マリ、真夜中のダンスとクーデターa
ー次の日の夜。
「だーーっネリスさんもう早く出て行って下さい!」
「何故ですか、このマリ殿の館ではユリナス殿のベッドで一緒に寝るのが、コウ例になってたじゃないですか」
「そんな恒例ありませんよ!」
がばっ
シートをめくってベッドにもぐり込んで来たネリスさんをなんとか追い出す。なんか前みたいに性格作って無くて、素の状態で真面目に言われたら怖いな。
ストスト
しぶしぶネリスさんはファニーと一緒の部屋に戻って行った。しかしファニーは余程生活リズムが正しいのか、どれだけドンドンしても全く起きないから助かるなあ。小さな子供みたいだっ。
……寝れん! あんな美人さんがベッドにもぐり込んで来るとか普通無いでしょ、そんな後でスヤスヤ寝れる訳無いや。
ギシッギシッ……
え?
今度は違う方向から物音が。ドロボウか? 銀細工師の館なら泥棒が来てもおかしくない。今後の為にもコテンパンにやっつけて牢屋にぶち込むか。俺は静かに部屋を出た。
スーッ
廊下のはしに消える白い影。いやドロボウじゃ無くて幽霊かも!?
ギシギシ
物音は廊下から階段を降りて行く。追跡だっ。
カチャッ
慎重に影に付いて行くとその白い影は中庭に出た。でもそれで正体が分かった。月明りに照らされて見事な金髪が夜の闇に輝いた。マリだった。
ふぁさっキラッ
「行くな!」
ぎゅっ
次の瞬間、俺は彼女の身体に抱き着いていた。
「きゃっ何!?」
「どこへ行くの?」
「どこへも行かないわよっ離してっ」
「ダメだよこんな夜中に出て行くなんてヘンだよ」
「離してっ手が胸に当たってます!」
げっマズイ俺はすぐに手を離した。
ぱっ
「ご、ごめん」
「もう本当にびっくりした。暴漢かと思ったじゃない何をそんなに慌ててたのよ」
俺は思った事を正直に話した。
「物音がしてマリの影を追っていたら、なんだか真夜中の妖精みたいで……そのままどこかに飛んで行っちゃいそうで凄く不安になってしまって、飛んで行かない様にって思わず……」
シィ~~~ン
いけね、マリは目を点にして口をポカーンと開けてるよ。
「貴方達がガタガタしてなかなか寝れないから、ソラちゃんが気絶してないか見に来ただけよ。貴方いつからそんなメルヒェン男になったの? 真夜中の妖精って聞いてて鳥肌が立ったわよ!」
でもそんな風に見えたんだもん!
「へへゴメン忘れて」
「忘れるわ。思い出すと赤面しちゃいそうだもん。けど、寝れないし綺麗な月も出てるし、せっかくだから踊りましょうか?」
ポカーン
今度は俺がポカーンだよ。踊るの? どっちがメルヒェンだよ。いや、彼女の場合は金髪の容姿に合ってるから良いのか!
「踊るって??」
「こうするのよっ」
スッ
彼女の方から先に手を取ると、俺をリードして踊り出した。ヒッ誰も見ていませんように! 踊った事なんて無いから足を踏みそうになるよ……けどこの館に泊まって良かった! こうしてまたマリと笑い合えたから。