ご褒美じゃ
険しかった王様の顔がいくらか優しくなった様な……これは!?
「王様?」
「良いであろう。すぐに飛んで行くお前が良く国に帰らなかったな。キッチリ今日の0時にならんでも帰る事を許そう! これで我がカピパラライン王国とアルフレッド殿の国は真に同盟国となったぞ。人々に知れ渡る様にあちこちに高札を立てよう」
ガーン! 王様の決断に俺は失礼だが拍子抜けした。どうせ意地悪なこの人だから、何か難癖つける様な気がしていたんだ。失礼だったかな。
「ギリギリまで居て欲しかったが、良かったのぅ」
「王様にファニーありがとうございます! でもそんなに国中に触れ回ったらゼブランドからにらまれませんか?」
「うむいかにもその通りだ。だからコトが起これば銀竜村は我が国の盾となってこの国を守れよ? 良いな!」
ガシッ
また熊の爪みたいな王様の片手が俺の肩をつかんだ。イテテテ。
「もちろんです! この国は我が故郷と同様ですから」
「貴様は常に調子が良いのじゃ」
しかし目の前のファニーの顔が歪んだ。
「……などと言いながらアルフレッドの国に帰ったとたんに、師匠~~寂しかったよぉ~とか言いながらあの女に抱き着いて、わらわの事など一瞬で忘れてしまうのであろうがっ!」
ドキッ
凄い当たってる、今もう師匠と再会したくてウズウズしてるよ。
「そ、そんな事無いよ~」
「嘘を付け! わらわはたまにしかお前に会えんのだぞっ一週間ばかり一緒におるくらいバチは当るまい……うっうっまた別れたくないのだっ」
どうしようファニーは泣きながら抱き着いて来た。王様はまた恐ろしい顔で俺をにらんでいるし。
「じゃあファニーも一緒に行く?」
ぽかっ
軽く叩かれた。
「バカ者、わらわは聖女になったからこの国を離れられんのだっ」
前に来たじゃん……お忍びなら良いのかなあ? 今度こっそり迎えに来ようかな。
「ご、ごめん。君の事は大切に思っているけど、今は友達のアルフレッドが大変な時期なんだ」
ばっ
ファニーは突然俺から離れて顔を拭いた。
「へへへ嘘じゃ、王女のわらわがそ、そなたとの別れくらいで泣く訳無いのだっ!」
ファニー無理をして笑顔を作ってくれてるのか?
がばっ
思わず俺は再びファニーを抱き締めてしまう。
「ごめんよ、絶対にまた迎えに来るからなっ」
「ユリナス……」
し、しまった! またやってしまった、これ最終的にどうなるんだろ? 誰と結ばれるんだろう自分でも分からないよ……
「もう逃げられぬぞ。だが今日は一時帰還を許してやろう。これが同盟の証書じゃ」
「は、はいありがとう御座います!」
そっとファニーの肩を離し、俺は窓に向かった。
「ごめんファニー、また絶対に来るからなっユリナス全身銀化!」
「おう」
シャキッ
同盟の証書を大事にしまうと、もう夜でも宣言通り泊まる事無く王国を去った。
シュバッ!