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33.baroque
と、
「言う訳でだ、」
な。
「訳も、な、も無いでしょ。」
向かい合った正面から、皮膚そのものでもない。大きな力を揮うことの出来る指先で、やわやわと圧されながら、三津は呆れ返っていた。
彼の無骨な手指を窪ませて造るお椀型は、利人という男が成せる丸みの中で最も優しい。そのお椀に視線を落としてるのは、顰め面である。当然中身は入っておらず、彼は恐らくそれが気に喰わない。
少し嵩は多いけれど、ぴたんと収まるものを利人は知っていて、今、たった今、それを組みに行きたいのだ。
--三津、
彼女の。どこもかしこも、利人に優しく創られているその中のひとつところは、もしかしなくとも飛びぬけた柔らかさでは無いのかもしれない。けれど、彼のこそげた頬が緩むくらい。
--あの、
乳房の一対。
茨の棘の頂。
窪みの一等深いところで感じなければ、と彼は切迫して思った。
そんな訳である。




