領地進呈と伝説a
「う、うん、そうだよね!?」
調子良く話を合わせておこう。
にこっ
アルフレッドはさも自分が剣を進呈した様に笑顔でフュンフフルト兄上を見た。
「うむ、これは生きている限り大切にし、孫子の代まで伝えて行くつもりだ」
「それは良かったですフフ」
キョリッ
その直後、アルフの奴が振り返ると凄く恐ろしい顔をしていた……
え?
本当は怒っているのかーっ外面が激しいヤツだな。その剣は俺にとっても師匠との思い出の品でもあるから、俺も痛みをともなっているんだぞーっ。
「アルフレッド王よ、彼らが来訪された時に伝えたい事がおありだったはずじゃ」
師匠、俺には何も言葉はナシですか?
「おお、その事だ」
「そなたが話に聞くユリナス殿の師匠、リリーサマー殿であるな」
「ご機嫌うるわしゅう」
ペコリ
じーっといかにも真面目そうな兄上が師匠の事を見ている。師匠に興味が出ないで欲しいです。
「その話って何だよアルフレッド!」
「今から言う所だ、それに王様と呼べよ。話というのは他でもありません、ヒューゲル・ハーフェン水門砦一帯の領地を【ウサミミとワニに囲まれし小さき王国】に献上したいと思っているんです。どうぞ受け取って頂けますか?」
えーーーっ苦労して手に入れたあの港を渡しちゃうの!? 勇者の剣どころの話じゃ無いじゃん。
「それは、簡単に頂いて良い物とは思えぬが」
さすが長男の兄上、常識があるなあ。
「簡単に進呈する訳ではありません。我らが参戦を依頼したばかりに取り返しのつかない事になってしまった。決して命と物ではつり合いませんが、是非貴方達の土地として納めて欲しいのです」
アルフレッドは軽く頭を下げた。そこまでの決意だったのか、確かにライズエッセン兄を失った痛みはどんな物にもつり合わないだろうな。しかしジギスムント遠征隊もエリエルさんも密かに野望を持ってる人達だし、悪い話では無いと思う。
「分かり申した。そこまで言われて受け取らぬは無粋という物。有難く頂こう。それに水門砦からの道中、立ち寄った村で60年前の第15次遠征隊のライヒシュネル隊長殿の話を聞いた。どうやら水門砦近辺から多くの一族がライヒシュネル遠征隊に参加し、東の地の中心部で新たな王国を築いたという伝説があるらしい。水門近辺を因縁の地として我らが治めるのも良いかもしれんな」
一応少しは東の地の情報もあるんだ……
「そんな因縁が、それを聞いてますます贈って良かった」




