目を覆いながら銃を向けて、進んで行く。

その部屋は意外に広い。 一階の大広間と同じくらいに広かった。

その謎の青い光にやっと慣れ、部屋の全体を見回す優一。

でも、そこにはこの時代では想像もできない産物があった。

部屋の隅全体に青いカプセルがずらりと並んでいる。

その青いカプセルの中には人間らしき生命体が入っている。 それははっきり分かった。

そして、奥にはあるパソコンが並んでいた。 それは優一も良く目にするものだった。

そのパソコンはマークファン三六七、優一が生まれた年に出来たパソコンだ。 そのパソコンはその時代では画期的で、操作がしやすい利便性の面で凄く評価を受けたパソコンだった。

だが、一つ、欠点があった。それは大きい事だ。 容量を百テラ保存できるが、その性で大きさが昔のパソコンと変わらないくらいの大きさだった事。 それだけが欠点だった。

だから、この時代にある訳がないのだ。

「冗談だろ、秘密基地かよ、ここは・・・」

音の正体はその青いカプセルが割れた音だった。

その青いカプセルの中には何もいなかった。

「この青いカプセルの中に居るのはなんだ・・・ 人間か?」

優一は青いカプセルの中の存在に恐怖を抱きながらパソコンに近づいていく。

「このパソコン・・・ やっぱり、あのパソコンだ。 俺の時代の奴がここで、何をしてたんだ。 しょうがねぇ、何やってたのか調べてやる」

そう言うと、優一はパソコンを徐に触りだした。 優一は子供の頃、そのパソコンにばかり触っていた。

調べればいい所は分かっていた。 システム・・・設定・・・履歴・・・どんどん中に入っていく。

その中に一つ、ロックがかかっているファイルを見つけた。

優一は何回も何回も試した。 でも、なかなかパスワードに引っかからなかった。

丁度、三十回くらい試したころ、ある事を思い出した。

腕時計型携帯器、フォードステーションだ。

実はこのフォードステーション、マークファンを改良されて極限まで小さくした物だった。

言わばこのフォードステーションの元となった物なのだ。

優一はフォードステーションとマークファンとを同期させた。

すると何も操作しなくても、パソコンの画面がみるみる内にセキュリティーを破っていく。

出されたパスワードもすぐ当てはめ、ウイルスもブロックし、ついにファイルのパスワードをつとめた。

そのパスワードは強化人間の製造方法 ミクロファーザー。

「強化人間!? とりあえず、ファイルを見てみるか」

ファイルを開けた優一、そこには全て載っていた。 日本が行っている実験の事、軍事兵器製造に当たり、死んでいった物、その数、一千万人。

全てを知った優一は嘆き悲しんだ。 自分が騙されていた事、自分が殺してきたのは人間だった事、実験に利用されてきた事。 その全てが優一を襲った。

だが、その中に一つの光を思い出した。 ・・・奈央だ。

あいつを守るって決めたんだ。 その言葉だけが彼に正気を取り戻させてくれた。

十分は放心状態だった優一は奈央の事を思い出し、再び起き上がる。

「でも、これから、どうすればいい・・・ 俺は何と戦えばいい・・・ 何と・・・」

迷い・・・ 優一が一番抱いている物。 何をすべきか・・・

優一はこれから、どうすればいいか、迷っていた。

-チロチロチロ

フォードステーションが鳴った。

これが優一の新たな迷いを生むことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ