5.HAND
手
人間の腕の端っこにつけられて、通常他人のポケットに突っ込まれる奇妙な道具。
手を見る。三津の手首から先に在るものだ。彼と同じ、5本の指と1枚の平で出来ている。薄い色のマニキュアと指輪が一つ、装飾されているが、それらが無くとも十分鑑賞に堪える器官だ。
ひら、
はためく様に翻し、彼女は自身で代価を支払ったものではない、輝石つきの金属を見やった。三津の頬は緩んでいった。容易く感じられるけれども、決してそんなチープな女ではないと利人は知っている。一体どれ程難儀したことか。
ふふっと笑う、その賢しげな様子にたくらみごとがあると分かりながらも、彼には対策を練るだけの手腕が無い。故に、多分、彼のほうがずっと容易いのだ。
「三津?」
「なに?」
彼のジャケットのポケットには、既に無骨な手指の先客が居た。勿論、利人自身の手なのだが、それを知らないはずは欠片もないはずなのに。
「これは?」
「あたしの手。」
きゅ、きゅ、
ポケットの中で、骨張った利人の手指を三津は捕らえた。
「いいじゃない。たまには。」
たまに、では無くて頻繁で全く構わない。彼は思ったけれども、その彼の身が空くことが少ないのだ。
ふふふ。
俯きがちに笑む三津の口角が、糸で引く細い弓になっていた。歩様の幽かな上下で、前髪の陰影が桃色の目蓋の上で揺るる。
器物も人も、容赦なく破損させる暴力的な手を握る女の色合いは、あんまりに対極に思えた。記憶よりもか細い指輪の金属。問題なく填まる、彼女の指。その関節。
それら全てと比べると、彼の指の猟奇が目立つ。利人は静かに悔いた。




