流れ着いた砂浜……b
「そうか、では勝ったのならばカチドキを上げるぞ我に続け」
チャキッ
兄者は勇者の剣を天にかかげた。
「は、はい」
「ゆくぞ、エイエイオーッエイエイオーーッ!」
「エイエイオーーッ!」
「うおー勝ったぞっ!」
船員達とゴブリン達は心を合わせてカチドキを上げた。その姿をジギスムントとエリエルは涙を流して眺めていたが、長兄も三番目の兄も想いは同じであった。
~ヒューゲル・ハーフェン水門砦共同作戦編エピローグ~
それより数日後の事に御座います……
ザザーーザザーーッ
砂浜には静かに波が打ち寄せ、水と砂浜の境界に一人の男が打ち上げられていた。波が打ち寄せる度に少しずつ陸に上げられていく体。ようやく彼は目を覚ました。
ぷかっぷかっ
「ん、ん……ここはどこだ? 仲間は船は!?」
ぱしゃっ
朦朧とする意識の中、必死に仲間の姿を探して身を起こし始める。見た事も無い砂浜であった。
ぐぐっ
「おーーい! 大丈夫かーっ」
「人が倒れているぞ~~」
幸運にも村人に見つかり、男は邑の中に連れて行かれ介抱された。
目の前には見慣れた物とは違う服装や風俗と建物……ようやく落ち着いた男は村人に尋ねた。
「ここはどこですか、もしかして東の地ですか? 何故言葉が通じるのでしょう」
「東の地ではありませんよ」
「ここはアルパカインの大島から、海を挟んで北の地ですよ」
!!
(北の地……?)
思いもよらない場所に男はクラクラした。
「言葉が通じるのは当然です、東の地とも交易がありますからな」
「幻の東の地と交易が!?」
「時々貴方の様に流れ着く人もおりますぞ」
「我も元々東の地の【大カッツェヴォルケ王国】の住人ですぞ」
(大猫雲王国??)
「アハハしかしまあ落ち着いて下され、まずは身体をいたわらないと」
がばっ
しかし男は立ち上がった。
「ダメなんです、僕には仲間がっ」
「落ち着いて下さい、貴方は巨大なサメの背中に乗せられていたという話もあります」
「そうです、普通じゃない」
男はサメヨハンの事が浮かんで、一旦座った。
「この僕にどうしろと……」(何故サメヨハンは僕をここに連れて来た?)
男は頭を抱えて首を振った。しかし村人の目の色は変わっていた。
「貴方は普通じゃない、何か光り輝いて神の様に見える」
「僕は神じゃない……」
しかし村人達は改まって頭を下げた。
「是非我らの邑の邑オサになって下さい!」
「え?」
ーこうして生き延びたライズエッセン兄はこの流れ着いた浜で邑長となり、やがては一国を治める王となるので御座います。しかしそれはまた本編とは全く別のお話なので御座いました……




