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第二話 後編 「白都防衛・イシニア平原の戦い」



    …。ブレドの映像越しだった戦況…、いや戦場。敵も味方も夥しい数の人達が倒れている。

     その中には身分階級も無く、ただ等しく死がそこに。

    こちら側のリアドラや、敵側の味方についたリアドラ達の亡骸。

     その多くはルシャによって倒された者だろう。 打撃や関節技だろうそれで人体の至る所

     が破壊され、骨が肉を突き破り今だ止まらない血が流れ出ている。

    敵と味方、その区別は鎧や衣服でも見分けられるが…全く別のモノでも見分けられた。

     それは、顔。敵側の亡骸は痛み・死に対する恐怖だろうか、苦痛に歪んでいる。

     だが、リアドラ達はどうだろう。皆酷い傷を受けているのにも関わらず…。

      「とても、精悍な顔付きのまま、息絶えてますね…」

    隣で一緒に歩いているマリアが、俺の視線から察したのだろう。

     彼等の死に顔、それは精悍でとても死人とは思えない。

     恐怖を凌駕する程に彼等の怒りが在ったのか…それは判らない。

    ふと、気がつくと俺の顔を見てきたマリアが、私はとても怖かったと言うと、

     その華奢な体を震えさせ、それを押さえ込もうと両腕で押さえつけている。

    正直、今更ながらであるが…怖い。戦場からはなれて指揮…いや結局見ているだけだった俺。

     終わったとはいえ、初めてその渦中に立ち襲い来る恐怖。

     何よりもこの血の臭い、思わず立ち止まり地面にひざをつけた。

    吐き気・眩暈…そして自分の無力さへの激しい苛立ち。

     あの時、俺の中で身が震える程に燃え上がる様な感覚、アレは恐れだったのか? 判らない。

     そんな己への無力さからくる脱力だろうか…力が入らない。

      「ルヴァン? 悲しいのは判ります…ですが、進みましょう?」

    そう言って俺の肩を優しく触れてくるマリアの方を向くと、彼女は必死で涙を堪えていた。

     この脱力感は、悲しみからか? …判らない。

    ただ、判る事は泣きたいのを堪えているマリアを、強く引き寄せて

     その胸元で戸惑いや悲しみ、苛立ち…恐怖もだろうそれらを全て含めて俺は泣く俺。

     それに耐えかねたのか、マリアもついに…。

    互いに身を強く抱きしめて、空に向かい泣き叫んだ…己の無力を呪うかの様に。


     「何をしておるか! まだ戦いは終わってはおらぬぞ!!」

    

    そんな俺達を叱咤する怒声…ブレドか。まさか二人セットで怒鳴られるとは。

     だが、その怒声を何故か待っていた気が…マリアもその様子。

     「全く、ワシがおらねば何も出来ぬのかお主等…」

    相当苛立っている様子で、顔を引き攣らせ強く目を閉じ、両腕を組んで

     右人差し指で組んだ左腕を幾度も叩いている。

     そんな彼女が一つの話をしてくれた、本人はこれは言いたくなかったがと付け加えて。

     「気がつかぬか? 神の一部たるワシが、ただの人間に

          何の意味も無く接触してくる筈も無いと言う事に」

    …。静かに歩み寄ってきた彼女は、俺達の頬を一度張ると、溜息をついた。

     そして、彼女がエオンの質を見抜く力を有している。それを忘れたか? と

     俺に…確かに言ったが、それがどうし…まさか。

     「ここまで言わぬと判らぬか、阿呆め。 信じよ!お主等自身を。

       このワシの眼鏡に適う者達であるという事を」

    そういえば、こいつ一応…神なんだよな。 俺とマリアは互いに顔を見合わせると

     少し、目を逸らした。それは…互いに酷い泣きっ面であったからだろう。

     普段は鬱陶しいぐらいだが、今の俺達には、とても頼もしい存在に見える

     黒の少女は、目をあけて優しく微笑み、俺達はいずれ大きく・強くなる、

     何よりも…誰よりも、と。

     「ま、今は小虫じゃがの」

    …こいつ。あのまま黙っていりゃいいものを。 思わず立ち上がり、彼女の減らず口に

     指を突っ込み左右に開き、余計な事を言う口はこの口ですか? 神様、と。

     「きっ…きはば!! なにをふぶ!!」

無様に開かれたその口から発せられる言葉は、また減らず口。

    まぁ、口が減らないから減らず口と言うのだろうが。

    本当にこいつは…いや、わざとだろう。元気づけさせる為だろう。

    今は、そう思っておこう。 マリアもそう思ったのか、涙を拭い力強く立ち上がり

    進むべき方角に視線を向け、いきましょう。と。 俺もそれを見て頷くと彼女の

    隣に行き、共に歩を進める。 背中では、ブレドが…多分鼻で笑っているんだろうな。

    もっとも、それは、嫌味では無く別の意味でだろう。


   完全に日が落ち、月と星が夜空に輝き遠い地平を閉ざす暗闇が支配する夜。

    その地平の一部にオレンジ色の灯火、その日の駐屯地へと俺達は追いついた。

    皆、疲れているはずなのに、食料を口々に運びつつ、未来を語り合っている。

    それは、個々の理想。叶うかも判らない事。彼等もそれは判っている筈だが…。

     「審剣ヘルブレドの力を目の当たりにすれば、当然じゃの」

   …クエスターをものともしない、あの強さ。圧倒的な身体能力とでも言うのか。

    あんな大きな戦闘の後、更に進軍したと言うのに、皆、疲労の影も見せない。

    それどころか、体力が回復している様にも思える。

    「ふふふ。強き力の御座におるなればこそ…」

   その未来は確約されたも同然か。果たしてそうなのか…いや。

    今まで虐げられてきた者達が、初めて身近に感じる位の高い存在。

    ヘルブレドよりも、そちらの方が何よりも嬉しいのだろうか…。判らない。

   ただ、判る事がある。リアドラ達を決して俺は…。

    ブレドの視線が俺に突き刺さるが、何を言いたいかは判った。

    その視線に頷き、俺は語り合う名も知らぬリアドラ達に混ざり、

    公私の私で、ありのままの自分で居た。 

   そして、そんな俺を見て何を思うか、勿論頼りないという印象もあるだろう。

    だが、それでいい。俺は知って欲しかったからだ。

   黒の王は、絶対無敵の存在では無い。その事を。

    リアドラ達と同じ、ただの弱い人間であると言う事を。

     「兄貴謙遜し過ぎだよ…あんな強いのにさ。それにまるで別人だよ」

   う…オルガが近くに居たのか、不安にさせてしまったか? ど、どうしよう。

    それに、ブレドの時の俺とは落差が確かにありすぎる。

    周囲も少し戸惑いが…ミスったか。

     「こ奴もお主等と変わらぬ人間。 弱さも同時に持ち合わせておる。

       過ちを犯す事も多々あろう、いかに強大な力を内に秘めようともな」

   後ろから暗闇に紛れて歩いてきたブレドが巧い事言葉を取り繕ってくれた様だ。

    そのまま彼女は俺達の中心へと歩きつつ、いかに強大な力を持っていても、

    人間は人間。限界は必ず在る…と、そういい、中央に立つと右腕を払い…。

     「じゃから、ワシがおる。お主等リアドラが、ルガントがおる。

         この意味が…判るな?」

   そう彼女が言うと、彼等は立ち上がり、何か思い出したのか、

    それを口々に語り合い、互いの肩を抱き合っている。

    それは、言うまでも無い。…う。ブレドの視線が痛い。

   明らかに言葉を選べ阿呆と言わんばかりに睨みつけて…ごふぅ。

    …本当に色々と学ばなければいけない様だ、ブレドから。

   ん? そういえば…さっきから別の方角が騒がしいが…。うは。

    またアレだ。泡だらけのリシアが臭い!!と叫びながらルガントを一列に並ばせて

    煙でも噴くんじゃないかというぐらいに、濡れた布で彼等を洗っている。

    何とも珍妙な光景である。まるで牧場の娘が…いや、彼等を家畜とみなすのは

    良くない…か。

     「っへ~?」

   なんだよチビ助。突然空から、淡い緑の光を撒き散らせて俺の目の前に。

    人の顔を見たと思ったら、今度は俺の周囲を舐める様に見て

    飛び回りやがって…。

     「うん。まぁ、認めてやるよ!」

   …マジで殴るぞこのチビ助。ったく…はいはいそれはありがとうございます。

    と、軽く流す俺に、半ば怒りながらチビ助は一つのモノを差し出してきた。

     「ありがたく受け取れよ? 俺達の女王からの親書と贈り物だ」

   と言うと、…書? というよりは本当に小さい玉。恐らくはあの水晶玉と同じ類だろう。

    それが差し出され。もう一つは、何か良く判らない木の実?

   そして、横から俺の顔を押しのけて入り込んできたブレド先生の説明台詞きたよ。

     「これは、エリアードの器…まだ存在したのか」

   なんだよそりゃ。イグドラシルとかそんな類か?

    イグドラシルがどんなものか、それを軽く説明しつつブレドに尋ねると、

    そんなワケの判らない物では無い! と。 じゃあなんだよ…。

   判らずに、その小汚い茶色のやや細長く小さい実の様な物を手にとって見つめる。

    それに食い入る様にブレドが…そこまで凄いものなのか?

     「ふふ…死竜の顎に続いて、エリアードまで…。ふ…ふふふふ」

   こいつ余程嬉しいのか、身を震わせて気持ち悪い程に笑ってるぞ。

    だから何なんだよ。

     「早く女王の言葉を聞けよ!! そこの馬鹿二人!!!」

   うわ、俺はともかくとして、ブレドにそれは…あーあ。

    いわんこっちゃない。鷲掴みにされたチビ助がブレドに罵声を浴びせ必死で逃げよう

    としているが…火に油…いやロケット燃料。 爆発的に加速したブレドの怒りが

    大気圏を軽く飛び越え宇宙の果てまで行ってしまった様だ。

    チビ助の顔を弄び、速射砲の如く罵声を浴びせる。まぁ…似た者同士。

   そんな二人を余所に、俺はこっそりともう一つ、非常に小さい水晶玉を。

    問題はどう使うのか、三回こすってみたり、アブラカタブラとか開けゴマとか

    言ってみたが反応無し。…悩む俺にようやく収まったのか、ブレドが近寄ってきて…。

   うわ! チビ助が地面で悶絶してるぞ。お前、見て無い間に一体何をした!?何を!!

    と、脳内で叫ぶ俺からソレを取り上げると、お前はまだ命導力を使えないからな、と。

   まだ…と言うことは…何か嫌な予感がするが。

    彼女がそれに触れると、淡い光が周囲を包み…む。

    水晶玉の中では無く、頭の中に直接…。

     「ほう、それほどの力を持つか。クラディアの女王」

   どうも、このチビ助の総称だろうか? それとも国の名前? 判らないが…

    それらしい女性が脳内に。 …うーわー…。

     (全てを見ていたぞ! 黒の王!)

    駄目だ、コイツとブレドは絶対に会わしてはいけない。そう思った。

    両手を腰に当て、無い…いや性別…こいつはあるのか。まぁ無いに等しい

    胸を張る姿は、まさにブレドそのものである。違いは何か物凄いウニ。

    とでも言うのか、四方八方に縛った髪が特徴的なフェアリー。

     (その強さ、いや…あの涙にわらわは賭けた!)

   …まさか、見られてた? あのガン泣き見られた? 恥ずかしい…。

     (そなたが涙した先、大空も悲しんでいる…そして…)

   なんだ? 確かに上向いて泣いたが…。ぬお、ブレドが割り込んできた!!

     「お主の世界で言う所の戦風(そよかぜ) エリアードとは名にあらず…じゃ。

       それを来るべき時に備え、お主に託すと」

   ますます判らなくしやがった。うおお、わらわの台詞を取るなと大激怒の女王様。

    その気持ちは痛い程判るぞ、うん。…ておい。親書じゃないのか?

    モロにリアルタイムじゃないか。まぁ、この世界ではこんなものなのか。

   にしてもおい。親書なんだぞ? 互いに口喧嘩してどうするよ。

    どうにも収まらぬその現状、…あ、余りに怒った女王様が通信きってしまっ…おいおい。

    行き所の無くなった怒り。それを地面に叩きつけ…。

     「この傲慢で口の減らぬ阿呆がぁぁぁっ!!!」

   いや、それお前、お前だから。とは口には出来ず、彼女の肩を軽く叩いて宥めると、

    まだ収まらないのか、その怒りの矛先が俺にぶつけられフルボッコ。

     「うわ~…オイラし~らないっと」

   ちょ、助けろよ! 止めてくれよ!! 何で俺がタコ殴りにされにゃいかんのだ!!!

    そのまま逃げる様に夜空へと淡い緑色の光は消え…いてぇっ! マジいてぇっ!!

    …んだーっ! マウントポジションを取り散々殴って、ようやく気が済んだのか

    肩で息を切らし、そのまま俺に倒れこんできた…こいつ。

   まぁ、こいつも色々と考えてストレスも相当なものなのだろう。

    そう思う事にして、軽く頭を撫でると…どうよこれ。

     「う~…」

   唸りやがった、猫かお前は!!! 押しのけようとしたが、見事に張り付いて剥がれない。

    ただ唸って張り付いている。…全く。

   諦めてそのまま夜空に視線を移すと、何て綺麗な星空だろう。

    日本じゃまず見れないんだろうな…。例えるなら玩具箱をひっくり返した様な…いや、

    宝石箱の方がよかったんだろうか…まぁいいか。そんな星空が散りばめられた夜空。

   となりにマリアかリシアでも寝転がってたら絵になるんだろうな。

    が、残念な事に現状は、腹の上で唸る黒い仔猫といった所か。

   ん? なんだ、何か思い出したかの様に俺に…いや近い!離れろ!!

    何かの拍子でキスしてしまいそうな、そんな…ほんのりミントの香り、か。

   いやいやいや、何を考えている。そんな至近距離で彼女の出た言葉。

    さっさと褒美を済ませてこい…だ。 血の気が引くと同時に、ブレドも俺から飛びのいた。

   唐突に突きつけられた俺の仕事。それは餌。 …うう。

    (彼女は離してはならぬ。判っておるな?)

   …。黙って頷くと、立ち上がり、俺用だろう大きいテントへと歩いていく。

    その最中、オルガ達は楽しそうに語らったり食べたり呑んだり…。

    う…羨ましい。俺も、ああ言う仲間といえばいいか…欲しいな。

   思えば、俺は一人。オルガは確かに近しく感じるが側近とはいえたまにしか会えない。

    もっと近しく、親しく。遠慮の無い仲間が欲しい。…心が寒い、孤独感。

   そんな俺に一つの視線…マリアか。その視線は少し恨めしそうであり、

    悲しそうでもある。 …これからする事を知っているからだろうな。

   彼女は俺のことを好きなのか? 判らない。

    じゃあ、俺はどうだ? …それすらも判らない。そもそも誰かを好きになった事が無い。

   そんな空しさを覚えつつも、ゆっくりとテントの布を上に開けて、中に入る。

    見た目も大きく、床は土だが…内装はベッドがあったり風呂があったりと…豪勢である。

   湯は入っており、手をつけるとまだ入れてまもないのか、暖かい。

    早速入る事にし、城下の人に仕立てて貰ったんだろう、黒い衣服に金の刺繍が

    やや入ったソレを脱ぎ、当然下着も、と。体を洗っていると、

    外が冷える所為か、体も冷えてきたので、手早く洗い風呂の中に。

   俺の体を見てみると、傷一つ無い。当然だな。戦っていない。

    外の人達はどうだろう。傷だらけじゃないか? 寒くないか? …疎外感さえ

    覚えるその寒気を暖めようと、肩まで浸かり大きく溜息を吐くと、

    波立ったお湯を押しのけて波紋が広がっていく。

   暫く、何も考えず、ただ体を温めると風呂から出て、かかっていた大きな布で体を拭き、

    その隣に折りたたまれている黒い服…毛皮?みたいなガウンといえばいいのかそれに近い。

    まぁ、それを羽織ってベッドに歩いていき、そのまま勢い良くぶったおれた。

   疲れる。この豪勢さが返って疲れる。 あっちで俺もゴロ寝したい。

    何故か、リアドラ達がとても恵まれている様に思えてしまう。

   いや、恵まれているのは…俺か。 視線の先はテントの入り口。

    外から入り込む淡い光が人の影を映し出している。リシアだろう。

    その彼女がゆっくりと入り口から入り…ぬぉぉっ!?

     「何しみったれた顔してるのよ?」

いきなり走りこんで来たと思えば、遠慮の欠片もなく俺の腹の上に乗っかってきやがった!!

    そのままゆっくりと厚めの衣服の上着をめくり、胸元を際どい所まで晒し俺の顔に、

    自分の顔を近づけ…ちょっ。胸っ見え…でかっ!?

   改めて見るリシアの胸。予想以上に大きいな…あいや、何かもう真っ白です。

     「んふ…」

   じゃないだろ。妙に色っぽく短い金髪を彼女はかきあげると、そのままゆっくりと

    俺の胸元に手を当てて優しく抱きついてきた。

   俺の肋骨やや下のあたりで、つぶれそうな程、

    押し付けられている柔らかい胸。と、足は足で

    俺の右の太ももに絡みつく様に…何かとても熱いです部分的に。

   も、もう既に緊張しまくりで体が動かない。どうしよう。

     「私じゃ…いや?」

いやいやいや、とんでもない。こんな美女と初体験なぞ本来なら有り得んし。

    その事を彼女に必死で伝えると、マリアが気になる? と。

   あ、ああ。確かにそれもあるが、人を好きになった事がまだ無いので、

    当然こういう事も経験無いと。それを伝える。

    彼女は、誰かを愛すると確かに強くもなれるけど。

    同時に、苦しくもあるもの。と。経験から来るものだろうか、

    少し、悲しそうな顔をすると急に起き上がり…なんだよ。

    「それよりほら! 見せて…貰うわよ?」

   何をだ!? 一体何…そこかぁぁぁぁぁああっ!!!

    一番見られたくない俺の恥部。俺の息子の前にあるカーテンを押し開けられ…。

    「うわ…」

   いや何、何だよ。俺も口を押さえて彼女の見ているだろうソレを見ると…うわ。

    俺まで同じ事を口走ってしまったじゃないか。

    お前、何時の間にそんなにエベレスト。いやいや、トイレの時に

    何度も見たが、精々一階建てだっただろ? 普通の時。

    (ふふ。二つ目の力…。どうじゃな? 気に入ったかの?)

   これか…いやお前見るな! 人の情事見るなこの出歯亀!!!

    (まぁほれ。男の自信? それじゃな。ま、経験はゆっくりと積むが良い)

   男の自信じゃねぇ!! 誰が何時形成外科頼んだよ!! って何かさっきから

    妙に生暖かくて、こう背筋がゾワッと…。

   くるぁぁっ!! 舐めるな! 舐めないで…わざとらしく音を立てて舐めっ吸っ…

    っ!? く…ちょっ!言葉に出来ない快感の波ががが。余りの快感に身を仰け反らせ

    彼女の頭を、無意識に強く押し付けてしまい…。

     「ん!? んぐ!!!!」

   …。 

     「…」

   どうしよう…。ねぇどうすればいい? 見せる顔が無い。

    口を押さえて黙っているリシアに見せる顔が無い!! 顔を背けて肩で息をしつつ

    必死で真っ白な頭で考えるが、答えがでないぃぃぃぃっ!!

     (…お主。雷塵も真っ青じゃのその速さ)

   やかましい!! そんな褒め言葉いらんわ!! つか出て行けくらぁっ!!

    …て、うぶぁぁぁぁっ!? 突然、俺の顔にリシアの両手があてがわれ

    あろうことか…その何。息子の憤りを俺の口に…うべぁぁ!!!

   苦いっ!臭いっ! う、彼女のねっとりとした舌が俺の口の中で

    俺の舌を探し、みつけると絡み付いて…なんかもうどうでも良くなってきた。

    そのまま数分、互いに息を荒げて舌と体を絡み合わせていると、

    彼女の方から口を離して…何。

     「いきなりなんて…おしおき」

   今のがおしおきですか。いや確かに自分の息子と間接キスするとは思わなかったが。

    そのまま彼女がゆっくりと、俺の右側に寝転ぶと体を預けてきたが…何?

     「さ…来て」

   何か俺の胸元を指で弄って催促されてますが…。何すればいいの? ねぇ何しろと?

    (今度は彼女を悦ばせてやらぬとの?)

   …まだいるのか。まぁ、いい。ブレド先生頼む。俺の体乗っ取って!!!

    (ヘルブレドは使えぬじゃろ虚け。そもそもこんな事に使う気か?)

   いや、そのチート能力でなんとか…その。やり方判りません!

    (知らぬわ! 阿呆!!)

   丸投げかよ! 人を勝手に餌にして丸投げかよ!! 

    ええい、なるようになれだもう。知らんぞ!!

   起き上がって彼女の上に被さり…生唾を呑んでしまった。その胸の形の良さと大きさに。

    恐る恐る手を触れ、少し強めに掴むと余りの柔らかさからか、指が埋もれていく。

    その瞬間、彼女の体は少し強張った様に震えた様な…気持ちいいのか?

    判らないまま、自分の口で彼女の胸の先端を舐めたり…確かDVDで噛んでる奴いたよな?

    「いたっ! ちょっと、そんなに強く噛んだら駄目よ?」

   あれ? 強く噛み過ぎた? 頭を抑えられて軽く怒られたが、そのまま胸に押し付けられて

    しまい。俺は無我夢中で揉んだり舐めたり吸ったりと…。段々と俺の舌やら顎が

    疲れてきたが、彼女の俺を抑える手が強くなり体を少し捻らせたり…気持ちよくなってるのか?

   な…なんとなく、というかおそるおそる彼女の太ももの間に右手を入れてみると物凄く熱い。

    自分のは良く触るが、息子のいない部分を触るのは初めてであり、少し骨だろうか、

    それが指の付け根に当たる感覚があり、少し指を曲げてみると、更に指先が熱くねっとりと…。

    (ふむ。ヘタクソじゃのう)

   見るなってお前。 

    (そのまま中指を突き入れて、腹の方へ押してみると良い)

   え…。いやまぁ…うん。 その通りに更に深く手を太ももの内側に潜らせ、

    指でまさぐりつつ、ブレドの言う通りにしてみた所、

    彼女の腰が軽く浮き、俺にしがみついて…んむふ。

    強く唇を重ねられ舌を絡められつつ抱きつかれた。

    そのままワケもわからないまま、指で彼女を弄り回していると、

    いた…いたたた! 起き上がった彼女の抱き締めが急に強くなり、くるしっ胸をおしつけっむふぉっ!?

    そのまま、声にならない声? と共にベッドに倒れこみ、

    何か気持ちよさそうに、体を震わせて恍惚としているが…これでよかったのか?

   (リシアの奴、相当たまっとったのじゃな。こんなヘタクソで…)

   お前…ヘタクソヘタクソ言うなと!! 全く…で、これで俺のお役御免でいいよね?いいよね!?

    (はぁ!? ここでやめたらそれこそリシアが離れるのじゃぞ? お主馬鹿か!?)

   うぐぇ。 う…いつのまにかリシアが俺の方を向き両腕を前に出して…体の力を抜いている。

    (ほれほれ、女を待たせるで無いわ。お主のその びっぐまぐなむ とやらで

       しっかりと繋ぎ止めておくと良い)

   …どこでそんな言葉覚えてきたこの娘。 お前を撃ち抜くぞコラ。

    こいつエロゲでも見てたんじゃないか。そんな気がしてならない。

    しかもそのビッグマグナムにしたのは誰だよ全く。

   軽く溜息をつくと同時に、大きく深呼吸をして、リシアの体にかぶさると、

    待っていたかの様に、彼女の腕が俺の首をしっかりと。

    で、俺はというと、どこ? ねぇどこ? さっき指入ったけど…。

    あ、リシアが少し苛立ってる顔してる。やばい。

    (どうにもならぬヘタクソじゃのう)

   やかましい! 初めてで見た事も無いんだぞくるぁ! てこら、俺の息子持つなブレド!!

    「く……ぁああっ!!」

   うわ…こんなの入るものなのか? …。

    姿を消しているブレドの手に誘われて入った先には、

    物凄い締め付けとねっとり熱いお出迎えがなんとも。

   そんな状態が気持ち良いのか? 身を仰け反らせて苦しそうに悶えるリシアの表情に、

    妙な快感を覚えるが、そのままの状態で居る事にした…。


   それから暫しテントの中は、リシアの乱れる声が響き。外で誰か覗いていないか?

    という心配もしていたが、初体験が終わってしまった。

   隣では、まだ肩で息を切らしたリシアが、満足そうな笑みを浮かべてこちらを見ている。

    ちょっと、照れくさくなって視線をそらしたが…。

    「もう…自信持ちなさいよ? こーんな凄いの持ってるんだから」

   握るな触るなおい! 

    「あら、まだまだ物足りなさそうね。私はちょっともうキツいんだけど…」

   と言うと、俺に馬乗りになり、またあの熱いお出迎えが…ちょっ!!!

    「ん…くぅぅっ!! }

問答無用で入れられてしまい、そうとうキツいのかリシアの苦しそうな顔にこう何…。

    何かしん棒たまらん!! そのまま彼女を押し倒し…。

    「ちょっ君!? そんな…っっ!!!!?」

   激しいリシアの悲鳴にも似た声がテントに響き渡り、

    結局、朝までお勤めご苦労様になってしまった。

   俺もだが、一糸纏わぬ姿でベッドの上で抱き合い…リシアは疲れ切って寝てしまっている。

    かなり乱れた金髪を軽く手で整えてやると、なんとも幸せそうな寝顔が露になった。

    (お主…鬼畜じゃのう。あんな凶悪なもので…あんな激しく)

   誰がこんな暴れん棒にしたんだよ。 お前も喰らわせるぞコラ。

    (お、おおう。いや、遠慮しておく。この体では裂けるわ阿呆)

   全く、まぁ。…何。終わってみれば何と言うか、良かった。としか出ない不思議。

    静かに寝息を立てるリシアの唇に軽く唇を重ね、露になっている胸を少し

    触りつつ…。

    (まだやり足らぬのか? 思いの他、猿じゃな)

   いやいや、こうやった方が気持ちよく寝れるかな? と、うん。

    そう心の中で言うと、何かに満足した様に彼女は答えなくなった。

   …。そのまま、暫く時間が過ぎ、俺はリシアをジッと見ていると、彼女が

    目を覚ましたのか、起き上がって、おはようと挨拶してきたので、俺も挨拶する。

   少し俺は恥ずかしかったのか、彼女の目を見れなかった。

    そんな俺に強くしがみついてきて、リシアは頑張りすぎ。と。

    半ば怒ったような顔で笑って言ってきたが…ううむ。

   軽く彼女は俺の傍で伸びをすると、そのまま立ち上がり完全に冷めてるだろう風呂へと。

    いや、冷たいぞ? と言うがこのまま出れないよ。と笑いながら答え、

    カーテンが閉められ、その体のラインがモロなシルエットがまたけしからん…。

   て、ええいいい加減雑念捨てろ俺も! 次はマリアの母親を無事に救い出す事だろう。

    そんなこんな無理矢理雑念を抑えていると、あの熱い布を巻いて寒そうに出てきた

    リシアが、俺の目の前で恥ずかしげもなく下着…いやなんかゴムっぽいぞ。

    それをはいて、その上に厚手の皮の服。

   …動きにくそうだなおい。まぁいいか。

     「さて、ちょっとあの臭い奴等を洗ってくるね」

   元気だな、…いやちょっと腰にきてるのか、動きが危なっかしくテントから出て行ってしまった。

    何と言うか、何かさっぱりしてるな。 このままねっちょりとした関係になるのかと…。

     「割り切っておるのじゃよ」

   出たな出歯亀娘。 俺は問答無用で隣に座っていたブレド押し倒し、

    この恨みかえさでおくべきかとばかりに弄ってやろうと思った。勿論冗談だ。

   本当にする気は毛程も無い。

     「ふむ。まぁ…また少しマシになった様じゃな」

   と、恐れも怯えもせず、俺を見つめて検分してやがる。…なんて奴だ。

    どうしようと固まっている俺の息子めがけて振り上げられたブレドの膝。

    それをまともに喰らい声ならぬ声で、かぶさる様にブレドの胸の上に倒れこんでしまった。

     「じゃが、ワシに手を出そうなぞ早い早い」

   そう言うと、俺の顔を両手でがっしりと持って、一言。

    世界が千程生まれ変わってから出直すが良い、と。 …どんな数字だよそれは。

    へいへいそうですか、と軽く流し、ロッククライマーも裸足で逃げ出す程の

    摩擦抵抗ゼロな断崖絶壁に顔を埋めた。

     「早く、猛る獅子となっておくれの…イクト」

   なれるのか? 判らないが、黙って頷くと彼女に抱き締められてしまった。

    柔らかい様な硬い様な…あんまりこう何。リシアと比べると…うんまぁいいか。

    


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