登録抹消……
ーカピパラライン王国
俺は早速王都に近い最大の都市、カピパラノユイン市に来た。いや、一年ぶりに戻って来た。銀竜の洞窟を攻略する為に立ち寄った街だ。
ー同市冒険者ギルド
俺は差し当たってギルドに預けている持ち金とアイテムを受け取りに来た。
「え、ユリナス様ーですか?」
何故かギルドの受け付けのお姉さんの顔が歪む。
「そうだけど、確か5万エピと回復アイテムとか預けてるハズだけどね?」
今度は不正手続きする悪人でも見る様な目て見て来る。なんだよームカツクなあ?
「あのぅーユリナス様はパーティーの方の申告で、ダンジョン攻略中に無謀に強いミミックを開けて死亡された事に……記録は抹消されて、アイテムもPTメンバーが処理を……」
俺は一瞬言葉に詰まった。しかも寄りによってミミック開けて死亡て。
強敵に挑んで壮絶に戦死とか、仲間をかばって一人だけ戦死とかじゃ無くて、なんか間抜けな奴が欲出して事故死みたいな。なんつー連中だよ。
「ははははは」
取りあえず笑ってみた。
「あ、うふふふふ」
お姉さんも引きつった顔で愛想笑いをしてくれた。
「えー俺は一体どうすれば?」
「お手数なのですが、本人確認に登録時に行った石板の生体認証で……」
偽者等を防止する為の便利な生体認証だが、まさか死んだ事にされて使うとは。いや一回死んだ訳だけど。
パァーーッピコーーン!
石板は正常に光った。
「おめでとう御座います! ご本人さまですね」
「え、おめでとうなんだ?」
謝らないんだ?
「あのうしかし申し訳無いのですが、パーティー登録されたお仲間によって引き出された現金とアイテムはもう……」
ちらり
一応お姉さんは物凄く申し訳無い顔をしている。悪いのはアイツらな訳で。
「お仲間って、魔法剣士ルウィナ・魔導士エリッカ・魔法格闘家コールディの3人だよね?」
「その通りです!」
まじかよあいつら、大した金額じゃ無いのに絶対全部処分してネコババしただろ? 最悪なパーティーだよ。
「はぁ~無一文だよ、これからどうしよ……」
途方に暮れて呟いた俺に、唐突にお姉さんは何か手渡した。
シュバッ
「あっ良くみたら貸し金庫の中に500エピ銅貨が一枚残っておりました! これをお納め下さい」
「はぁ? ども」
500エピて。俺は目が点になった。これは口封じ?
それともお姉さんからの施し? いや、本当に一枚残っていたのか?? カウンターを通り過ぎ、俺はふと掲示板に目が留まる。
「ん、最上級クエスト依頼・銀竜シルバー・リリー・ドラゴン討伐、5億エピって凄いな」
師匠の隙を見てプスッて刺したら……冗談冗談!
「次は、赤鉄竜レッド・ローズ・ドラゴン討伐、4億エピ……何にしても俺には無理だな」
俺は500エピ銅貨を握り絞めてギルドを出た。