秘密協定とせめぎあいa
「貴方様の父上におかれては残念な事になりましたな。わしも若き頃に父上の兄上とPTを組んでいた関係から、何度もお会いした事がありますじゃ。王となってからは疎遠でありましたが、決して息子に暗殺されて良い人間とは思いませぬ心から哀悼の意を表しますじゃ」
ダルギッドは深々と頭を下げた。
「ありがとう御座います。ここまで走り抜けて来た感じで、そこまで誰かに父王の哀悼を祈ってもらった記憶が無い。とても有難く思いますよ」
そう答えた新王の鎧にダルギッドの目はくぎ付けになった。
「その鎧はまさか……遠き日の記憶に同じものが」
「そうだよ凄い記憶力ですね。これは父上の兄上、若き日のアルジェシュナイジェの勇者の鎧です」
それを聞いた途端、ダルギッドの顔がさらに険しい物になった。
「それをどこで?」
「うん、仲間に裏切られ銀竜に殺され死んだユリナスが目を覚ました時に着用していたんだ」
直後、老魔導士は虚空を見つめる様な目になって、アルフレッドは不思議に思った。
「王よ、その言葉を信じておられるのですか?」
「え?」
「どういう意味ですか」
ぎゅっ
シャリィは異様な物を感じてアルフレッドの腕をつかんだ。
「よくお聞きください、あのリリーとユリナスを信じてはなりませんぞ! あの邪悪なる者共とは早く縁を」
「それ以上は止めてもらおう。ユリナスは親友、リリー師匠は命を助けて頂いた師匠、二人とも大切な人間です。いくらドルフィンナーゼの外交使節と言えど、それ以上は聞きたくない」
びっと掌を出して老魔導士を止めた。
「ちょっとまってアルフレッド。私達三人は師匠さまに蘇生してもらったのよね、それと同じ様にユリナスを蘇生した者がいるんじゃないかしら」
シャリィは薄っすらと何かを理解した様だった。
「いやシャリィ、有難い人だけどこれ以上よく分からない事を言うならお帰り頂こう」
アルフレッドもユリナスと全く同じ、正しき老人より間違ってるかも知れない美女を取った。だが彼もまさかそのリリーが勇者を倒したボスドラゴンとまでは想定していない。
シュインッ
「そこまでじゃ! そこのジジイ我が愛弟子ユリナスへの誹謗中傷は許さぬ、殺す」
「!!」
「師匠さん!?」
次の瞬間、目の前にそのリリー師匠が瞬間移動していた。
「くっ気配を感じ取られたか」
スチャッ!
ダルギッドはムダと分かっていても魔導士の杖を構えた。
「無駄な事を、一瞬で灰にしてやるのじゃ!」
「やめるんだリリー師匠! 何故いきなりこの方を殺す事になるっ」
慌てて両手を広げて新王は二人を止めた。