凄く嫌な危機……a
「ヒイラギ!?」
「知り合いですかな?」
「い、いやメイドさんです」
アジサイくんの同僚らしき宮殿騎士がいぶかしい顔をした。
「今確か兄さんと言っておりましたぞ」
「……そ、そういうプレイです」
「は?」
兄妹は隠してても、俺がアルパカルカ城にいた頃からの知り合いなんで、知らないと言えば逆に不自然になるし。でも今ヒイラギちゃん興奮して思い切り兄さんと言っちゃったよな。
「パパッママッわーーーっ」
「エゼルカッ!」
「いやーっ」
所がそんな事にお構いなく、メイド長さんに背負われていたエゼルカちゃんが、敵に捕らわれている両親の姿を見て子供ながらに緊迫している場面を理解したのか、大声で泣き叫び始めた。もう俺は地獄絵図に頭がクラクラしてくる。
「カール、君が今何をしているか分かっているのか!? 人質を取って子供を泣かせるとか、それが栄光のアルパカインゼット王国騎士のやる事なのか!?」
俺はおおげさに言い立てて、兄さんの部分を必死にゴマカした。ヒイラギちゃんも敵ながらに兄の立場を気にし始めたのか、何も言えなくなって黙り込んでいる。
「栄光のアルパカインの騎士だと、ユリナスさんこそ反乱軍に加担しているではないですか!」
よしよし上手く乗っかってくれたか、今はそっちの話題に振るしか無い。くそっでも本当なら君を殴り倒したい気分だ!
「反乱とはアルジェシュナイジェ王を討ったアルデリーゼの事じゃないかっ、カールきみはそんな事も分からないのか!」
「嘘を言うな、前王は病で倒れられたのだっ」
何て事を……ずっと側近として目の前で全部見てるハズなのに。もうそこまで腐ってしまったのか。
「もう良いよ君は説得不可能な様だ。短魔銃!」
シュインッ
両手に光の魔法の短魔銃を出した。これで急所をはずして司令官の騎士達を撃ち、超スピードでカールいやアジサイ君を気絶させ、さらに代官夫妻をさらおう。もはや彼の意思をソンタクしてる場合じゃない! 慎重にすれば出来ない芸当じゃない。俺は両手単魔銃を構えた。
チャキッ!
「パパーッママーッ」
「ううっエゼルカッ!」
「大丈夫だよ」
黙っていた仲間達も俺が仕掛けそうな雰囲気に緊張している。
「ユリナスさま!?」
「ユリナスきゅぴま?」
「黙って見ておるのだっ!」
「へ、下手な真似をすると代官夫妻の命はないぞ!」
ジリッ
続く地獄絵図。アジサイ君、そんな悲しいセリフを言わないでくれよ! しかし彼がそう言っても、俺は敵を全員倒す自信があるぞ。さぁやるか……片足に力を込めた時だった。




