少年のセミ
この小説はツイッターでの
「同じ書き出しでどれだけ違うストーリーを作れるか」
という企画に触発されて書いたものです。
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たまたま、外へ出ようと考えたのは数十分前のことだ。
家の外へ一歩出ると、ねっとりとした熱い空気が全身にまとわりついた。これから季節は涼しくなっていくというのに、まだ暑苦しさが残っている。
額から頬にかけて流れ落ちる汗を乱暴に手の甲で拭う。
そのまま手を下に下ろすと、少し先に誰かが立っているのに気付いた。
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の部分が企画固定の書き出しとなります。
企画サイトにて他参加者様の作品も掲載されているので、そちらも是非どうぞ!
http://tobiharu.noor.jp/sbds/
たまたま、外へ出ようと考えたのは数十分前のことだ。
家の外へ一歩出ると、ねっとりとした熱い空気が全身にまとわりついた。これから季節は涼しくなっていくというのに、まだ暑苦しさが残っている。
額から頬にかけて流れ落ちる汗を乱暴に手の甲で拭う。
そのまま手を下に下ろすと、少し先に誰かが立っているのに気付いた。
子供だった。それも最近見た覚えのある子だ。
確かつい先日の盆踊りで一人所在なさげにしていた子だと思う。
あの時は浴衣を着ておとなしそうにしていた少年も、今この時は麦わら帽子とまっ白いシャツを着て握った虫取り網を振り回す活発な少年となっていた。
「あ、盆踊りの兄ちゃん。ちょうどいいや、肩車してくれない?」
「肩車? なんだ、木にでも上るのか?」
「あそこにセミがいるんだけど、高くて届かないの。だから兄ちゃん肩車して!」
「あー、あいはいっと」
軽く屈んでやると、少年は嬉々としてよじ登ってくる。
世間の温度が夏の間はセミも元気に鳴き続けるものだが、それを取る少年もその元気さは同じな様だ。
「ほら! これがそこにいたセミ! 兄ちゃんが肩車してくれたおかげで取れたんだよ!」
「おーコイツか。んで、少年はこいつをどうするんだ?」
「これから毎日世話して、一杯長生きさせてやるんだ!」
そう宣言して、少年は太陽の様な笑みを浮かべた。
その笑顔につられて俺の顔も笑顔になったが、ふっと思い返した過去の記憶に思わず苦笑気味の笑顔になってしまう。
生き物は世話をすれば長生きする。それは当たり前の事ではあるが、セミの寿命は比較的短いものだ。
昔の自分もセミを捕まえては世話をして死なせてしまっては泣いてと、そのことを悟るまで毎年世話をし続けたものだった。
この少年も、そろそろそういうことを悟る時期かもしれない。
「そっか、それじゃあ世話頑張らないとな!」
「うん!」
それでもせめて、この少年にはそれを良い思い出として残してあげたい。
「……よし! んじゃあ、そんな頑張り屋の少年にお兄さんからごほうびだ。少年がそのセミを立派に世話して長生きさせられたら、お兄さんが少年にアイスをおごってやろう!」
「ホント!? やったぁ!! でも兄ちゃん、お金あるの?」
「ばかやろ、大人はお金を持ってるものなんだぞ?」
「そっか、じゃあまた今度セミ見せに来るからね! ばいばい兄ちゃん」
そう言って少年は帰る道すがらこちらを振り向いては手を振りつつどこかへ走って行った。
その日からしばらくして、俺は「セミが死んだ」とすすり泣く傷心の少年にアイスをおごった。
少年の涙の思い出がアイスで上書きできないものか思いつつ。
ちなみにこの話、オールフィクションです。
自分が虫取りをしたのは小5の頃が最後ですし、何より虫は大の苦手です。
昔はダンゴ虫とか良く捕まえた物ですが、今では見るだけで鳥肌が立ちます。
どうしてこうなったかなぁ……
企画サイトにて他参加者様の作品も掲載されているので、そちらも是非どうぞ!
http://tobiharu.noor.jp/sbds/




