戦いを止める為なんだっ!b
「何故だっ何故軍を引かない!? 姫もエーリュクも引いたじゃないかっ!!」
「どうせまたお前の汚い策略だろ? 俺は騙されんぜっ」
バシッガギィーーン!
二人の激しい剣の斬り合いで火花が飛び散る。周囲の一般兵はそれを見る事しか出来ない。
「俺は本当に知らないって! あの王様ワンマンだから急に気が変わったんだろ」
「確かに……アイツいい加減な王様だからなぁ」
バギンッ
「ほら、俺達やっぱり気があうじゃん!」
ギリギリギリ
ツバ迫り合いのまま彼の巨体で押し切ろうとして来る。
「敵じゃなきゃ良かったな、だが今は死ねっ!」
「俺が強いの知ってるだろうがっ!」
「意地だっ!!」
「死ぬ気かぁああああああ!!」
剣を吹き飛ばすと激しい斬り合いが再開した。
カシッカキンッ!
「もういいっユリナスしねええええええ!!!」
「うおおおおおおダルアガーーート!!!」
ザッシュッ!
あっ……気が付くと、俺は超スピードで彼の渾身の剣をかわし、彼の脇腹辺りを切り裂いていた。
ドサッ
大男が巨馬から崩れ落ちる。
「団長!!」 「親分っ!!」
「偽善者っ帰れ!」
「人でなし、裏切り者っ!」
死んだのか?
「回復魔法、早くだッ馬に乗せろっ」
「っぐっ」
ぴくっ
少し動く彼、生きてるのか? ホッ良かった。
ドシューーッ
俺はそのまま師匠の元に帰った。
しゅたっ
俺はなるべく仮面の下で無表情を作った。でも師匠には何か感じ取られた様だ。
「戻りました……」
「何かあったのじゃな?」
「いえ大将を斬って来ただけです……」
「もうすぐ終わりじゃな」
「ハイ」
俺は再び師匠達と向かって来る敵を斬り始めたが……
「撤退撤退! 引けーーっ」
しばらくして敵部下達が勝手に撤退を指示し始めたのか、北の部隊の攻勢も止んだ。それを見てヒイラギが叫ぶ。
「皆、追う必要は無いわ!」
「ユリナス分身の術解除じゃ!」
ポンッ!
対策くんは消えた。
「今分身の術てか、一瞬だけぬいぐるみになった気がするゼ」
「おぬしは命が惜しく無いのかぇ?」
「師匠先生、ボク何も見ておりません」
ジャラーが土下座した。それくらいにもはや戦闘は終結して来ていた。だが俺はダルアガートを斬ってしまった感覚が手から消えない。
「ユリナス様、泣いておられるんですか?」
「ひ、ヒイラギちゃんな、泣いてる訳無いじゃん」
俺は仮面の下から落ちて来た涙を拭いた。決してダルアガートともエーリュクとも対立したく無かったのに。
「ユリナス様……」
「よし、我らが最後尾となってシンガリ隊完全撤退じゃ! 負傷者を絶対に連れて帰るのじゃ」
「今、何人程ですか?」
「六千人程かのぅ」
そんなに……もうすぐ瓦解だった。しかし悪運が強いのか、アルパダの一行は生き残っていた。
ーアルフレッド隊約3万
「おおっ東砦が見えて来た! 帰ろう姉上の元にっ」
「ご報告、リリー様ユリナス様、ご無事に我らに追い付いて来たようです!!」
おおーっ
先行隊の中から歓声が上がった。
シュタッ
そんな中に俺は降り立った。
「来たぞっ」
「ぐわユリナス!?」
帰ろう俺達の砦に。