デート?
ーファニー帰宅後
「あれってあのアルフレッドって子の国の話よねえ?」
「……そうだけどそれが?」
マリが神妙な顔で聞いて来る。
「今度頭かき別けて角あるか調べてみたらぁ?」
「冗談として受け取っておくよ」
マリは真面目なのか豪快にふざけているのか分からないよ。
「生き血をすする国の領地をもらうのかぇ?」
冒険者を撃退し続けた最強ドラゴンの師匠がそれ言うんだ……
「……噂なんて本気にしちゃダメだよ。その前にファニーのくれる領地の事を考えるよ」
そうだ、第三王子のアルフレッドの奴も、言ってる事思い通りになるかどうかも知れないし。今は手に入ってしまったファニーの領地の処遇を考えなきゃな!
ー次の日
俺はカピパララインでもらった領地を訪れる決心が付いたのだが、一つ気になる事が。
「師匠はシルバー・リリー村に一緒に訪れてくれますか?」
「いやじゃ、村はあくまで我が洞窟を邪魔する様に作られた人間のテリトリーじゃ、行きとうない」
とハッキリ言われてしまった訳で。そうなると最近の師匠が心配で……いつも大抵お菓子を食べてるか、マリが仕事中は一人でぽけーっと縁側でお茶を飲んでいる。つまりボケないかな? と。
「ポケー」
今も師匠は縁側でぼーっとしている。
つー
うげっとうとう寝ぼけた師匠の口からヨダレがっ大丈夫なのか?
「師匠っ口からヨダレが!?」
「おうおう済まぬ」
という様な事があって俺は決意した。
「師匠、ちょっと市場に出てみませんか?」
「ナヌッ!?」
普段俺はなるべく師匠を隠していたが、遂に外に連れ出す事にした。
ーカピパラノユイン大市場
大市場とか言ってもマリの店から近いただの商店街だ。師匠は物珍しそうにキョロキョロ行き交う人々を見ているぞ。
「どうですか師匠、ヒトが一杯いるでしょう?」
「本当じゃぁ、うじゃうじゃおりよるわ。じゅる」
「え?」
「色々なお店がありますね。実は俺もこうやってここ街ブラするの初めてなんです」
「何だか世に言う、デートなる物みたいじゃのぅ……」
え?
その発想は無かった……俺の中で師匠はボケ間近の老人。でも最近はアルフレッドに取られたく無いと思ってたよな。やっぱ良く分かんないや話題を替えなきゃ。
「どうですか、数百年経つと文化的な物が違いますか」
「そうじゃのう、約400年くらい前に来た時はもっと質素じゃったかのぅ」
400年、そりゃ時代も国も変わるな!
「人間形態で?」
「そう……愛しい人を追って人間形態でやって来たのじゃ」
え? 愛しい人ってどういう人?
「嘘じゃ。嫉妬に悶え苦しんだか?」
「……師匠、お茶好きでしょう。そういう専門店に入りましょう!」
俺はアルフレッド達との冒険で、少しばかり経済的に余裕が出ていた。いや、銀化で銀を量産しろよは今の所はご法度である。




