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14.WEREWOLF
人間狼
かつては、そして今でも時にはそうであるが、人間だった狼。
シーサーがその口の中に、後生大事に仕舞い込んでいた子袋には、用途の分からぬものがこまごまと詰まっていた。
「何したの。」
「いや、犬の形をした飴があってな、」
「……食べたの、」
「……食べました。」
利人に耳が生えた。尾も生えた。
「犬?」
「狼だと良いなと、思うんだが、」
「……どっちでもいいけど、」
ふさ、
ふさ、
ふさ、
ふさ、
ご機嫌宜しくあるらしく、彼の尾は至極大きく振られている。
「ちょっと、」
利人!
「乗っかんないで!」
「ご期待に沿わないといけないかと、」
「嫌。」
「耳と尻尾だぞ?」
ん?
どうだ、と言わんばかりの大男の顔を、三津はきっちり両手で押し返した。
「口、尖ってるし。手、前足になってるし。」
もう、
「どっからどうみても、イヌ科!」
触ったら絶交。
人欠けの人間味もなくなった、かつて利人だった狼はその日の夜明けまで、一人寂しくキッチンに隔離された。勿論遠吠えはきつく禁止されて。