勝利とつらい報せ……b
「な、何奴!?」
仮面を付けた銀色の男を見て数少ない居残りの城兵が叫ぶ。けど実際手を出して来る奴は少ない。
「抵抗するな! 司令部に行くだけだっ」
スタスタスタ
俺はひたすら階段をのぼる。と言ってもアルパカルカ城はともかく、俺達の砦城よりもはるかに小さい。すぐに司令部らしき場所に到達する。
ビクッ!
部屋に入った途端に数人の将軍らしき人間は血の気が引いた様だ。
「銀色の男!」
「ななな何だっ貴様、出て行け!」
出て行けば済む物じゃ無いでしょうに。
ズズーン、ドドーーン!
相変わらず水上攻撃は続いている。誰が命令してるんだよ……長男さんかな。
「早く降伏しないと船からの攻撃でここも危ない、お前達も生き埋めになる!」
将軍達は顔を見合わせた。
「わ、我らの身柄はどうなる?」
「安心しろ、捕虜として命は保障する。それに和議の為に早めに返還する予定だ」
ズズーーン、パラパラ……
「降伏だっ降伏する!」
はやっ。
「ではここでじっとしてろっ」
しゅりっ
俺はテーブルに敷いてあった白い布を持つと、窓から屋上に上がる。もしこの白布が無かったらどうする気だったんだろう?
ばっさ~
間髪入れずに屋上に白い布をくくり付けた。既に日が昇っておりテーブルクロスが太陽光に照らされて白く輝く。それを見届けると心配なゴブリン部隊の元に戻った。
やがて白旗に気付いた船団からの攻城魔法攻撃は止み、もちろん水門砦内の戦闘も終結した。
カシャンッカランッ!
兵達が次々に武装解除して行き、縄でふんじばられる。何度見ても嫌な場面だ。俺達の仲間をこんな目には絶対にあわせたくない。まあ死ぬよりはマシだろうけど。
ザシーン
やがて湾内のあちこちでモクモク煙を上げる擱座船をよそに、遂に水門砦と接するヒューゲル・ハーフェン港の船着き場にジギスムント達の三隻の船が接舷したぞ。この瞬間にからくも作戦の成功が達成出来た! 俺はゴブリン達の相手も投げ出してすぐに彼らの元に走った。
「ジギスムントさん仲間は全員無事ですか!?」
「攻城魔法攻撃は適切だったかい?」
「いやそれはもう大丈夫です!」(ちょっとだけ余計だったけど)
「海に落ちた遠征隊の船員は奇跡的に無事だったよ」
「全員ですか?」
「……でもライズエッセン兄上だけが海に潜ったまま帰らない」
え? 俺は勝利の余韻から一転して目の前が真っ暗になった。
「ど、どういう事ですか!?」
「サメヨハンの背に乗せられ海に潜った、それから分からない」
「キュル」(俺も探したんだが)
「探しに行きます!」
次の瞬間、俺は彼を探しに飛んだ。
お読み頂いてありがとうございます。ブクマ☆星評価も有難う御座います。
設定矛盾の脳内訂正お願い
古い展開なのですが、レミランが「対策くん一号」の事を知っているはずなのに、その後完全に失念している矛盾展開に今頃気付きました。もうどの辺りを訂正すれば良いとか分からないので、途中から師匠に「レミランは洗脳魔法で対策くんの記憶を消された」という後付け理由に致します。




