13.KINDNESS
親切
十巻から成る苛酷な取立てに対する短い前置き。
「迷子なんだって。」
だから、
「連れて来ちゃった。」
「はじめまして!」
「……、」
三津がシーサーを拾ってきた。焼き物の。一抱えもあるから、相当重いだろうに。
「で?」
「どうしよう?」
「……お前、」
いつもの通り、よりも少々甘っぽく三津は笑った。意図的に媚を外に置いた笑いだ。しかしそれすら、
「……ち、」
可愛らしく思うのだから、目も当てられない。
「あ!ご心配なく!」
当の焼き物は、にゅううっと大きく裂けた口で明るく言い放つのだった。色合いと良い口調といい、魔よけのくせにえらく陽気だ。
「沖縄の市役所に送ってください。」
「え?」
「あ?」
「佐藤さんとか鈴木さんとか当てで良いですから!」
「知り合いか?」
「まさかー!」
国内ですからね。
「一人くらい居るでしょ。」
「……そうか?」
「まあ、そうと決まれば。」
--決まりか!?
「ダンボールとって来るわ。」
「お願いしますー。」
壁を隔てたき向こう側で三津はごそごそ探っていて、利人といえば緩衝材としての新聞紙を丸めるのに忙しい。
「三津さんて、優しいですねえ。」
「……。」
「良い匂いがするし、柔らかいし、」
「ぶっ壊すぞ。」
「すいませんごめんなさい。」
結局、
「半日かかったな。」
「お手数おかけしました!」
あとは封をするばかりで、沢山の紙に包まれたり囲まれたりした置物は、くぐもった声で礼を言った。
「どういたしまして。」
三津がとても満足げでなければ、今頃包まっているのは半透明のゴミ袋だったろう。
「じゃ、閉めるね。」
「はーい。」
「ちょっと待て。」
「はい?」
「お前、恩返しくらいしていけ。」
「……容赦ないですね、」
見えないくせに握り拳の気配は感じたようで、性別も判然としない声を持つシーサーは、
「動けたのか。」
「ま、一応。」
口をにゅっと開いて、子袋を彼の手に。
そうして、コンビニから沖縄の市役所の佐藤さんの下へと旅立って行ったのだった。
不完全燃焼……。