クリームパン騒動
ヤ、ヤバイ! 俺達が懸念してた様に早速連れて来た兵士達が揉めはじめてる。しかも食べ物の不満だ、これは根が深いぞ。少し隠れよう……
こそっ
俺はコソクにも気配を消した。
「おじさん揚げあんバター生クリームパン下さい」
「あいよ」
えっ? 凄い高カロリーなパンだな。熱でクリーム溶けないのか!?
「コラーーッ! 何でソイツには菓子パンを渡す? 俺も今ムショーに菓子パンを喰いたいんだよっ」
「だってこの兵隊さんはお金を持っているからねえ」
そりゃお金があれば買えるよな。
「何でお前金持ってるんだよ!?」
「ヒッ何だよ、俺は出征する時に母さんがいくらか渡してくれたんだよ、母さん会いたいよ……」
うわっヤバッ! 他の兵士に飛び火した上に望郷の念を生じさせたぞっ。
「くそーっ俺には家族も無けりゃ金も無い! あんバター生クリームパン食え無きゃ西アルパカに帰るぞっ」
揚げを忘れてるぞ。
「そんな事言われてもねえ、タダで配ってたら商売じゃないよ」
「おじさーん、パンただでくれ!」
「あいよ」
俺だけじゃなく、周囲の兵士も一斉にコケた。
ドタドタ
「お、おいゴラーッ! 今タダでやったじゃねーかよっ」
「タダじゃないよ、この兵隊さんはパン焼き窯作る時に一緒にレンガを積んでくれたんだよ?」
「じゃあ俺も積むからパンをくれやー!!」
「ヒッ首を絞めないでくれっもう遅いよ」
ふぅさすがにここまで来ると止めないと。
「やめないかお前達!」
「ユリナスさん!」
ざわっ
一応有名人になっていた俺が出ると一旦は騒動は止んだが。
「アンタがこんな所に連れて来た張本人だろ、今すぐ給料くれよコインで!」
「そうだそうだ金くれ!」
「パン代よこせっ」
しかしよっぽど人望が無いのか俺が首を絞められそうになってしまった。でも味方だから銀化して吹き飛ばす訳にも行かないし、がまんしてタコ殴りにされるしか無いのか?
「おやめなさい!」
さーっ
変な気配がして、皆の動きが止まる。この声は……
「アウレリアーナ様だっ」
「なんと美しい」
「あー~~ヨメにしたい!」
ざわざわっ
男率が異様に高い真アルパカの中で、美人のアウレ姉さんが出て来ると空気が変わる。しかし朝っぱらからこんなトコに来たんだ。
「朝の散歩に来てみれば兵士達が何の騒ぎですか、国のイシヅエである商人の方に兵士が暴力を振ってはいけませんよ。しかしそれも全て王や私やそこにいるユリナスの責任です。いや殆どユリナスの責任です」
おいおい。
「そうだ、ユリナスの責任だ!」
「ユリナスさん謝罪しろ!」
「わーわー」
エー~~いくら何でもヒドイですよ! みんな調子ついちゃったでしょ。