タイトル未定
身体がいたい。現代人がいきなり地面で寝ると言うのはいささか無謀だったか。マントに包まれた身体を起こし身体の凝りをほぐすため背を伸ばした。
目を擦りながら回りを見ると既に門は開いていた。いびきをかいて寝ている周りの男達に礼のひとつでも伝えたいが寝ているところを起こすのも忍びないどうしようか悩んでいると
「ようやくお目覚めかい、引き継ぎも面倒なんでさっさと手続き済ませてくれないか?うまく行けばこっちは早上がり出来ておまえを案内してやれる、どうする?」
まだ完全には回りきっていない頭で反応してしまい首をたてに振っていた。
「話がわかるな、ちゃっちゃと立って手続きしといてくれ、俺は着替えてくるから門を越えた町のなかで待ってるぜ。」嵐のように捲し立てた男はもう一人の門兵に何かを伝えるとそのままの勢いで裏の方へ行ってしまった。
呆気にとられている私にもう一人の門兵がこちらに来るように手招いている。
「朝から騒がしくてすまんな。別に悪気があってやっている訳じゃないんだ勘弁してくれ。大体の話はアイツから聞いている、田舎から出てきたんだろ身分証になりそうなものは何か持っているか?」
なにか無いかとポケットの中を確認するが僅かばかりの硬貨だけしか入っていなかった。硬貨を取り出し見せると
「やはり無いか、まぁ良くあることだ。町に入ったら何か身分証になるものを手に入れることだな。税としてこれだけ申し訳ないが頂いておく。後はアイツの仕事か…中へどうぞ。」あそこで寝ている人に起きたら感謝を伝えてほしいことを伝え進む。
これから新しい人生が始まるそんな明るい未来を思い描きながら門を進むのであった。
「ようこそ聖炎の街へ、歓迎するぜ。」仰々しく言ったアイツはとても楽しそうに笑っていた。
そこから街を案内してもらった。あそこの飯はうまいだの日用品を買うならあそこだだの生活に困らない程度には街の事教えてもらった。
それにしても街中は風通しも悪いのか匂う、これが中世の一般的な街かそんなことを思っているとある場所についた
『紹介所』であった。
「冒険者になるって田舎から出てきたみたいだけど街にはいろんな選択肢がある。少し話を聞いてみたらどうだ?どうするか決まったら飯でも食いに行こうぜ、待ってるから。」と言われ力強く背中を押された。
中に入ると人好きするオバチャンが居た。そこから色々なことを聞かれた。出身は?特技は?何かやりたいことは?頼れる相手はこの街に居る?いきなりの事で面を喰らってしまったが答えられる範囲で答えた。
「あまりこんなこと言いたくないんだけど、冒険者になるくらいなら田舎に帰った方が身のためよ。そう言う子を何人もみてきたから。言ったところでねぇ、帰る気もないでしょ。貴方に進められそうな仕事はないからお望み通り冒険者にでもなると良いわ。」
………何処の世界でもオバチャンはオバチャンであった。
外に出るとタバコを吸って待っていたアイツはすぐにこちらに気付き近寄ってくる。
「どうだった?時期も時期だからピークも過ぎているしで仕事紹介してもらえなかっただろう。これでおまえの望み通り晴れて冒険者だ。飯食ったらギルド行くぞ。」
そして連れていかれた飯屋は臭く、めしは不味かった。
魔法を使ってみたいことを伝えると
「魔法?習うなら冒険者ギルドの有料教習か魔法使いに弟子入りだな、頼れる相手もいないんだろ?それじゃぁ弟子入りは無理だ。当たり前だろ?いきなり弟子入りさせてくださいって何処の誰ともわからないやからが来たら怖いべw俺も簡単な魔法なら使えるが生活が少し楽になる程度だ《光よ》こんなもんでも金は結構かかるから覚悟しとけよ。」
「お客さんこんな昼間からこんなところで魔法なんて迷惑だよ!」
店員に怒られたアイツは悪い悪いと言いながらこちらに向けた何もない指を戻し食事を続けた。
「飯も食い終わったし俺は家に帰って寝たい。ので、冒険者ギルドはすぐそこだからちゃっちゃと行くべ。」
冒険者ギルド食後の軽い運動にもならないくらい近かった。
「後は受付に行けば紹介所から話も通ってるだろうしすぐに始められる。まぁ命を大事に頑張れよな。何かあったら今日入ってきた門に居ると思うから声かけてくれよな。またなぁ~。」
行ってしまった。騒がしかったけど色々と助かった。またあったら今度はこっちが飯でも奢ろうそんなことを思った。
冒険者ギルドに入るとテンプレなのか酒場も併設されている。柄の悪そうな男女が楽しそうに呑んでいた。受付に行けば
「あぁ~紹介所から来た人ですね。はいこれ身分証にもなるギルドカード。まだ信用と実績がないから簡単なものだけどこの街に居るあいだはそれで大丈夫だから、その間に頑張って正式なものになるようにね。そうすればある程度他のところとの互換性も出てくるから。始めに受けられる簡単な依頼はあそこ、制限はないから安心して働いてね。」なんか適当にあしらわれた気もするけど必要なことは教えてもらったと思おう。今はまだ朝の忙しい時間だからだろう。そう思おう。
受けられる依頼は採取系が多く残りは街の雑務系のみだった。いい加減この臭いにも嫌気がさしてきたので街の外に採取に行くことにした。
街の外は少しはあの臭いが薄くなった気がした。
森の中まで来て目的の物はあった、なんでもこの草は葉っぱから樹液に至るまで捨てるところがないらしい。
ある程度集めたが所謂魔物と言われるものとは出会わなかった。少し楽しみにしていた、隠された力が目覚めたりなんかあるんじゃないかと。
そんなことは無かった。
街には戻る頃にはだいぶ日も傾いていた。今日は閉め出されずにすみ、ギルドで納品もすんだ。金を受けとり勧められた宿へと向かう、このギルドカードだと今から行くところは割り引きされるらしい。流石に1日歩き回ると疲れた。夕方の人の多い時間帯だと人混みが苦手な私には辛い。喧嘩かなにかだろうか人集りが出来ている。こう言うのには関わらないのが吉だ。すぐそばを離れた。
不味い飯しか食べてない事を腹の音で思い出し何か腹にいれておこうと、宿につくまでにあった屋台でシンプルなジビエの串焼きを買った。慣れない独特の風味だったがこれはこれでうまかった。
宿につき受付をすませる。何か言われたような気がしたが疲れているので休ませてもらった。慣れない運動と慣れないこの臭いは肉体と精神を磨耗させる。
汚いベッドに倒れ込みこのままだと週に1回は休めそうだと思いながら目を閉じた。
閉じた目蓋の裏には漠然とした不安と自己嫌悪、世界から切り離されたような疎外感を漠然と感じ、明日こそは何か良いことがある自分に信じ込ませて気を紛らわせていると疲れからかすぐに眠れた。