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【後編】犯人は、お前だ!

春のチャレンジです。

”本格”推理小説(英:classical whodunit)に、挑戦してみました。

◆◆ 赤い文字の【メッセージ】 ◆◆


   R A C H E 


床に【赤い絵の具のチューブ】が落ちて、【絵具が飛び散っている】ことから、おそらく、このメッセージは、この赤色の絵の具で書かれたものであろうと考えられる。


他に目立つものといえば、【天井からロープで釣り下げられたバナナ】と、【小さな踏み台】、そしてそのすぐ横に落ちている赤い絵の具のようなものがついた【竹串】くらいか・・・


これは、どうなのだろう?


【名探偵】にとって、謎解きの手掛かりは、足りているのだろうか?


私には、明智先生の遺体が、目立つくらいで、残りは、教室にあったら不自然なものなど、1つもないように思えた。


◆◆ 密室殺人事件 ◆◆


「この事件は、【密室殺人事件】です。」


つかの間の沈黙の後、名探偵役の淀川甲南くんが、唐突にしゃべり始めた。


私が、教室のドアを開けて入ってきたにもかかわらず、【密室殺人事件】とは、これいかに?・・・このように思われる方も、いるかもしれない。


しかし、そうではないのだ。


呪いは、私が、この教室に足を踏み入れた瞬間から、本格発動したのである。


つまり、この私が入った瞬間に、閉まったドアの鍵はかかり、窓も完璧に施錠され、この空間に通じる穴という穴は、全てふさがれた状態になったのだ。


まぁ、「金田一の呪い」は、「本格推理モノ」なので、殺人現場は、【密室】になるのが当然である。


そう考えると、長々と説明しなくとも、ここに違和感を感じる読者など、誰もいないだろう。


では、この密室となった3年1組の教室に居る人物を、確認しておこう。


教室の中に居るのは、被害者を除くと、私を含めて7人。


まずは、私・・・【中田道子】。


そして、名探偵役の【淀川甲南】くん。


2年生の【鈴木蘭】さん。


4年生の【毛利元太】くん。


髪を乱して教室の隅で震えているのが、6年生の【小嶋歩美】さん。


そして、【淀川甲南】くんと同じ1年生の【目暮平次】くん。


私が、こうして、ひとりひとり人物を確認している間も、淀川甲南くんの声は続いている。


「あれれれれぇ、おかしいなぁ。こんな所に、赤い文字で、アルファベットが書かれてるぞぉ。R・A・C・H・E?これって、なんだろぉ?」


不自然なまでに子供っぽい話しぶりだが、仕方ない。


これも、呪いのせいである。


大体、犯人など、もう分かり切っているのである。


しかし、この「金田一の呪い」に冒された場合、名探偵役は、経過時間が45分になるまで謎解きを始めてはいけない病気にかかってしまうのだ。


とすると、その間の時間稼ぎが必要になる。


それが、不自然なまでに子供っぽい話しぶりでの証拠のチェックとなるわけだ。


私は、甲南くんの話を右から左へと聞き流しながら、時間が経つのを待った。


じれったいが、仕方がない。


私が、犯人を当てるわけにはいかないのだ。


なぜなら、私は、【傍観者】。


犯人当ては、名探偵の役目である。


そうして、長かった45分が経過した時、ようやく甲南くんの【解決編】が始まった。


◆◆ 解決編 ◆◆


甲南くんの事件の謎解きは、かなりもったいぶったものだった。


「さて、ここまで話してきた内容で、犯人は、この中に居ることが、判明しました。」


うんうん、それは、当然。この中に居るはず。


「学校は灯台です。未来を照らす灯し火でなければなりません。しかし、小学校という無色の糸の中に、殺人者という名の真っ赤な糸が混じっていたのです。」


どこかで聞いたことのあるようなセリフも、呪いが言わせているのだろう。


「平凡なものほど不自然なものは、ありません。」


なるほど、私には、教室にあって不自然なものなど、1つもないように思えた・・・にもかかわらず、その平凡さは、甲南くんにとっては、不自然だった・・・そういうことを言いたいみたいだ。


「全ての不可能を消去して、最後に残ったものがいかに奇妙なことであっても、それが真実なのです。」


そう言うと、コナン・・・じゃない・・・甲南くんは、人差し指を立て、ある人物を指さした。


「謎は、全て解けたっ!犯人は、お前だっ!」


甲南くんに指差された人物・・・それは・・・




・・・私だった。


「えっ・・・なんで?なんで、私が犯人なのよっ?」


そう・・・犯人は、目に見えて分かり切っているのに、なんで、私が犯人になるの?


あまりに理不尽な犯人扱いに、私は、きつく問い詰めるように甲南くんに迫った。


「ダメですよ。脅しなんてっ・・・それは、通用しません。では、ひとつひとつ説明しましょう。」


甲南くんは、周りをゆっくり見渡しながらその説明を口にする。


「まずは、白い壁をご覧ください。RACHEの文字・・・これは、血で書かれたものです。」


えっ?いや、どう考えても、絵具でしょ?赤色の・・・


落ちている赤絵具のチューブを無視した甲南くんの説明に反論しようとするが、呪いで、口が動かない。


そうなのだ。


事件の本質に迫る謎解きをしていいのは、名探偵役だけ。


傍観者役は、真相に近づくことは許されない。


私は、この推理に正しい反論をしてはならないのだ。


「おそらくです。殺人犯は、被害者である明智先生を殺害した後、下半身を露出して倒れている明智先生の姿に興奮して、鼻血を流したのです。床に広がる赤い血が、その時の流血を物語っています。」


いやいや、床の赤いシミは、どう見ても絵の具・・・ほら、そこにチューブが、思いっきり落ちてるじゃないっ!


しかし、私が、反論できないのをいいことに、甲南くんは、説明を続ける。


「この鼻血から、殺人犯は血色のよい顔で、その人差し指の爪は長いことが、分かるのです。あぁ、言い忘れていました。文字は、人差し指に血をつけて書かれているはずです。ルーペを使うと確認できるのですが、壁の漆喰が、わずかに引っ掻かれているのが分かります。もし犯人の爪が切り詰められていればそのようにはならなかったはず・・・この中で、赤ら顔で、人差し指の爪が長く、さらに爪が赤く染まっている人物は、あなた・・・中田道子先生、ただ一人なのですっ!」


「ちょ・・・それは、あまりに無茶よ。こじつけでしかないわっ!」


私の爪が赤いのは、マニキュアを塗っているからっ。頬が、いつもより明るい色なのは、ファンデよっ、ファンデーション!


こんな言いがかりで、犯人にされては、たまらない。


呪いによる束縛は、把握している真相について私の口が説明することを許そうとしないが、それでも、私は、必死で弁明をしようとした。


しかし、甲南くんのしゃべくりは、止まらない。


「壁に赤い文字を書いている場所も、犯人を示す特徴があります。それは、【高さ】です。人は、このような壁に文字を書く際、本能的に目より高い位置に書くのです。そう・・・ここに居る生徒たちでは、あの文字の位置は、高すぎる。唯一の中田道子先生だけは、そうではない。あなたの目線よりわずかに高く書かれた文字の位置・・・これも、あなたが、犯人であることを指し示しているのです。」


違う違う違うっ!そこっ・・・【天井からロープで釣り下げられたバナナ】の下に置かれた【小さな踏み台】があるわっ!その上に乗れば、小学生なら、ちょうどいい高さ。それが、【RACHE】の文字が書かれている位置なんだから、ここに居る生徒全員が、容疑者になるわっ。手が、十分に届くもの。それに、壁の漆喰の引っ掻かき傷は、爪じゃなくて【竹串】のはず。だって、ほら、串の先に赤い絵の具のようなものがついているじゃないっ!!


そう主張したいものの、口は開けない。


しゃべれないがために首を振り続ける私を、甲南くんの冷徹な言葉が、さらに追い詰める。


「ほぅ、まだ白を切るのですか・・・仕方ありませんね。それでは、【RACHE】の文字について説明しましょう。」


・・・説明するもなにも、RACHEの文字は、見たままの意味でしかない。これが、私の犯人説に繋がるなんていうのは、無理がある話だ。


「そうですね。【RACHE】・・・これは、女性名のレイチェル(英:Rachel)書くつもりだった所、時間が足りず、エルの1文字を書くことが出来なかったのです。そう、中田先生の愛称の【レイチェル】です。彼女の性質は、まさにサイコパスっ!自身の卑劣な犯行を誇示するために、犯行後、鼻血の流血を使って、壁に自分のニックネームを署名したというわけです。」


ちょちょちょ・・・待って、違うっ!私の名前は、中田道子で、その愛称は、道子からとった【ミッチェル】よ!【レイチェル】って、だれよっ!?壁に書かれている『RACHE』は、見たまま・・・ドイツ語で、『復讐』(独:Rache)。これは、何かの復讐だぞっって、犯人が、見せしめるように書いたに違いないのに・・・


しかし、当然のことながら、呪いで口は、開くことは出来ない。


呪いの強制力で、犯人に繋がる可能性のある言葉は、名探偵役しか口にすることはできないのだ。


そう、私は、自身の犯行を否定することができなかった。


こうして、探偵による犯人当てが始まったことによって駆けつけて来た警察官は、瞬く間に、私に手錠をかけた。


うぅ・・・ひどいっ!どう考えても、犯人は、【サルのぬいぐるみ】の中に居るに決まっている。人がひとりが入れるほどの不自然な大きさの【ぬいぐるみ】・・・背中には、チャックが見えており、しかも、時々苦しそうに、寝返りをうっている。


あとは、犯人が使った凶器は、【竹串】よっ。殺された被害者が下半身をむき出しにしていることから分かるように、髪を乱して教室の隅で震えている【小嶋歩美】さん・・・彼女に暴行を加えようとしていた明智先生を見つけた犯人が、小嶋歩美さんを守るため、後ろから首に、竹串を刺して被害者を殺害した後、【ぬいぐるみ】の中に隠れたっというのが、真相のはずっ!


なぜ、これに気づかない?あなた、それでも、名探偵っ?


そうは思っても、私の心の声は、どこにも届かない。


あぁ、当日に、明単帝小学校に出席している教員か生徒が、呪いの元となる現象を解決しないと、花米町全体が、次の日も、その次の日も、29日・・・2月29日を永遠に繰り返す。


そして、事件の本質に迫る謎解きをしていいのは名探偵役だけ。


彼が、間違った人物を犯人扱いしている以上、まだまだ2月29日が終わることは無い。


大丈夫だろうか?


甲南くんは、真犯人にたどり着くことはできるのだろうか?


いや、そんなことより、苦しそうに寝返りをうつ犯人役の生徒は、あの密閉されたぬいぐるみの中で窒息死してしまわないだろうか?


そんなことを考えている間も、警察官は、腰紐を私の体にぐるりと回し、淡々と連行の準備を進めている。


間もなく、私は、警察官によって追い立てられるように廊下へと引きずり出された。


事件現場を後にする私の背中の向こう側では、【たったひとつの真実を見抜くっ!見た目は子供、頭脳は大人、ジッチャンの名にかけてっ!!】という甲南君のセリフが、むなしく響いている。


あぁ・・・今年の2月29日は、長くなりそうだ。

*この作品は【春のチャレンジ2025】と【大野錦氏チャレンジ企画】《公式企画テーマ入れ替え2022年度、春の推理、テーマ「桜の木」→替→「ぬいぐるみ」》に参加しています。(企画概要)https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1970422/blogkey/3247285/

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― 新着の感想 ―
2月29日という投稿期間を上手く使っているのがよかったです。 「推理者」が強制的に「傍観者」って辛いですね~。 コナン君。4月から映画ですね! え~っと、あとは「歴史」と「童話」か!
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