アルデリーゼ王特使とその書簡b
こらこら師匠自身が突っ込んでるでしょ、でも彼女が師匠を呼ぶとは思えないけどな。無視してアルフレッドが続きをうながした。
ぴっ
『なお貴族子女のシャリィ殿レミラン殿のご両親も、お二人の無事を心より心配されております。我が王国も二人のご両親には格別の配慮をしてお待ちしておりますよ。お早い帰還を。
また反逆者アルフレッドよ、そなたは軍団を全て砦に置き、単身で馬に乗り出頭する様に。厳しき詮議の後、厳罰が待っているであろう。
最後に将兵の諸君に告げる、私は君達のすみやかな帰還を待っている。帰還した各将兵には完全に身の安全を保障し、さらに慰労金をお渡しする。皆声を掛け合って我が王国への帰還を促す様に、以上。
新王アルデリーゼ』
特使が読み終わった途端、カンパツいれずに突っ込み声があがる。
「何だっこれは!?」
「無茶苦茶なのじゃ~」
「嘘ばかりですわ」
「いや俺は!? 俺は完全スルーかよっ!」
実質、完全にアルフレッドを捕縛して連れて来いって滅茶苦茶な内容じゃないか。
ザワッ
しかしアルデリーゼの要求は居並ぶ将兵達をざわつかせた。兵士は家に帰れる訳だしな……
ざわざわ
しかもアルパダの奴の様子もおかしい。
「本当に……アルデの奴は俺を軍団長にすると言ってるのかよ?」
「アルパダ兄上、何を仰ってるの?」
「ええアルデ様、新王陛下はことのほか誰よりもアルパダ様を信頼なさっております」
アルパダの口から斬るっ! の言葉が出なくなった。なんつー単純な奴。
「アルパダ殿下、信用なさってはダメですじゃ。良い所飼い殺しにされるか、幽閉されるだけですじゃ」
「そ、そんなん分かんねーよ。俺が弟を怖がるとでも?」(俺が反逆してアイツを倒す機会だってあるぜ)
アルフレッドが師匠にうなづいた。
「特使はもう良い、国に帰るのじゃ! 返答はおって渡す」
アルフレッドの許可の元、師匠に促されて特使は去って行った。
ツカツカ
改めてアルフの奴はザワツク隊長達に重ねて言い聞かせた。
「ここに集まった部隊長達に告げる、特使の内容は以下の通りだったが、あの内容は虚偽だっ! 父王はアルデリーゼに暗殺されて王位は奪われた。だが諸君らが部隊に戻り、今国に帰還したいと希望する者あれば、そろって帰る事を許そう、解散!!」
ザワザワ
部隊長達は困惑の顔で各部隊に戻って行った……一体どれ程が残ると言うのだろう? もし今晩中に反乱でも起こればどうなるんだろう。
「パパッママッ」
特使と部隊長達が去った途端にレミランが頭を抱えてしゃがみ込んだ。まあ手紙の内容はほぼ脅しだからなあ。
「レミラン大丈夫かい?」
「ユリナス、私どうしたら良いのっ!?」
俺にも分からないよ。
「どうすればって……アウレリアーナ様は?」
「わたくしはココでアルフと暮らしますわ、当然です!」
きっぱりとアウレ姉上は言い切った。