イバラを撃つ覚悟a
ズドォーン! ドドォーーン!!
戦場から西にある【アルパカイン東砦】に向けてひたすら走る輸送隊と、約3万のアルフレッド本隊に向けて、イバラが次々に赤い槍を投げつけては、荷物や兵士達が吹っ飛んで行く。
「赤い魔幼女の攻撃です!」
「見たら分かる、もう我慢出来ないこの僕が踏みとどまって魔法攻撃を指示してやる! この中には怪我人も多くいるのにっ」
パカラッ!
アルフレッドは馬に乗りながら上を見上げてカンカンになって怒り始めた。
ガシッ
その横からゴブリュンさんが激しく突っ込む様に腕を伸ばす。
「お止め下さい! 貴方が狙い撃ちされない様にわざわざ一般兵の姿をしてカモフラージュまで出して逃げてるんです。あの魔幼女一人で3万の将兵全員が殺される訳じゃありません、狙いは貴方です! とにかく目立たないでっ」
「くそっ」
「だけど、運が悪ければ当たっちゃうよぉ!」
「運しだいなんて……」
「砦にまで行けば、戦場から離れすぎて魔幼女は去ります! 多分」
「多分て」
俺が到着したのはそんな時だった。
シュバーーーッ!
「やめろぉおおおお!」
前と同じ叫び声を上げて俺はイバラの前に飛び出した。まだ大半の部隊は残ってるし間に合ったか?
「なんだナスビィー来たの? だけどアタシはあんたを無視して撃ち続けるよっキャハッ!」
シュバババッ!
あれ、いつもの攻撃と違って鋼鉄のリボンが真っすぐ伸びては地上に刺さって炸裂してる。
ドドォーーン!
「何だそれは!?」
「あたしもビスマスと同じで進化してるのさ、あんたのお陰だよ!」
俺のお陰? 嬉しく無いよ。
「光の羽、攻撃を防げ!」
「光の羽、ナスビィーの羽を防げっ!」
シュビビンッ!
毎度ながら光の羽持ち同士が戦い始めると、全く無意味な相討ちが始まってしまう……
バシバシッ
「くそっ」
「あんたはアタイの事を殺す事は出来ない、アタシはアンタを無視して地上を撃ちまくるダケさ」
ドドォーーン
くそ、俺の見てる前でなんて事を……
シャキッ!
俺は無言で久々に魔法の光の長銃を出した。これは一発でヴェルディグリすら撃退出来る俺の必殺武器だ。
ドシュドシュドシュッ!!
さらにそのままいきなりイバラの両肩と片方のふとももを連続に撃ち抜いた。
「ギャーーーッ!? い、痛いっなんて事……する?」
イバラの奴、信じられないという顔で苦悶の表情を浮かべる。俺は全く無表情のまま長銃を構え続けた。こうしないとダメなんだ。