花と師匠
ー喫茶店。
カランコロン
「いらっしゃいませ~~」
フリフリ可愛い制服だなっ! そんな感じの女給さんに案内されて席に着く。
「ど、ども」
「今あんな感じの服が流行っておるのか?」
何だろう、金持ちとか貴族の豪邸に仕える女中か侍女みたいな格好? をした若い子に違和感が。俺達はお茶を頼んでしばし休憩した。師匠はキャピキャピ要らぬ会話などしないので静かな物だ。
ズズズ……
とか言いつつ美しい師匠をチラ見。
コトッ
急にカップを置く師匠。な、何か気に障る事がっ!?
「これ小娘、店主を呼ぶのじゃ!」
「え? 一体どうしたんですかっ」
美しくも厳しい顔の師匠に言われ、女給さんは慌てて店主を呼んで来る。
「あのう、お客様一体何の御用でしょうか? 何か失礼が……」
「よし、ワシもここで働く。あの女給服を用意致せっ!」
俺はコケた。ダメでしょ普通。無理だよ……
「分かりました、急いで用意します!」
即答する店主に俺は再度コケた。
ーそして着替え終了。
ぴらりっ一回転する師匠。
「どうじゃ、可愛いじゃろう」
うっ確かに可愛い! ここの女給さんより見た目年齢高めなのに、凄い似合ってて可愛い。抱き着きたい……いやっ今のは何かの間違いだ。俺は首を振った。
「でへへへ、お嬢さん働きたいの? 今日からでも来て良いんだよデヘヘ」
ダメだっこの店主はこういう女給さんが好きで店やってるんだっ!
「……師匠止めてよ、この店はダメだよ」
俺は心の底から声が漏れ出てしまう。それを見て師匠は邪に笑った。
「分かった分かった、泣きそうな顔をするな」
何か師匠にしてやられた気がするが、残念そうな店主を置いて俺達は店を出た。
またなんとなく会話無く街を歩く。
「むっ花屋じゃ、ちょっと見たいのぅ」
「行こう」
シルバー・リリー・ドラゴンという名の師匠と花は似合い過ぎるでしょ。
「はいいらっしゃい、おや綺麗な恋人さんにお花のプレゼントかい?」
「て、店主さん違うよ恋人だなんて……」
「フィアンセじゃ!」
いかにも気が良さそうなおじいさんが店主か。彼に案内されて次々に花を見せられる。花に囲まれる師匠は天使か妖精の絵画の様だよ……
「何か気に入った花はあるかな?」
「花は人間と同じくらい価値があるんじゃ」
深い……深過ぎて意味を考えるのが怖いよ、いや考えちゃダメだ。
「おおっ何と詩的な事を言いなさるお姉さんかな、気に入ったぞい」
と、おじいさんが言った直後。
ぱくっもぐもぐ……
師匠が何食わぬ顔で花を喰った。
シィーン
「あわっあわわわわわ、す、すいません!」
俺は震えが来る。
「気に入ったぞい、失礼だが君ここで働かないかな? ふぉっふぉ」
「考えてやっても良いのじゃ」
「売れ残りの花を食べても良いぞ」
「うむ、食べてやろう良き良きじゃ」
え?
そうして師匠はこの花屋で働く事になった……




